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【金鯱賞】レイパパレが能力断然も、中心は従順で幅広い展開に対応可能なサンレイポケット

2022/03/12 17:00
山崎エリカ
2022年金鯱賞_PP指数,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

逃げ馬有利も、今年は典型的な逃げ馬が揃った一戦

金鯱賞が行われる中京芝2000mは、スタンド前の上り坂からスタートして、向正面の半ばまで緩やかに坂を上っていくコース。ただ、最初の1角までの距離が約314mあり、逃げたい馬が複数いた場合はハナ争いがもつれ、超ハイペースとなって差し、追い込み馬が上位を独占することもある。

しかし、逃げ馬が序盤から主導権を奪い1角までに隊列が形成されれば、ペースが落ち着き、昨年の鳴尾記念のユニコーンライオンとショウナンバルディ、中日新聞杯のアフリカンゴールドとショウナンバルディのように行った、行ったが決まることもある。特に金鯱賞は2回中京開幕週の高速馬場で行われるため、昨年のギベオンのように、少し無理して逃げても押し切れる傾向が強い。

また、先週の弥生賞時のコラムで、本番への優先出走権が付与されるトライアルやステップレースはスローペースになりやすいことを説明したが、金鯱賞は2017年からこの時期に移行、大阪杯のステップレースになってからはスローペースになることが多い。2012年~2016年は逃げ馬の3着以内がゼロに対し、2017年からは、逃げ馬は1着1回、2着2回、3着1回と活躍している。

ただ今年はジャックドール、ショウナンバルディなど典型的な逃げ馬が揃い、素直に逃げ馬に飛びつけない。しかも、この2頭は大阪杯への優先出走権が欲しい立場。他にもギベオン、シフルマン、レイパパレと前に行ってこその馬が多く、平均ペースよりも速くなると推測される。前に行く馬が強いので、それでも残る可能性はあるが、差し馬も届く想定で予想を組み立てたい。

能力値1~5位の紹介

2022年金鯱賞_PP指数,ⒸSPAIA



【能力値1位 ジャックドール】
昨秋から破竹の4連勝でリステッド競走の白富士Sを制した快速馬。同馬はデビュー3戦目の未勝利戦ではスタートを決め、2番手を追走したものの、2角で逃げ馬に並びかけ、向正面ではもう先頭に立つスピードの違いを見せる競馬を披露。9馬身差の独走で勝利した。この時からかなりの素質馬と見ていたが、その予想どおりにここまで駒を進めてきた。

前走の白富士Sは1回東京開幕週でかなりの高速馬場。そのうえ同型馬不在、勝って当然のレースを順当に逃げ切り勝ちしたもの。しかし、ジャパンCと同日に行われた前々走のウェルカムSは、ジャパンCでコントレイルが外から差し切って優勝したように、外差し馬場だった。

しかし、前々走は同型馬が複数頭おり、前半3F35秒9とけっして遅いペースではなかったが、13番枠から楽々と主導権を取り、ラスト3F最速で勝利。ラスト2F目で先行勢の脚が止まったところで、差を4馬身まで広げ、最後は差し馬に少し差を詰められたが3馬身半差の完勝と強い内容だった。

今回のメンバーでテンの速さは同馬が一番。ただ内に同型馬のショウナンバルディが入った点がネックで、ペースが速くなる可能性もある。能力の高さから重い印は打つが、人気ほどの信頼はできない。

【能力値2位 サンレイポケット】
昨秋はGⅠ・天皇賞(秋)とジャパンCで善戦し、存在感を見せつけた馬。天皇賞(秋)では8番枠から五分のスタートを切り中団を追走。2角で窮屈になりながらも向正面で内のスぺースを拾い好位まで位置を押し上げた。3~4角でも3列目の最内のポジションをキープ。直線に入り中目に誘導、ラスト1Fで抜け出し3強に次ぐ4着に好走した。

ジャパンCでは12番枠からいったん好位の外を取ったものの、そこから位置を下げ1~2角で内に潜り込み、好位のやや後ろの最内を追走。向正面でキセキが捲ってペースが速くなったところで、やや置かれた中団の位置。4角で包まれたが直線序盤で上手く外(コントレイルの後ろ)に出して進路を確保。そこから流れ込んでの4着。

4角で包まれた時は冷や冷やしたが、ひとつ外にいたシャフリヤールが外に出すタイミングでワンテンポ待ち、シャフリヤールの外に出した辺りに鮫島騎手の柔軟さを感じた。スピード面にやや不安があるが、鞍上の指示通りに動けるのもひとつの能力。サンレイポケット自身が力をつけていると言える。

前走の京都記念は降雨の影響がさほどなく、超高速馬場でアフリカンゴールドが逃げ切った。それを5番枠から押し進めいったん好位を取ったが、勝ち馬らに内を切られポジションダウン。序盤で脚を使い、さらに後方外目からという最悪の競馬になったが、それでも最後の直線でしぶとく伸びて3着を死守した。

今回は芝2000mの外枠だけに差す競馬になると見ているが、前が有利な展開となった超高速馬場の前走でも対応しており、展開関係なく上位には来れそうだ。逆に前が競り合ってペースが速くなれば、今度こそ連対圏突入まであると見る。距離損なくレースを進めたいタイプで大外枠はマイナスだが、13番枠なら許容範囲だ。

【能力値3位 レイパパレ】
重馬場で行われた昨春の大阪杯では骨を切らせて肉を断つ、ハイペースの逃げを演出して逃げ切った。最後の直線で馬場の良い外に出したとはいえ、同馬を潰しに動いたサリオス、グランアレグリア、コントレイルなどを寄せ付けず、最後は4馬身差の完勝。当時記録した指数はここでは断トツ。

次走の宝塚記念では、内のユニコーンライオンを行かせ、2番手からの競馬で3着。前半3Fが35秒1と速かったことから控えたのは良かったが、直線序盤で一旦ユニコーンライオンに並びかけたが、ラスト1Fで少し甘くなり、同馬に再び前に出られたのは、タフな馬場で激走したダメージによるものが大きい。

立て直しを図った3走前のオールカマーでは4着。ハナを主張したロザムールの2番手でレースを進めた。3~4角で同馬に並びかけ、4角外から上がってきたグローリーヴェイズに合わせて仕掛けた。直線序盤では抵抗を見せていたものの、やはりラスト1Fで甘くなり結果4着。ペースを考えればこの4着も悪くない。

また、前々走のエリザベス女王杯は、アカイイトの外差しが決まったように前に厳しい流れ。レイパパレは1番枠からスタートを決め折り合いを付けていたが、外のウインマリリンが絡んで来たことでコントロールに苦労しながら1角へ。しかし、1~2角で前が一気にペースダウンししたため、ここで前の馬との差を詰めてしまう形。結果包まれ、早めに動かざるを得ない形になった。

しかも、4角で外に出そうとしたところで、外の馬に接触して少し躓くアクシデントもあった。4角出口ではどうにか先頭に立ったものの、もうひと脚が使えず、外からアカイイトに並ばれ、最後は2着争いに呑み込まれて6着敗退。

しかし、エリザベス女王杯では先行馬が大敗を喫する中での6着。先行勢では最先着しており、「さすがGⅠ馬」と思わせた。前走の香港Cは3番枠からまさかの出遅れ、中団内目からの競馬となった。しかも、前半5F62秒49-後半5F58秒17の超スローペースだっただけに、全くレイパパレの持ち味を生かせずに終わったと言っていい。道悪を得意としている同馬にとって高速馬場は減点材料だが、前がペースを引き上げ、上がりの掛かる決着になれば変わる可能性が高い。

【能力値4位 アカイイト】
昨秋のエリザベス女王杯を、10番人気の低評価を覆して優勝。しかし、シャムロックヒルとロザムールが競り合いペースを引き上げたなか、16番枠から出遅れ後方からの競馬になったことで、展開に恵まれた。エリザベス女王杯が行われた11月の阪神は、芝2000m以上の大半のレースで消耗戦になっており、差し馬天国だった。

また、有馬記念でも13番枠からやや出負け。しかし、ここでもパンサラッサがハイペースで逃げたため、後方外々で脚をタメていた同馬はエリザベス女王杯ほどではないにせよ、展開に恵まれた。また前走で激走した後の一戦で、7着と善戦しているあたりは一定の評価ができる。

地力をつけた今なら今回のメンバー相手でも展開ひとつで勝ち負けになる。しかし、高速馬場で前が容易にバテない展開で、位置取りが後ろ過ぎになる怖さがある。後方からでも差し切れる瞬発力があればいいが、同馬は出遅れ癖もあり、エンジンの掛かりも遅い。超スローペースの後半勝負となった昨春の中京芝2000m、シドニーT(2勝クラス)では後方内々を上手く立ち回りながらも、外からソフトフルートに差されていることを考えると狙いにくい。

【能力値5位 アラタ】
昨春から休養を挟んで1勝クラスからオープンまで4連勝、前走の福島記念でも3着と善戦した。3走前のSTV杯では、好位の外からしっかりと前を捕らえ1馬身1/4差の完勝。前々走のケフェウスSは重馬場の超スローペースを好位の内目で流れに乗り、メンバー最速タイの上がり3Fタイムで勝利。同馬はもともと重馬場巧者のスタミナ型、瞬発力不足な面があっただけに、タフな馬場とはいえ、上がり勝負に対応できたのは大きい。

同馬は前走の福島記念でもメンバー最速の上がり3Fタイムを記録しているが、逃げたパンサラッサが前半5F57秒3-後半5F61秒9とかなりの激流を演出したことで、前が崩れてのもの。10番枠からやや出負けしたことで序盤あまり無理をさせず、中団馬群を追走。向正面で前へ行った馬がペースを引き上げたなか、動かず後方2列目付近まで位置を下げた。そして、前がバテ始めた4角から進出を開始しての上がり3F最速タイムだけに高い評価はできない。

高速馬場だとそこまで速い上がりが使えず、今回は前走でかなり後方からレースをしているだけに、レースの流れに乗れない可能性も高い。今回のメンバーだと中団より後ろからになると見ているが、高速馬場だけに後方からだと苦しい。また、休養明けで相手強化の一戦、ここは狙い下げたい。

狙い目は前走で動くに動けなかったポタジェ

ポタジェは3走前の毎日王冠までデビューから11戦連続で3着以内。金鯱賞3着、新潟大賞典2着、毎日王冠3着と安定した走りを見せていた。しかし、前々走の天皇賞(秋)では6着、初めて馬券圏外に敗れた。同馬は自在性があり、金鯱賞のようなタフな馬場、毎日王冠のような超高速馬場、またスローペースも、ハイペースも高い水準でこなせるのが強み。一方、決定的な武器がないのが弱点だ。

天皇賞(秋)は休養明けの毎日王冠で自己最高指数タイを記録した後の疲労残りの一戦。加えて逃げたカイザーミノルにプレッシャーをかけ、4角から早仕掛けしたグランアレグリアの後ろをついて行ったのが敗因。トップスピードが違うエフフォーリアやコントレイルに交わされるのはともかく、掲示板争いにも敗れたのは、本仕掛けが早かったからだろう。

また前走のAJCCは休養明けだったこともあり、6番枠から促してもあまり進んで行かず、外からダンビュライトなどに切って来られてポジションダウン。中団中目で包まれ、動くに動けず。3~4角で徐々に外に出していったが、そこでも外からマイネルファンロンに被された。そこから進路が開いて追い出されたのはラスト2F地点。そこから伸びてはいたが5着が精一杯だった。前走は負けて当然の内容だったが、今回巻き返す力はある。ただ基礎能力がそこまで高い馬ではなく、能力上位馬に破綻がないとここでも善戦止まりで終わる可能性はある。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ジャックドールの前々走指数「-21」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.1秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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