SPAIA競馬
トップ>ニュース>【天皇賞(秋)】3強ともチャンスあり!中でも死角が一番少ないのはグランアレグリア 穴は毎日王冠組の先行馬カイザーミノル

【天皇賞(秋)】3強ともチャンスあり!中でも死角が一番少ないのはグランアレグリア 穴は毎日王冠組の先行馬カイザーミノル

2021/10/30 17:00
山崎エリカ
2021年天皇賞(秋)SPP指数,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

33年間も逃げ切り勝ちなし

天皇賞(秋)は1987年のニッポーテイオー以来、33年間も逃げ切りが決まっていない。歴史上は1991年にプレクラスニーが逃げ切り勝ちを収めているが、これは1着入線したメジロマックイーンの降着によるものだ。

1998年にあのサイレンススズカは5F57秒4の驚異的なタイムで通過したものの、大欅の向こう側に消え、2015年のエイシンヒカリはデビュー戦以来の折り合う競馬を選択。また、2017年に逃げると思われていたキタサンブラックは出遅れ、デビュー以来初の後方から道中追い上げる形。サイレンススズカで逃げた武豊騎手がその後、積極的に逃げなくなったのは、天皇賞(秋)が行われる東京芝2000mは、良馬場でも逃げ切るのが難しいと知っているからだろう。

なぜ難しいのかというと、Bコース替わりなどの影響も多少あるが、東京芝2000mは1角奥のポケット地点からスタートすることが一番の理由だと言える。このポケットは東京芝2000m専用のため、芝状態がとても良く、各馬の出脚がつきやすい。すぐにコーナーを迎えるので外枠の馬はすぐに切り込んでくるし、それに邪魔されまいと、逃げたい馬は序盤から加速し、2角で先頭を奪うという意識で騎乗しなければならない。

序盤からスピードに乗せて行かせたうえに、更に次の3角までの距離が長いとなると、逃げ馬は容易に息を入れられない。レースの前半3F目までが速くても4F目で息を入れれば、最後の直線で余力を残せるが、4F目でしっかり息を入れないと、最後の失速に繋がる。

逃げ馬が逃げ切れない理由は上記の通りだが、この世の万物同様に騎乗法も進化するもの。2014年以降は極端なスローペース化が起こっている。近年は逃げ馬が2角で先頭を奪うのではなく、2角を過ぎてから先頭を奪う意識で乗っているようだ。実際にかつては逃げ馬受難で、差し、追い込み馬台頭のレースだったが、2014年以降に良馬場で行われた年は、先行~中団からの押し切りが目立っている。

2018年のキセキが3着、2019年のアエロリットが3着、昨年のダノンプレミアムは4着。天皇賞(秋)で逃げ馬が逃げ切る日はそう遠くないかもしれない。今年も逃げ馬不在でスローペースが予想されるだけに、前からでも押し切れる可能性はある。

能力値1~5位馬の紹介

2021年天皇賞(秋)SPP指数,ⒸSPAIA



【能力値1位 グランアレグリア】
数々のG1レースを優勝した名馬。前々走のヴィクトリアマイルは4馬身差の快勝で自己最高指数「-27」を記録した。前走の安田記念は五分のスタートを切ったが、促しつつもあまり進んでいかず序盤は後方に近い位置になった。レースが淡々と流れる中で、3~4角でも後方中目でダノンキングリーの後ろ。直線で同馬が外に出したタイミングでそのスペースに詰め、中団馬群を捌いてラスト2Fからグンと伸びてアタマ差2着。

前走で見せた手応えの悪さから、前々走で走り過ぎた直後のレースということもあり、万全の状態ではなかったと推測される。この辺りはヴィクトリアマイルで4馬身差の快勝後、安田記念で2着に敗退した昨年のアーモンドアイに良く似ている。グランアレグリアは立て直された今回、状態面は上がってきているはずで、アーモンドアイ同様にこの舞台での復活劇を期待したくなるところ。

ただアーモンドアイと違うところは、グランアレグリアは長い距離の経験自体が少ないこと。しかし、土塊が飛ぶかなりタフな馬場で行われた大阪杯時よりスタミナは要求されないだろうし、レイパパレがハイペースでレースメイクした中、コントレイルよりも前の好位から、4角で外に出して勝ちにいっての4着。馬場が悪化しなければ距離の2000mには問題がないだろう。スタミナが不足する休養明けで、強気に勝ちに行く競馬をした場合は最後にスタミナ切れを起こす危険性もあるが、普通に乗れれば当然チャンスは大きい。

【能力値2位 ワールドプレミア】
一昨年の菊花賞馬。同馬が菊花賞で記録した指数は、ここ20年の菊花賞でワースト1、あまり強い馬と評価できなかった。しかし、その後は着実に成長を重ね、前走の天皇賞(春)は自己最高指数「-27」での優勝。

前走は逃げ馬ディアスティマが、それまで阪神芝3200m未経験の坂井瑠騎手に乗り替わり、高速馬場を考慮してもハロン12秒前後を維持するような恐ろしく速いペースでレースメイク。中団でレースを進めたワールドプレミアは展開に恵まれた面はあるが、それでも最後までしぶとく伸びた内容は強かった。また、同時に長距離適性の高さを感じさせた。

ただ今回は休養明けで一気に距離が短くなる。あくまで叩き台で、目標はジャパンC以降のレースだろう。レースの流れに乗ることも難しいだろうし、高い評価はできない。

【能力値3位 コントレイル】
無敗の三冠馬。デビュー2戦目の東京スポーツ杯2歳Sで記録した指数はかつてのナリタブライアンを思い出させるもので、どこまで強くなるのかと期待された。しかし、必勝が期待された昨年のジャパンCでは上の世代のアーモンドアイに敗れてしまった。三冠路線のライバルだったサリオスも古馬混合戦になってからはやや苦戦気味で、レベルが低調気味な世代だったと評価されるのも仕方がない。

また前走の大阪杯は3着に敗退。これでコントレイルの評価は大きく下がってしまったようだ。しかし、前走は休養明けで土塊が飛ぶかなりタフな馬場で、レイパパレがハイペースでレースメイク。そんな中で中団待機から4角で外に出し、勝負に出たグランアレグリアのさらに外から勝ちに行く競馬。グランアレグリアにはアタマ差先着したものの、最後に失速してしまったのは瞬発力型のコントレイルにとってはある意味、当然のこと。評価を落とす内容の競馬ではなかった。

同様な敗戦だったグランアレグリアが次走のヴィクトリアマイルで快勝したことからも、評価を落としてはいけない。今回は立て直され、ほぼ能力を出せる状態にあるだろう。引退まであと2戦、おそらく天皇賞(秋)70%、ジャパンC30%くらいの勝負度合いの配分になると見る。ここは三冠馬の名誉を汚さないためにも、優勝を期待したい。

【能力値4位 カレンブーケドール】
前々走の天皇賞(春)は、オーバーペースで逃げるディアスティマの2列目でレースを進め、3~4角では同馬に並びかけ、直線半ばでは先頭に立つ早仕掛けで失速し3着。逆に前走の宝塚記念はユニコーンライオン、レイパパレと隊列がすぐに決まり、ペースが上がらない状況下でキセキ、クロノジェネシスよりも後ろの中団外で我慢の競馬。

メンバー最速の上がり3Fタイムで上がってきたクロノジェネシスをマークし、後半が速くなった中で4角外々、クロノジェネシスよりも2頭分外を回っての4着完敗だった。前々走は早仕掛け、前走の宝塚記念は瞬発力がないカレンブーケドールには後ろ過ぎる位置からの競馬で4角のロスも大きかった。

カレンブーケドールは本当に鞍上に恵まれない馬だが、目一杯の仕上げだった昨年のジャパンCでは、デアリングタクトとクビの上げ下げでハナ差の4着に奮闘。このことから能力を出し切ったときはGⅠレースを優勝して当然の実力を持っている。今回は休養明けであくまで始動戦。ここである程度の着順でまとめられれば、今秋以降の活躍も期待できそうだ。

【能力値5位 ヒシイグアス】
昨年11月のウェルカムSを休養明けながら好指数で勝利すると、中山金杯を優勝。更には想定以上の上昇を見せ中山記念まで優勝してしまったように、ここにきての上昇度は素晴らしいものがある。

中山記念は前へいった3頭が後続を離して進み、緩みないペース。ヒシイグアスは離れた単独4番手。向正面でもペースが緩まない中、ケイデンスコールが内から上がってきて3列目の外。直線ではしぶとく伸び内のケイデンスコールと一緒に前との差を詰め、ラスト1Fで先頭にいたウインイクシードを捕え、さらにケイデンスコールを競り落としてのクビ差の優勝。ケイデンスコールは完璧に最内を立ち回っており、内容はそれ以上のものだった。

順調だったなら大阪杯でも好走が期待されたが、中山記念好走の疲れを取るための休養が長引き、今回は約8ヵ月の休養明けの一戦。順調さの面で微妙である。息持ちの不安点を補う上で待機策からの追い込み競馬ならば、ひょっとしたらとも思えなくはないが、そう簡単ではなさそうだ。

穴馬は中距離以上に可能性を秘めるカイザーミノル

ブリンカー効果があったようで、今年2月の3勝クラス斑鳩Sを休養明けながら好指数で優勝するとマイラーズC、京王杯スプリングCと重賞で連続3着と本格化。前々走の朱鷺Sでは休養明けながら、自己最高指数を記録して勝利と、さらに地力をつけている。

前走の毎日王冠は一気に距離延長のレース。大敗もあるかと見ていたが、トーラスジェミニの逃げで決して前が楽な状況下ではない中で、好位から流れに乗って勝ち馬と0.3秒差の5着に善戦。地力強化とスタミナがかなりあることを同時に証明した。意外にも中距離以上に適性がある可能性を示した前走。順調の強みを生かして上位入線の可能性は十分にある。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)グランアレグリアの前走指数「-27」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.7秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。


《関連記事》
【天皇賞(秋)】コントレイル、グランアレグリア、エフフォーリア 三強が挑むそれぞれの偉業、可能性が高いのは?
【天皇賞(秋)】3つの好データにぴたりと一致! 今年も「名牝」が躍動グランアレグリア
【天皇賞(秋)】注目“3強”の取捨は? 当日馬体重次第でポタジェ、ヒシイグアスなどにもチャンス