【スプリングS】時計が掛かればアライバルが最有力 穴馬は昨年の再現を狙うオウケンボルト
山崎エリカ
Ⓒゲッティイメージズ
上がり馬が集うスプリングS
3日間開催の日曜日に実施される皐月賞トライアルのスプリングS。同じく皐月賞トライアルの弥生賞は実績馬が集うのに対して、こちらは上がり馬が集う傾向。今年も重賞ウイナーゼロというメンバー構成となった。
弥生賞は競走馬に無理をさせず、不足を補うトライアルらしくペースが上がらないことが多いが、スプリングSは本番への出走権が欲しい馬たちが集うため、極端ではないが各馬の早仕掛けで、弥生賞よりもペースが上がりやすくなっている。
また、スプリングS当日は2回中山1日目からのAコース使用7日目となるために、馬場の内側が荒れ、外差し馬場の傾向。ただし、極端にペースが遅かった2015年(優勝馬キタサンブラック)や重馬場で行われた2012年(優勝馬グランデッツァ)や2021年(優勝馬ヴィクティファルス)はその傾向が緩和され、内からでも頑張れている。
全体的な傾向としては差し馬有利。過去10年の逃げ馬の3着以内は、2016年のマイネルハニー1頭のみである。今年は逃げ馬がビーアストニッシドとオウケンボルトのみ。両馬とも折り合える馬で先行馬も手薄だが、中山芝1800mは捲りも決まる舞台だけに、差し馬優勢と見て予想を組み立てたい。
能力値1~5位の紹介
【能力値1位 ビーアストニッシド】
デビュー3戦目の3走前の京都2歳Sでは、3番枠から好発を切って逃げ、9番人気の低評価を覆して2着と好走。11月の阪神芝2000mは先行馬に厳しい馬場だったが、外から差して優勝したジャスティンロックに半馬身差と、しぶとい粘りを見せた。前々走のシンザン記念では1番枠を利して好位の最内を追走して4着。当日は内から2頭分が伸びる馬場ではあったが、向正面から4角まで行きたがって折り合いを欠きながらも、勝ち馬マテンロウオリオンに0.3秒差に迫った内容は、豊富なスタミナを感じさせた。
前走の共同通信杯は、逃げたい馬が不在。8番枠から押してハナを主張し、スローペースの逃げ。3~4角でさらにペースを落として息を入れ、4角出口で促して直線。ラスト1Fでダノンベルーガ、ジオグリフに差されての3着だったが、相手を考えれば上々の走り。今回は相手弱化の一戦。1番枠を引き当てたここはマイペースで逃げられると見ているが、問題は馬場。重馬場で内、中、外がフラットならばチャンスはあるが、外差し馬場だと不安。
【能力値2位 ソリタリオ】
前々走のこうやまき賞は7番枠からゲートで立ち上がって出遅れ。中団外からの競馬になったが、前2頭が競りあって後続を引き離して行く展開を前との差を詰めるようにして早めに上がり、3角手前では2列目の外。3~4角でも楽な手応えだったが、直線序盤で追い出されて先頭に立っても後続との差を広げられず、ラスト1Fで抜け出したところで、外からウナギノボリに差し込まれ、クビ差の辛勝となった。しまいが甘くなったのは、出遅れを挽回して終始外々からロスを作りながら、勝ちに行く競馬をしたからだろう。
前走のシンザン記念は3番枠からやや出負け。そこから押して序盤は中団内から、道中で外に出しながらじわっと位置を押し上げ、最後の直線も外。序盤では少し内に刺さっていたが、それを立て直してしぶとく伸び、勝ち馬マテンロウオリオンにクビ差2着まで迫り、前々走から指数を上昇させた。
同馬はデビューからこれまでの5戦とも芝1600mを使われていたが、前走のシンザン記念で騎乗したC.デムーロ騎手のコメント通り芝1800mのここを使われることに。高水準でのスピードや決め手などの武器はないが、総合力が高いので距離延長自体は悪くない。ただ、道悪で距離延長となると、その距離以上のスタミナが求められるもの。他有力馬が前走で芝1800m以上を使われている状況下で、前走からの1Fの距離延長は不利である。
【能力値3位 アライバル】
6月の東京新馬戦では出遅れたものの、11番枠から徐々に位置を上げて4角では好位の中目。直線では一瞬、内から寄られてバランスを崩したが、すぐに立て直して馬場の良い外に出し、最後までしっかりと伸びて勝利した。ラスト2Fは11秒3-11秒4と最後までほぼ減速せず、稍重馬場だったことを考えれば、かなり優秀なもの。ラスト2Fは他馬がバテた中で同馬だけが失速せず、最後までスピードを維持してグンと伸びた。バテない脚が魅力。スピードよりも持久力が強みのタイプで、トップ級が相手だと少し瞬発力不足の面が出ると見ていた。
次走の新潟2歳Sは前記したことが表面化。夏の新潟開催最終日の時計の掛かる馬場で、前半のペースが遅いのにもかかわらず、8番枠から促しても進みが悪く、じわじわ後退して結局中団より後ろからの競馬。道中も追走に苦労していたが、3~4角で中団の外から、息の長い脚で伸びて2着。上位の上がり3Fが33秒前後まで求められたために、中団内目から抜け出したセリフォスの決め手に屈する形での2着だった。
前走の京成杯は5番枠だったために、道中馬群の中で包まれて、2角で少し接触。4角でも詰まり、十分なスペースがないまま直線を迎え、序盤で置かれた。そこで生まれたスペースから外に出し、ラスト1Fくらいから追われたが反応がひと息。ラスト1Fで内を捌いてきたヴェローナシチーにも決め手で見劣り、4着までだった。エンジンの掛かりが遅い馬だけに仕掛けが遅れたのは痛手。今回は自由に動ける12番枠。馬場が悪化して上がりの掛かるレースになっても、外差し馬場でも外枠は好ましく、今回の最有力馬だ。
【能力値4位 アルナシーム】
デビュー4戦目の朝日杯フーチュリティSでは、8番枠から酷い出遅れで単独最後方からの競馬。そこから内の開いたスペースに突っ込み、3角では中団。3~4角でもじわっと前との差を詰め、直線序盤で3列目からしぶとく伸びて、一旦は先頭列に並びかけるかのレベルだったが、ラスト1Fで外の各馬にジリジリと離されての4着だった。同日は外差し馬場。出遅れたことで、最後の直線でも内を選択せざるを得なかったのは痛手だったが、それでも外から差した勝ち馬ドウデュースと0.5秒差なら上々の内容。
前走のつばき賞では6番枠からまずまずのスタートを決めて、各馬の様子を窺いながらコントロールして中団の外目。レースが超絶スローペースだったために、かなり折り合いを欠いて前とのスペースを確保しながらの追走となった。4角でも掛かり気味だったが、外に出されると、すぐに2番手まで浮上。そこからはジリジリではあるが、逃げたテンダンスにラスト3F32秒9で上がった中で、良く差を詰めていた。
前半で脚を使っても直線でもうひと脚使えた朝日杯フーチュリティSの内容が豊富なスタミナを感じさせる内容で、馬場悪化も問題なく加点材料。ただ、これまでの4戦中3戦で明らかに出遅れており、スタートがネック。前走にしてもテンの1Fが13秒1と遅かったことから、結果的に出遅れなかったとも受け取れ、前走の一戦だけでは改善されたとは言えない。時計の掛かる馬場の外枠なら多少の出遅れも挽回しやすいが、位置取りが悪くなる危険性を考えると中心視できない。それでも重い印は打ちたい1頭ではある。
【能力値5位 アサヒ】
質の高いメンバーが揃った6月の東京新馬戦の2着馬。同レースの1着馬は後の札幌2歳Sの覇者であり、先月の共同通信杯の2着馬でもあるジオグリフ。3着馬は先々週の弥生賞を優勝したアスクビクターモアである。このレースでアスクビクターモアに先着してはいるが、3角で先頭に立ってジオグリフに目標にされたアスクビクターモアのほうが強い競馬をしている。また、それを証明するように次走では同馬に敗れての2着だった。
しかし、そこからレースを順調に使われて上昇し、前々走の東京スポーツ杯2歳Sでは2着と好走。3番枠から五分のスタートを切ると、そこから様子を見ながら促して、最終的に好位の後ろの内々を追走。前半が超スローペースだったため、アルナシームが折り合いを欠いて、向正面で一気に位置を押し上げた結果、差し、追い込み有利の決着となった中での2着だけに、この内容は評価できる。
前走の共同通信杯では2番枠から出遅れて単独最後方からの競馬。3~4角でも最後方から最内を追い上げて、直線序盤では最後列。最後の末脚はさすがで前との差を詰めていたが5着までが精一杯だった。前走でアサヒ本来の能力を出し切れていないだけに、ここである程度は巻き返して来るだろう。ただし、出遅れ癖があって、前半でそれを挽回しきれるまでのスピードもなく、後半型のレースでもやや決め手不足な面があるので、勝ち負けまではどうか?
穴馬は、前走の水仙賞で2着のオウケンボルト
オウケンボルトはデビューから上昇一途で、前走の水仙賞で2着。前走は大外9番枠から好発を切って好位の外を追走し、4角外から一気に上がって先頭での競馬。一旦は完全に抜け出したところを最後に外からテンダンスに差されたが、3着馬を2馬身半差ほど引き離しているように強いレース内容だった。
中山芝1800mで行われるスプリングSは、前走で芝2200mを経験していることが強みとなるもの。外差し馬場だった一昨年のこのレースでは、前走の水仙賞で4着だったガロアクリークが、重馬場だった昨年のこのレースでは、前走の水仙賞で4着のアサマノイタズラが2着と好走している。
今回距離に不安がないぶん、向正面で積極的に動けることが好走に繋がっているようだ。今回は捲りを得意としているM.デムーロ騎手へ手替わりということもあり、狙ってみたい。また、前走水仙賞組は、馬場が悪化するほど、距離経験の優位性が高まる。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ビーアストニッシドの前走指数「-13」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.3秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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