【天皇賞(秋)】最も速い馬が勝つ! 東大HCはグランアレグリア3階級制覇に期待

東大ホースメンクラブ

天皇賞(秋)インフォグラフィック,ⒸSPAIA

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歴史と伝統の盾を勝ち取るのは

今週日曜は東京芝2000mを舞台に、秋古馬三冠第1戦・GⅠ天皇賞(秋)が行われる。大阪杯3着からの臨戦、連敗で霞んだ三冠馬の威厳を取り戻すべくこの舞台を復帰戦に選んだコントレイル、1200m・1600mに続く「3階級GⅠ制覇」を目指す女王グランアレグリア、シンボリクリスエス以来となる3歳Vをかけて殴り込む皐月賞馬エフフォーリアなど精鋭16頭が府中に集結する。

歴史と伝統の盾を勝ち取るのは3強か、それとも伏兵勢か。過去のデータを紐解きながら馬券戦略を考えていく。


桜花賞馬は崩れない

後傾ラップの天皇賞(秋)条件別成績,ⒸSPAIA


<後傾ラップの天皇賞(秋)条件別成績>
マイル重賞勝ち馬【6-6-8-33】勝率11.3%/連対率22.6%/複勝率37.7%
桜花賞勝ち馬【2-3-1-0】勝率33.3%/連対率83.3%/複勝率100.0%
皐月賞勝ち馬【1-0-2-7】勝率10.0%/連対率10.0%/複勝率30.0%
6歳以上馬【1-0-1-66】勝率1.5%/連対率1.5%/複勝率2.9%
※東京競馬場改修後の2003年以降

今回のメンバーは近5走で逃げを打った馬が不在。さらに先行勢も手薄で、スローからの上がり勝負となる可能性が高い。そこで2003年以降の天皇賞(秋)で後傾ラップとなった12レースを分析し、条件別に成績を確認していく。

まず目につくのはマイル重賞勝ち馬の好成績。12レース全てで馬券に絡み、複勝率は4割近い。単勝回収率182%・複勝回収率146%も上々の数字だ。このうち牝馬に限ると【4-3-4-2】複勝率84.6%、さらに前走掲示板を確保した馬だと【4-2-3-0】と馬券圏外がない。ちなみに2400mの重賞勝ち馬は【8-3-2-34】複勝率27.7%、単勝回収率45%・複勝回収率50%なので、やはり全体としてはスピード質の馬を狙いたいところ。

その中で最も相性がいいのは桜花賞馬。スピード能力が問われる牝馬クラシック初戦を制した馬はこの条件で頼りになる。アーモンドアイ、ジェンティルドンナ、ダイワスカーレットなどがきっちり好走し、2004年・2005年、ともに13番人気の低評価を覆して馬券になったダンスインザムードが該当する。前述の複勝率100%データに加え、桜花賞でも47.7-45.0というラップ構成を押し切ったグランアレグリアに追い風が吹く。

対照的に複勝率3割にとどまるのが皐月賞勝ち馬。良馬場に限ると、好走例は引退レースで阪神Cをレコード勝ちしたイスラボニータの3着2回のみ。同じ2000m戦とはいえリンクは薄く、イスラボニータと2007年の勝ち馬メイショウサムソンが勝った皐月賞は後傾ラップだった。さらに前走で0.3秒以上の着差をつけられた馬は【0-0-0-4】である。

6歳以上の馬は10年以上馬券圏外が続いており、2度の馬券圏内はいずれもカンパニー。この馬は8歳になってキャリアの絶頂期を迎えた異例中の異例といえる存在だ。ユーキャンスマイルやペルシアンナイトなどのベテラン勢はかなり厳しい。


コントレイルの頭固定は危険

2003年以降天皇賞(秋)条件別成績,ⒸSPAIA


<天皇賞(秋)条件別成績(2)>
牝馬【5-4-5-13】勝率18.5%/連対率33.3%/複勝率51.9%
3歳馬【0-3-3-18】勝率0.0%/連対率12.5%/複勝率25.0%
前走0.6差負け以下【1-4-4-54】勝率1.6%/連対率7.9%/複勝率14.3%
※東京競馬場改修後の2003年以降

次に2003年以降の天皇賞(秋)全レースを別の観点から分析してみる。

近年の潮流よりもはるか前から牝馬が走っているレースで、複勝率5割超えは見事な成績。前走GⅠかつ2番人気以内だった馬は【3-2-2-1】で、唯一の着外も2011年ブエナビスタの4着。3強ではグランアレグリアが最も安定する。

3歳馬は東京開催に限ると1996年のバブルガムフェロー以来勝利がないものの、関東馬に限ると【0-3-1-9】と数値がアップ。3歳で挑戦した馬のうち、春のGⅠで2度以上連対していた馬は3頭いるが、ジェニュイン(2着)・ディープスカイ(3着)・イスラボニータ(3着)と全て馬券圏内だった。エフフォーリアには通用の素地があるだろう。

対照的に前走0.6差負け以下の大敗を喫した馬は(シンプルに実力で劣る馬を多数含むため)当然厳しく、田んぼのような馬場だった2017年を除くと【0-4-3-52】と勝利がない。好走した7頭を順に見ていくと、

(1)2019年ダノンプレミアム2着(朝日杯FS1着)
(2)2016年リアルスティール2着(ドバイターフ1着)
(3)2016年ステファノス3着(富士S1着)
(4)2014年ジェンティルドンナ2着(牝馬三冠)
(5)2005年ダンスインザムード3着(桜花賞1着)
(6)2004年ダンスインザムード2着(同上)
(7)2004年アドマイヤグルーヴ3着(エリザベス女王杯1着)

とほとんどが1800m以下を主戦場にしていた馬だった。最終的にGⅠ・7勝を積み上げる歴史的名馬のジェンティルドンナですらスピルバーグに負けた条件であり、コントレイルには絶対の信頼を置きづらい。期間を1986年以降に広げても、該当馬の勝利は1993年のヤマニンゼファー(安田記念連覇、スプリンターズS2着)を加えるのみだ。


名伯楽が巻き起こす最後の大歓声

◎グランアレグリア
前述した通り、良馬場の東京芝2000mは最も速い馬が勝つ舞台と決め打って同馬を本命に据える。同距離の大阪杯は道悪内回り。この馬にとっての好走条件の真逆であり、4着敗退は深刻に捉えなくても良いだろう。

アーモンドアイに2馬身半差をつけた昨年の安田記念、ヴィクトリアマイルでの圧勝、続けて使われたことで行きっぷりが悪く、直線で仕掛けを待つシーンがありながらタイム差なしの2着だった今年の安田記念など、東京はベスト。これまでも能力を発揮してきた適度な休み明けで、藤沢和雄調教師は東京の天皇賞(秋)×3番人気以内で【4-2-0-0】のパーフェクト連対。枠も真ん中で何の問題もない。数々の名馬を手がけてきた名伯楽の集大成が、府中に大歓声を巻き起こしてくれるはずだ。

◯エフフォーリア
イーブンペースの皐月賞を大楽勝し、2着につけた着差は0秒5。これ以上の着差はナリタブライアンとオルフェーヴルしか前例がない快挙だった。ダービーでは道中3番手から9番手までポジションを下げ、結果的に仕掛けが早い競馬ながら、得意の良馬場で脚をためるだけためたシャフリヤールとハナ差の2着。同舞台の百日草特別では不利を受けながらスロー瞬発力勝負を快勝した経験もある。ピクシーナイトやシュネルマイスターを輩出した強い3歳世代の筆頭格。3枠は長年勝利から見放されている枠ではあるが、ポテンシャルは十分。先輩2頭を従えて世代交代を高らかに告げるシーンがあっても驚かない。

▲コントレイル
大阪杯から7か月の休み明け。半年以上のレース間隔をとった馬は1986年以降、東京の天皇賞(秋)で【0-2-1-23】。過去にはナリタブライアンもトウカイテイオーも着外に沈んだ。今年の4歳牡馬は芝GⅠで【0-1-1-11】。これは皐月賞で同馬を追い詰めたサリオス、三冠阻止まであと一歩だったアリストテレスも含めた数字であり、世代レベルの低さは疑いようがない。58kg初経験となる栗東馬も1986年以降ではジャスタウェイの1勝のみ。牡馬三冠、アーモンドアイに迫ったジャパンCのレースぶりには敬意を表するが、不利なデータの積み重ねと上記2頭の魅力を考慮して3番手評価。

実績からもこの3頭の能力が抜けていると見るが、レース中の不利などで伏兵勢にチャンスが生まれれば、金鯱賞でデアリングタクトに迫ったポタジェ、毎日王冠を含め骨っぽいメンバーに善戦、横山典弘騎手が何かをやってくれそうなカイザーミノルの3着があると見た。

3強に続く人気が想定されるワールドプレミアとカレンブーケドールは消し。阪神芝3000m以上のレースで馬券圏内の経験がある馬は2003年以降【0-0-0-12】と全滅。期間をデータのある1986年まで遡っても好走したのはタマモクロス・マヤノトップガン・スペシャルウィーク・テイエムオペラオーの4頭、時代の頂点を極めた馬だけだ。日本で最もタフな舞台で通用するスタミナと東京芝2000mで通用するスピードを両立するのは簡単なことではない。

馬券は◎と◯を1・2着表裏に、印を打った3頭を3着に据えた3連単6点で勝負する。

▽天皇賞(秋)予想▽
◎グランアレグリア
〇エフフォーリア
▲コントレイル
△ポタジェ
×カイザーミノル

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。秋GⅠシーズンに合わせ、新入部員募集中。



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