【フィリーズレビュー】今年はハイレベル! 堅調決着のウラにある桜花賞につながる理由とは

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レース上がり35.0
桜花賞路線はチューリップ賞が本番へ向けたひと叩き、試走といった意義が強い反面、フィリーズレビューやアネモネSは試走ではなく、本番。桜花賞への出走権をかけた背水の陣といったイメージが強い。実際に過去10年、アネモネSから桜花賞好走はゼロ、フィリーズレビューからは17年レーヌミノル1着しかいない。またフィリーズレビューはフルゲートになることが多く、波乱傾向が強い。
しかしながら今年はフルゲート割れ、2,1、4番人気で決着した。近年にない堅い結果は、いつものフィリーズレビューとは一線を引いておきたい。結論からいえば、それはレースレベルが高かったからではないかと考える。フィリーズレビューが荒れるのは、ハイペースで最後、どの馬も末脚が鈍り、ゴール前でもつれ、伏兵が流れに乗じて突っ込んでくるから。今年はそんな競馬にならなかった。
とはいえ、ハイペースはハイペース。ダートで逃げ切ったコンクパールがハナに立ち、外から小倉芝1200mで先行したテイエムスパーダ、内からアドヴァイスが追いかけ、折り合いを欠き気味にスリーパーダも押し寄せる。前半600m12.0-10.5-11.0、33.5は直近2年とほぼ同じ。先行勢は苦しかった。後半600mは11.5-11.7-11.8、35.0。例年であれば中団追走組にとっても厳しく、もっと最後は時計を要し、もつれておかしくない。直近2年は36.0、35.5だから、今年の35.0はまとまった。
明暗わけた4コーナー
その要因は2着ナムラクレアにある。前半は中団のインに潜み、勝負所4コーナーで包まれまいと、思い切って外を目指して進出。このロスが結果的に勝ち馬サブライムアンセムに差される原因になったが、1番人気、結果を求められた一戦で無理はできない。距離をロスしてでも、最後の600mを上がり2位34.4でまとめたのは力の証だ。これがレースのレベルを引き上げた。ナムラクレアの確かな末脚があったから、伏兵に出番はなかった。1400mベストでマイルへの再延長は微妙ではあるが、2歳GⅠ・5着はダテではない。そして阪神JFのレベルの高さをここで示してくれたので、桜花賞の馬券は組み立てやすくなった。
ナムラクレアを差し切ったサブライムアンセムは池添謙一騎手らしい、自分に課せられた命題を確実に実行する力が光った。スタートでやや遅れても無理しない。サブライムアンセムはこれまで折り合いに不安があり、位置取りを徐々に前にすることで結果を出した。
ゲートで遅れたら、出していって位置を取りに行ってもおかしくない。ただ、馬とのリズムを乱す危うさもある。それを天秤にかけ、中団後ろ、ナムラクレアの背後で行きたがるところをなだめ切った。権利をとるなら、ハイペースで末脚をためて爆発させる。シンプルながら胆力ある騎乗だった。
ナムラクレアが外に行き、中団馬群が外へ流れていったスキをつき、タイトなコーナリングから距離ロスを最小限にとどめ、馬群に突っ込んだ。スペースが空くかどうかはまさにギャンブル。それを避けて、外へ行っては距離をロスし、ナムラクレアには及ばない。勝つための賭けができる、これこそ池添騎手の魅力だ。
絶妙なタイミングでスリーパーダとキミワクイーンとの間に進路が生まれ、抜け出してきた。ナムラクレアとのコース差を考えれば、もっと突き抜けてもよかったが、勝利したことは大きい。ナムラクレアをものさしにすれば、阪神JF上位組との差はそんなにない。
前半ハイペースを考えれば、3番手から3着に流れ込んだアネゴハダも評価したい。1、2着馬とは決め脚で見劣ったものの、ハイペースに強く、阪神JF9着から着実に力をつけた。ナムラクレアと同じくマイルへの再延長は疑問だが、先々まで覚えておきたい。
勝ち時計1.19.9もレースレベルの高さを示す。最後に上がりを要することが多いフィリーズレビューで1分20秒を切ったのは1400m戦では初。高速馬場がアシストした記録ではあるものの、その価値は決して無視できない。確実に例年のフィリーズレビューとは違う。それは忘れないでおこう。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。
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