【阪急杯】古豪ダイアトニック、執念の復活! 5歳春の忘れものを取り戻せ

勝木淳

2022年阪急杯のレース結果,ⒸSPAIA

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不利に泣いた5歳春

重賞2勝ダイアトニックが5歳以来の重賞3勝目をあげた。この3勝目は単なる勝ち星ではない。その道のりは険しく、阪急杯は5歳時に2位入線3着降着。反面、次走高松宮記念ではGⅠタイトルを目前にしながら、降着劇があるほど大きな不利を受け、4位入線、繰り上げ3着。夏に函館SSを勝ち、重賞2勝目をあげるも、その後15、13着。6歳は骨折のためわずか1戦(14着)にとどまった。

ようやく立て直しに成功したのは7歳になった今年の京都金杯だった。人気急落12番人気ながらインを一瞬鋭く伸びて4着。5歳時に見せた一瞬の切れ味が戻ってきた。そしてダイアトニックは因縁の阪急杯を勝利。今回もラチ沿いの厳しいところを突き、抜け出した。立ち回りと一瞬の切れ味こそ最大の武器である。これを改めて証明した。

進路をこじ開ける瞬発力

レースでは好発からハナを伺う積極策。かつてのダイアトニックと同じ組み立て。インのグルーヴィットやリレーションシップがハナを奪いに来るか、けん制しながらそれを待ちかまえる。3コーナー手前で8枠モントライゼが強引にハナをとりに来ると、一旦引いて譲る。岩田康誠騎手もダイアトニックも慌てない。さすがはベテラン人馬。最小限でやり過ごす。

結果的にインに潜ったことが勝因。変則日程のため、開幕3週目とはいえ、やはり阪急杯はインが絶対的に有利。前半600m34.0は昨年と同じ。イーブンペースでは外を回れば差し届かない。立ち回りこそが重要な展開だった。最後の直線に入ると、ラチ沿いをこじ開けた。わずかにモントライゼが4コーナーで外に動いた場面、その瞬間に加速、スペースに頭を突っ込めた。一瞬の切れ味とは末脚だけに限らない。わずかな隙間に突っ込むためにも大切だ。加速のためにもたつけば、インを割れない。

5歳時の走りを取り戻したダイアトニックは当時の阪急杯3着降着、高松宮記念繰り上げ3着を越える成績を目指す。それを達成する可能性はある。今春のスプリント路線はレシステンシア以下大混戦、7歳でもまだまだ若く、軽視はできない。

2、3着も本番で巻き返し注意

2着は9番人気トゥラヴェスーラ。京王杯SC2着以来の競馬だったが、その実績が結果にあらわれた。道中は最内枠を味方にインの後方。4コーナーでも引っ張り切りの手応え。ただ前は完全に壁。厳しい状況下も、目の前のダイアトニックを目指し、同馬が抜け出した進路をなぞるように脱出してきた。鮫島克駿騎手の好判断も光る。昨年高松宮記念4着馬。こちらも7歳とて侮れまい。

3着6番人気サンライズオネストは距離延長で積極策。終始3番手をキープし、4コーナーで前の2頭を交わしに動く積極策で粘り込んだ。自らレースを動かしたことで最後は苦しくなったが、4着リレーションシップには1馬身1/4差、充実しているといえる。1200mに距離短縮する本番、高松宮記念は前走カーバンクルSのように終い時計を要しやすい舞台。出走できるようならおもしろい。

高松宮記念に向かう重要ステップレースの阪急杯は、1番人気7歳ダイアトニック、2番人気昇級初戦グレイイングリーン、3番人気に3歳以来重賞未勝利タイセイビジョンといったメンバー構成。オーシャンSの結果にもよるが、香港から休養中のレシステンシア、阪神C覇者グレナディアガーズ以下は図式が定まりにくい。上記2頭が抜けた存在でありながら、馬券的には大混戦。阪急杯上位馬にもチャンスは十分ある。

2022年阪急杯のレース展開,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。

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