【菊花賞】親子二代で菊花賞逃げ切り勝ち! レースラップに見える共通点とは

勝木淳

2021年菊花賞のレース結果,ⒸSPAIA

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23年前のセイウンスカイの菊花賞

13.3-11.5-11.7-11.7-11.4-12.1-13.1-13.5-12.7-12.9-12.3-11.9-11.6-11.5-12.0 (3.03.2)

これはタイトルホルダーで勝った横山武史騎手の父・典弘騎手が彼の生まれる数カ月前にセイウンスカイで逃げ切った菊花賞のレースラップである。1000mごとにラップをまとめると、59.6-1.04.3-59.3。こちらは京都の最初のアップダウンを使い、序盤はペースを引っ張り、馬とケンカしない程度にラップをジワリと落とし、1,2コーナーでもっとも遅いラップを刻み、残り1000mから急かさないように馬任せ、自然な形でスパートをかけ、押し切った。

この菊花賞から23年後、阪神で行われる菊花賞を典弘騎手のせがれ武史騎手が逃げ切った。逃げ切りはセイウンスカイ以来だというから、横山家を称えるしかない。

馬のリズムに合わせた好判断

タイトルホルダーは前走セントライト記念、その前の日本ダービーで、前半は少しためるという作戦を選択、やや消極的な競馬で戦前の評価を落とした。ここ2戦の内容から最後の一冠は思い直して積極策を。陣営の腹は決まっていた。

問題はワールドリバイバルだ。セントライト記念で先手を奪った馬が最内枠にいる。これを利用するのか。だが、武史騎手の選択は自力でラップを刻むことだった。他者には頼らないという潔さが美しい。

だが、ワールドリバイバルに絡まれたくない。だから、武史騎手はタイトルホルダーを出していった。日本ダービーのエフフォーリアがそこに重なる。激しく先手を主張、ワールドリバイバルを引かせることに成功した。絡まれれば行きたがるが、抜け出せば制御できる。タイトルホルダーの特徴を活かしたレース。発馬直後のこの攻防は大きなポイントだった。ワールドリバイバルが無理して突っかけていれば、レースはまったく違う結果になっただろう。序盤でマイペースを決めたそのラップは、

12.5-11.1-11.5-12.1-12.8-12.6-12.8-14.3-13.1-12.6-12.4-11.7-11.5-11.4-12.2 (3.04.6)

序盤1000m1.00.0である程度飛ばすことを意識させ、1周目正面直線でペースを落とし、レースの中間地点の1、2コーナーで14.3-13.1と極端にゆったり走らせ、息を十分入れさせた。そこから一転してじわじわとラップを上げる。後ろを引きつけながら、並ぼうとするとペースアップする。馬も仕掛けられて慌ててギアチェンジすることなく、自然な形で馬に変に後ろを意識させないように加速。タイトルホルダーは気楽にスパートできた。

最後は直線坂下11.4で決めた。後続は物理的に厳しかった。レース後、武史騎手は馬を称え、自身を謙遜していたようだが、そんな語り口もレース内容も父を意識せざるを得ない。お見事でした。

タイトルホルダーは、今年8月31日にこの世を去った父ドゥラメンテにクラシックタイトルを贈った。ただ勝っただけではなく、春二冠を制した父ドゥラメンテが出走できなかった菊花賞だったことも感慨深い。タイトルホルダーの2着はドゥラメンテが最後に負けたマリアライトの仔オーソクレース。競馬のサイクルは早い。2010年代後半の記憶と因縁が駆け巡る。

またタイトルホルダーの姉は小さな体で話題のメロディーレーン。父はオルフェーヴル、タイトルホルダーほど器用さはないが、菊花賞は牝馬ながら5着。メーヴェの血統はステイヤー資質がある。

雨中の激戦だった神戸新聞杯の疲労

2着オーソクレースは2歳までは世代の先頭集団にいながら、3歳春は全休。秋まで待つことになったが、やはり世代上位であることを改めて証明した。母マリアライトは宝塚記念や目黒記念など牡馬相手にタフな競馬で互角だった。最後に前にいたディヴァインラヴを捕らえたあたり、スタミナの一端は見せた。このあとダメージは心配だが、しっかり間隔を開けてくれば中距離重賞でもっと戦えるだろう。

3着ディヴァインラヴは大健闘。最後の直線ではただ1頭、タイトルホルダーを追いかけた。一旦は抜け出して2番手だったから価値はある。道中は先行馬群と後方馬群の切れ目に入り、牡馬相手のプレッシャーを回避した。福永祐一騎手、今回も納得の騎乗だった。

2番人気ステラヴェローチェは4着。春二冠3、3着、神戸新聞杯優勝の最上位馬ではあったが、流れが味方しなかった。いくらなんでも後方一気が通じるほど、相手は弱くない。ちょっと力を過信したというところか。阪神内回り3000m、一旦下げたくなる気持ちもわかる。今後はもう少し自力で動いて勝ちに行く競馬が必要だろう。

1番人気レッドジェネシスは13着。発汗が目立ち、状態がよくなかっただろうか。とはいえ、日本ダービーは13番人気11着の人気薄だった馬。菊花賞1番人気は手薄な組み合わせとはいえ、荷が重かった。デビュー前から気性の激しさを指摘されていた馬で、神戸新聞杯のダメージが内面に出てしまったようだ。

その神戸新聞杯組は04年以来、久しぶりに菊花賞で1頭も馬券に絡まなかった。ハーツクライが負け、デルタブルースが勝利して以来だから、もう遠い記憶である。ひとえに今年の神戸新聞杯はシャフリヤールがダメージを受け、目標をJCに変更したほどの雨中の激戦。そのダメージがステラヴェローチェやレッドジェネシスにはなかった、もしくは回復したと判断したのは安直だったと反省したい。


2021年菊花賞のレース結果,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 1995-1999 90年代後半戦』(星海社新書)。


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