【天皇賞(秋)】府中の良馬場なら2000mでも負けられない 京大競馬研はグランアレグリアで勝負

京都大学競馬研究会

天皇賞(秋)インフォグラフィック,ⒸSPAIA

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3強の取捨がカギ

10月31日(日)に東京競馬場で行われる天皇賞(秋)(GⅠ・芝2000m)。昨年のクラシック三冠馬コントレイル、現役最強マイラーのグランアレグリア、皐月賞馬で3歳世代ナンバーワンのエフフォーリアが三つ巴の様相だ。

その他にもカレンブーケドールやワールドプレミア、ポタジェなど実力馬が多数出走しているが、基本は3強の取捨が中心になってくる。そのため今回は3強の分析を前半で行い、最後に印の順番を示す形で進めていきたい。


「世代レベルに疑問符」コントレイル

まずは昨年のクラシック三冠馬コントレイルについて見ていく。前走の大阪杯に関しては馬場が急激に悪化した影響を受け、3角から早めに動いたこともあり伸びきれず。特殊な馬場であったため流石に度外視したい。

考えるべきは「現4歳世代のレベル」だ。菊花賞でアリストテレスに迫られたが、そのアリストテレスは古馬になって物足りない内容。皐月賞とダービーで2着だったサリオスもパッとしない。三冠馬なので関係ないと考えることもできるが、少し心配な材料ではある。

また、早くから活躍していたディープインパクト産駒の牡馬は、古馬になって中距離芝GⅠで勝てない傾向がある。

ディープインパクト産駒古馬中距離GⅠ勝利実績(牡馬),ⒸSPAIA


1800m以上の芝GⅠを古馬で勝利した日本調教のディープインパクト産駒牡馬は全部で7頭(スピルバーグ、エイシンヒカリ、リアルスティール、アルアイン、フィエールマン、グローリーヴェイズ、ワールドプレミア)いるが、アルアインとリアルスティール以外は皐月賞に間に合わなかった馬。スピルバーグはダービーに出走こそできたが翌年以降上がり馬として出てきた馬ということを考えれば、大半が3歳秋以降に台頭してきた馬だ。ディープ産駒を古馬中距離GⅠで狙うなら晩成型の馬が良さそうだ。

最後に枠順についてだが、1枠1番となったのはコントレイルにとってあまり良くないと見ている。サンプルが少ないが菊花賞や大阪杯を見る限り、恐らく本馬は併せる形があまり得意ではない。特に菊花賞のように外からマークされる形で併せられると力を発揮できないように見える。1枠1番はコースロスがないのは利点だが、他馬からよりマークされやすく、どうやっても外から併せられる形になってしまう。以上の理由から評価を下げたい1頭だ。


「距離はもつ!」グランアレグリア

次に現役最強のマイラーであるグランアレグリアについて見ていく。前走の安田記念は連戦の影響か行き脚が付かなかったが、直線で馬群の間をこじ開けながら伸びて2着。2走前のヴィクトリアマイルでは昨年のアーモンドアイ同様、他馬を子ども扱いして完勝。昨年からの実績や勝ち方を踏まえても現役最強、もしかすると歴代最強のマイラーといえるかもしれない存在だ。よって今回の課題は「距離がもつか」という点に尽きる。

初の2000mとなった大阪杯では4着に敗れたが、かなりの道悪という特殊な馬場に加え、3角でコントレイルが動いていったため、それにあわせて早めに押し上げていかざるを得ない形になり、2000m以上のスタミナが求められる展開になってしまった。そのため、この1戦だけで「距離がもたない」と結論づけるのは早計だ。むしろ大阪杯では好位で折り合って進めていたように、気性面ではもう2000mをこなせる下地は出来上がっている。2歳時から3歳時にかけてはマイル戦でもガツンと引っ掛かるほどだったが、今ではしっかり折り合えるように成長しているのだ。

基本的に距離がもたない馬には「スタミナ不足で純粋に距離の壁がある馬」と「引っ掛かる気性のため道中で消耗してしまう馬」の2種類いるが、以前のグランアレグリアは恐らく後者。2歳時や3歳時は折り合いを欠き直線で最後苦しくなっているのが散見されたが、古馬になってからは折り合いをつけ、最後まで止まらず伸びるようになったからだ。1200m戦でも好走しているため短距離馬と見られがちだが、スプリント戦では明らかに前半で置いていかれており、能力だけで勝っているに過ぎない。

確かにベスト距離はマイルかもしれないが、少なくとも1200mより2000mの方が格段に向いていると筆者は見ている。残る懸念点は中間に喉の手術を受けたこと。調べてみたところ、一般的な喉鳴りが神経麻痺によるものに対し、喉頭蓋エントラップメントは喉頭蓋のヒダが喉頭蓋を覆うもの。これは切開すれば基本的に治るものらしくそこまで気にする必要はないと考えている。


「3歳ナンバーワン」エフフォーリア

最後に3歳馬エフフォーリアについて見ていく。皐月賞は器用に立ち回り後続を完封する強い内容で、菊花賞を完勝したタイトルホルダー以下を突き放していた。また、ダービーはちょうどゴールのタイミングだけシャフリヤールに交わされたが、早めに抜け出す王道の競馬で能力の高さを見せた。3歳馬の中ではナンバーワンといっていい存在。

古馬との力関係についてはクラシック組の多くがまだ古馬と未対戦のため判断しにくいが、ピクシーナイトがスプリンターズS、シュネルマイスターが毎日王冠、ソングラインが富士Sを勝つなど重賞戦線を席巻中。世代レベルはここ数年と比べても相当高そうだ。その世代でナンバーワンであるエフフォーリアは、普通に走ればここでも3着以内を外さないだろう。

過去10年3歳馬天皇賞(秋)成績,ⒸSPAIA


ただ、天皇賞(秋)において3歳馬は過去10年で勝利がなく、2012年フェノーメノの2着が最高。3着内も他に2014年3着のイスラボニータがいるだけで、過去の傾向という面ではクラシック上位馬でもそう簡単に通用するわけではないようだ。


グランアレグリアが勝ち切る

3強についての分析及び見解は以上の通り。これを踏まえつつ3強以外で狙いたい馬も述べていきたい。

本命はグランアレグリア。前半の分析で述べた通り、折り合いがつくようになった今なら2000mは十分こなせる。東京マイルでのパフォーマンスは史上最強レベルであり、良馬場の2000mならスピード能力で突き抜ける。枠も5枠9番と程よいところに入り死角はほとんどないと見て本命だ。

対抗はエフフォーリア。天皇賞(秋)における3歳馬の成績がイマイチということだけがネックだが、今年の3歳馬は強い。またレースセンスが高く好位からの競馬ができるので非常に安定感がある。夏を超えて成長をうかがえるので、19年ぶりの3歳馬制覇も十分ありそうだ。先週の菊花賞で最高の騎乗をした横山武史騎手の手綱さばきにも注目したい。

3番手はポタジェ。とにかく相手なりに走る馬でこれまで3着以内をすべて確保している。ややエンジンのかかりが遅く究極の切れ味勝負になると分が悪いが、GⅠならそこまでスローになることは考えづらく踏み遅れることはなさそう。川田騎手とは5戦5勝の好相性で、この馬のことを熟知しているのは大きい。3歳春のクラシックに間に合わなかったディープ産駒でどちらかといえば晩成型なので、現時点で4歳牡馬の中では一番強い可能性もあると見ている。上位2頭が強いので1着で来ることはやや難しそうだが3着なら十分可能性がある。

4番手はヒシイグアス。昨秋から4連勝中だが、今年の2戦が普通に強い内容。中山金杯では中団追走から外を回してねじ伏せる競馬。また前走の中山記念は離れた4番手追走から差し切り。勝ち時計1分44秒9はレコードタイであり、時計面でも十分優秀だ。この2戦はともに着差こそ小さかったがきっちり差し切っており勝負根性もある。今回は8か月の休み明けで陣営のトーンも低いうえに、痛恨の8枠を引いたため4番手まで評価を下げたが、能力的にはGⅠでも通用する馬だ。

5番手にコントレイル。クラシック三冠という実績はずば抜けているが、前半で述べたように、春のクラシックで好走したディープ産駒が古馬になってイマイチな傾向はやはり無視できない。基本的には早熟の馬で4歳世代のレベルの低さも考えるとあまり買いたくないところ。印は回すが人気の割に信頼できないタイプだ。

買い目は◎グランアレグリアの単勝と馬連◎◯に厚く張りたい。あとはグランアレグリアから3連単1着固定で勝負したい。(文:川崎)

▽天皇賞(秋)予想印▽
◎グランアレグリア
◯エフフォーリア
▲ポタジェ
△ヒシイグアス
×コントレイル

ライタープロフィール
京都大学競馬研究会
今年で25周年を迎える、京都大学の競馬サークル。馬主や競馬評論家など多くの競馬関係者を輩出した実績を持つ。また書籍やGⅠ予想ブログ等も執筆。回収率100%超えを目指す本格派が揃う。



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