【オーシャンS】ジャンダルム復活! 母子スプリントGⅠ制覇へ、課題は左回り

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中山芝1200mなら崩れないジャンダルム
淀短距離S、シルクロードSがともに中京。左回りから右回りへ。今年のオーシャンSのポイントはそこにあった。淀短距離Sを勝ったスマートクラージュが1番人気に支持されたように、今年も大混戦。それだけにわずかな変化が結果に影響する。
勝ったのは7歳ジャンダルム。17年デイリー杯2歳S以来、久々の重賞2勝目。デイリー杯はアッゼニ騎手騎乗。その後はホープフルS2着、その勝ち馬はタイムフライヤー、ジャンダルムがクラシック有力候補だったことが懐かしい。母ビリーヴは02年スプリンターズS、03年高松宮記念を含む10勝をあげた快速スプリンター。ジャンダルムの重賞2勝目が母のGⅠ初制覇と同じ舞台。これもめぐり合わせだろう。
ジャンダルムは母譲りの豊富なスピードが影響したのか、若い頃は折り合いが難しく、中距離をこなせなかった。マイル戦に活路を見出し、通算3勝目は5歳はじめのニューイヤーS。その後、二桁着順もあり、波に乗れない。スタートが悪く、不利を受ける場面も多かった。
6歳春、中山の春雷Sで芝1200mに初出走し1着。ようやくビリーヴから受け継いだスピードをいかせた。昨年のスプリンターズSこそ11着だったが、中山は通算【3-1-2-5】とムラな成績のわりに安定。その反面、左回りは【1-0-0-8】と米国血統だが苦手。前走シルクロードS13着から舞台が好転した。
騎乗する荻野極騎手は60回目の挑戦でJRA重賞初制覇。今年は新人騎手が10名デビュー、勢いある後輩たちに押され気味だっただけにこの勝利は大きい。ゲートに不安を抱えるジャンダルムも荻野極騎手が乗るとスムーズ。今回も内枠から好位3番手、馬場状態を考えれば理想的だった。
ジャンダルムは次走高松宮記念で母子制覇をかける。だが、またも課題の左回りがカギになる。ジャンダルムを知り尽くした荻野極騎手はそれを克服させたい。
GⅠでもと思わせたナランフレグ
レースはデトロイトテソーロがダッシュ力で機先を制するも、じわじわとスピードに乗ったビアンフェ、昨夏よりダッシュ力が鈍ったファストフォースが追いかける。外からビアンフェがハナを奪い返したのは残り800m標識付近。前半600m33.4はすんなりした隊列によるものではなく、ラップ以上に忙しかった。
3コーナーからハナに行ったビアンフェはかつてモズスーパーフレアとGⅠで先を競った快速型。途中からハナに立つ厳しい流れであってもハイペースへの耐性が違った。ジャンダルム以外の先行型を寄せつけず、ゴール寸前まで粘り3着。こちらも右回り【4-1-2-3】、左回り【0-1-0-3】、休み明けのシルクロードS9着はノーカウントでよかった。それだけに高松宮記念で今回のような粘りを見せられるかどうか。
2着ナランフレグは1、3着馬と対照的に左回り【3-3-2-7】のサウスポー、なかでも中京は【1-3-2-1】。シルクロードS3着からパフォーマンスを落とすのではとも見られた。このレースまで中山芝【0-0-0-3】、差しが効くレースであっても最後の伸びが見られなかった。それだけにこの2着は成長の証ともいえる。終い一手でさばきが常にカギになるムラ駆けタイプだったが、昨秋から末脚に安定感があり、成績が一定になりつつあり、充実期。こちらは出走できれば得意の中京ならGⅠでも面白い。
4着ダディーズビビッドも左回り【2-2-2-4】のサウスポー。前半流れに乗れるも、3コーナーで下がり、4コーナーで手応えが怪しかった。明らかに右回りのコーナーリングでモタついた。それでも直線は盛り返して4着、重賞でも目途を立てた。今後は左回りならば重賞でも狙っていきたい。
1番人気スマートクラージュは10着。3コーナーでラチに接触する不利があり、馬の気持ちが萎えた印象。とにかく力は出していない。序盤は重賞のハイペースでも内枠から流れに乗る走りを披露。この着順を次走鵜呑みにしないほうがいい。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。
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