【菊花賞】皐月賞馬・ダービー馬不在で混戦模様! 春の実績馬か夏の上り馬か、菊花賞の歴史を振り返る

緒方きしん

菊花賞過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA

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トライアル組VS上がり馬

2021年クラシックも、この週末に最終戦を迎える。無敗の桜花賞馬ソダシ・無敗の皐月賞馬エフフォーリアの登場にはじまり、様々な話題で盛り上がった今年の3歳クラシック戦線。最終戦もその勢いを受け継ぐ、楽しみなメンバーが集まった。

トライアル組からは、神戸新聞杯の勝ち馬ステラヴェローチェやセントライト記念の勝ち馬アサマノイタズラらが出走。また、菊花賞で注目を集める上がり馬としては連勝中のアリーヴォ、エアサージュ、ディヴァインラヴらが登場。皐月賞馬、ダービー馬は不在でも、見応えのあるメンバー構成と言える。牝馬三冠の最終戦・秋華賞では圧倒的人気を集めたソダシが敗戦を喫したが、牡馬三冠は波乱決着となるか。それとも順当決着となるか。

過去にはディープインパクトやオルフェーヴル、ナリタブライアンらが勝利し三冠の栄誉に輝いた一方で、メイショウサムソンやネオユニヴァース、古くはコダマといった実績馬が敗れた一戦。夏に実力を磨いた馬が、3000mという過酷な条件で実績馬に挑戦する。今回は、菊花賞の歴史を振り返る。

菊花賞過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA


1番人気は3勝も、波乱あり

1番人気はここ5年で3勝。人気に応えたのは、コントレイル、キセキ、サトノダイヤモンドの3頭。コントレイルは三冠馬へ向けた最終戦として、キセキは春クラシック未出走の上がり馬として、サトノダイヤモンドは皐月賞3着、ダービー2着の借りを返すべく──それぞれ異なる背景を持ちつつ1番人気で勝利している。

一方で、1番人気ヴェロックスが3着に敗れた2019年は3番人気ワールドプレミアが、1番人気ブラストワンピースが4着に敗れた2018年は7番人気フィエールマンが勝利をあげた。その2018年は、2着馬こそ2番人気のエタリオウだったが、3着に10番人気ユーキャンスマイルが食い込んだため、3連単は10万馬券となった。

また、キセキが制したどしゃ降りの2017年菊花賞では2着に10番人気クリンチャー、3着に13番人気ポポカテペトルと伏兵が食い込んだため、1番人気が勝利したにもかかわらず馬連は万馬券、3連単は5597倍という高配当が飛び出している。

超高配当の菊花賞と言えば、2002年。ビリーヴ(スプリンターズS)、ファインモーション(秋華賞)でGⅠを2連勝中だった武豊騎手が騎乗していた皐月賞馬ノーリーズンが、タニノギムレット・シンボリクリスエスらダービー1〜3着馬の不在などもあって1番人気に支持されたが、スタート直後で落馬する大波乱の展開に。

かわって勝利したのは、10番人気の上がり馬・ヒシミラクルだった。さらに2着には16番人気のファストタテヤマが入り、馬連はなんと960.7倍。記録的な大波乱が巻き起こった。ヒシミラクルはその後、7番人気で天皇賞・春を、6番人気で宝塚記念を制するなど、波乱の立役者としても愛された。

愛された名ステイヤー、デルタブルース

菊花賞と言えば、リアルシャダイやダンスインザダークといった長距離血統が目立った活躍をすることでも知られていた。リアルシャダイ産駒からはライスシャワーがこの舞台を制したほか、ダイワオーシュウ、イブキマイカグラ、ステージチャンプが2着に食い込んでいる。母父としても、フローテーションが15番人気を覆して2着に好走した。

ダンスインザダーク産駒も、ザッツザプレンティやデルタブルース、スリーロールスが勝利。ヒシミラクルとともに波乱を演出したファストタテヤマもダンスインザダーク産駒であり、良血馬フォゲッタブルも7番人気2着と好走している。先述した2018年の10番人気3着馬ユーキャンスマイルは、母父ダンスインザダークである。

2004年の菊花賞馬デルタブルースは、非常に優れたステイヤーとして活躍した。4月に未勝利脱出、青葉賞13着と春クラシックとは無縁だった馬ではあるが、当初から目標としてきた舞台に10月の条件戦勝利から直行。ハーツクライやスズカマンボ、コスモバルクらを相手に大金星を掴み取った。鞍上は当時まだ地方所属だった岩田康誠騎手、管理していたのは角居調教師で、両者にとって初めてのGⅠ制覇でもある。

デルタブルースは翌年にステイヤーズSを制し改めて長距離での強さを見せると、5歳シーズンには渡豪してメルボルンCを制した。この時、2着も角居厩舎に所属していたポップロックで、オーストラリア伝統の一戦で日本馬のワンツーが実現。デルタブルースは類稀なるスタミナを受け継ぐ存在として、種牡馬にしてほしかったという声は今でも聞こえるほどである。

キングヘイローは偉業を成し遂げるか

近年で菊花賞に強い種牡馬と言えば、他の条件でも強いディープインパクトだろう。昨年は1、3着が父ディープ、2着が母父ディープ。一昨年はディープ産駒のワンツー決着で、18年もディープ産駒が勝利している。さらに17年は母父ディープ、16年は父ディープが優勝し、ディープの血が流れない菊花賞馬は15年のキタサンブラックまで遡る。

そしてキタサンブラックの父ブラックタイドはご存知、ディープインパクトの全兄である。また、スペシャルウィークもこのレースで存在感のある種牡馬。2011年に母父スペシャルウィークのエピファネイアが勝利すると、翌年には父スペシャルウィークのトーホウジャッカルが勝利。スペシャルウィーク自身は現役時代、菊花賞はセイウンスカイの2着に敗れているが、種牡馬としてはリベンジを果たした形となる。

スペシャルウィークの同期としては、マル外のためクラシック未出走だったエルコンドルパサーがソングオブウインドの勝利で菊花賞馬の父となっている。今年は菊花賞5着のキングヘイローが、母父としてアサマノイタズラ、ヴァイスメテオールらを送り込む。

キングヘイローはスプリンターズSを制したピクシーナイトの母父でもあり、もしアサマノイタズラらがここを勝利するようであれば、スプリンターズS、菊花賞という全く異なる条件を制するという偉業を達成することになる。血統表を眺めつつ、今年の菊花賞を楽しみたい。

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