【弥生賞】勇気ある積極策で道を開く 日本ダービーまで注目したいアスクビクターモア、ドウデュース

勝木淳

2022年弥生賞ディープインパクト記念のレース展開,ⒸSPAIA

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サトノフラッグと同じローテーション

2021年最優秀2歳牡馬ドウデュースが登場。きさらぎ賞を勝ったマテンロウレオ、京都2歳S以来のジャスティンロック、前走リステッドを勝ったリューベック、インダストリア、ホープフルS3着ラーグルフ、京成杯2着ロジハービンと活気あるメンバーが集結。クラシックの登竜門としての価値を高めた。

しかし勝利したのは前走1勝クラスを突破したアスクビクターモア。メンバー唯一のディープインパクト産駒だった。ディープインパクト産駒は昇級を苦にしない。産駒デビュー以来、3歳1~5月のGⅡ、GⅢに限ると、昇級戦で27勝(うち22勝が前走1勝クラス)、前走もOPクラスで19勝(うち15勝が前走重賞)。3歳春のディープインパクト産駒は重賞実績不問、昇級即通用タイプが多い。

アスクビクターモアは、2年前にこのレースを勝ったサトノフラッグとまるで同じ、金杯デーの1勝クラス芝2000mからの連勝だった。間隔を空ける、昇級即通用のディープインパクト産駒には理想的なローテーションといえる。覚えておこう。

クラシックロードを切り開く積極策

きさらぎ賞で逃げて穴をあけたメイショウゲキリンが行く構えを見せず、若駒Sを逃げ切ったリューベックがハナに行き、滅多にペースが上がらない弥生賞らしく序盤は緩い流れになった。アスクビクターモアは積極的に番手にとりつく。ドウデュースに敗れた昨年アイビーSでも見せた引っかかり癖はこの日も健在。だが、無理に折り合って下げるより、それを気にせず積極的に行こうという構え。馬場やペース、上位実績馬との力関係を考えれば、積極策こそが権利獲得への道。折り合いより位置という作戦が見事に当たった。

前半1000m通過1.01.1は完全に先行勢ペース。途中でロジハービンが外を強引に動き、ペースは残り800mから上昇。この動きに釣られた馬やスムーズさを欠いた馬がいたなか、番手にいたアスクビクターモアは逃げるリューベックを利用し、上手にペースをあげた。後半800m11.8-11.5-11.4-12.3、最速区間11.4で先に動いて決着をつけた。前進気勢の強さは今回あえて度外視したことで今後の課題として残ったが、タイトルを獲得し、クラシックへの道は開けた。まずはそこだろう。クラシック路線はやり直しがきかない。

課題を克服したドウデュース

2歳チャンピオンのドウデュースは2着。ハーツクライ産駒はこれで弥生賞【0-5-1-7】。まさにこの傾向通りの結果になった。ドウデュースも基本的に外回り、直線が長いコースが得意。日本ダービーを意識するなら2着は上々。14年2着ワンアンドオンリーはその後、皐月賞4着、日本ダービー1着。ドウデュースは、課題の距離延長と折り合いはクリア、中団馬群で流れに乗った。3、4コーナーでやや下がった場面はハーツクライらしさといったところ。ただワンアンドオンリーほどモタつかず、皐月賞で克服できる余地は十分ある。

3着ボーンディスウェイは同じハーツクライ産駒でも、2勝目の葉牡丹賞をみる限りこの中山芝2000mはベスト。逃げ切った葉牡丹賞はグランドラインが押し上げ、残り1000mで一気にペースアップ。ボーンディスウェイは11.9-11.5-11.7-11.4-12.5という厳しめのラップをしのぎ切った。ホープフルSでは番手に控えて、力を発揮できなかったが、この日は馬群に入って3番手に収まり、最後に外から末脚を伸ばした。こちらも短期間で進化を見せており、元来、皐月賞でこそというタイプだけに本番で要注意だ。

4着ジャスティンロックは休み明けの分か前半モタつき、1コーナーで外に行きたかったが、内に押し込められる形になった。残り800m付近で外に出て、追撃態勢をとったところに外からロジハービンが進出、仕掛けの機を逸した。今回は全体的にややリズムが悪かった。

弥生賞は皐月賞トライアルであり、日本ダービーを展望する一戦。かつてのコンセプトが戻った今年、この結果は必ず日本ダービーにつながるはず。特にアスクビクターモアやドウデュースは皐月賞の結果が悪くても、評価は下げられない。弥生賞はそんな価値あるレースだ。

2022年弥生賞ディープインパクト記念のレース展開,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。



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