【京阪杯】先行優勢の展開、高い京都適性生かしたビッグシーザー ビッグアーサー産駒はレース3連覇

勝木淳

2024年京阪杯、レース結果,ⒸSPAIA

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京都芝1200mらしい先行優勢の展開

東京競馬場から西へ約470キロ。ジャパンCから約30分後に半分の距離で行われた京阪杯は本来、展開とはレースを決する要素になり得ると知らしめるような競馬だった。

舞台の京都芝1200mは3コーナーまでの距離が短く、淀の丘が目の前に広がる。前半600m区間は3、4コーナーの中間地点にあり、コーナーが占める部分が大きい。そのため、前半で速いタイムは計時されにくい。いわゆるペースが上がりにくい構造で、中山や小倉芝1200mと正反対といっていい。

京阪杯は2006年からスプリント戦になったが、京都開催での前半600m最速は2009年の33.1。これ以外、33.5を割ったことすらない。32秒台すら計時されるスプリント重賞では、京阪杯はペースが遅い部類のレースでもある。

今年、先手を主張したのはウインカーネリアン、テイエムスパーダの2頭。枠順とダッシュ力の鋭さでウインカーネリアンに軍配があがる。同馬は高松宮記念4着馬で。マイル中心に歩んできただけに、猛烈に飛ばすことはない。距離に自信もあり、行き脚さえつき、先手をとれれば、あとはキープするだけ。緩めればテイエムスパーダに再度絡まれるので、落としはしないが、前半600mは33.7。先行馬にとってリズムよく運べる適度な流れを演出した。

後半600m11.0-11.3-11.7と失速ラップにはなったが、決して脚が止まったわけではない。平坦の京都は上がりもそれなりにまとめやすい。前後半600mが33.7-34.0では好位より後ろから突っ込むには32秒台の末脚が要求される。それこそドウデュースレベルの末脚でないと逆転はできない。

通常、このラップバランスでは前が残る。実際、京阪杯も完全に前残り。4コーナーを二桁順位で通過してはどうにもならなかった。これが展開というものだ。


ビッグシーザーとビッグアーサー、そしてバンブー牧場

勝ったビッグシーザーは得意の京都で内枠と、これ以上ないシチュエーション。ゲートを五分に出さえすれば、好位キープは難しくない。好位から4コーナーで間合いを詰め、ウインカーネリアンを逃さない。

下りを利用して動けるのは京都適性の高さと、重賞経験から生まれる余裕だろう。ビッグアーサー産駒はJRA重賞6勝目。京阪杯は昨年、一昨年のトウシンマカオに続く3連勝。すべて1200mであげ、1600m重賞は【0-0-0-8】。サクラバクシンオーの後継らしい成績だ。

ビッグシーザーはビッグアーサーと同じバンブー牧場の出身。同牧場生産馬の重賞としては23年エルムSを制したセキフウ以来。バンブーの冠名で知られ、オールドファンはバンブーアトラス、バンブーメモリー、バンブービギンを思い出す。2003年バンブーユベントスが日経新春杯を勝ってからは、重賞を勝てない期間が続いたが、ビッグアーサーを機に復調しつつある。浦河で60年代から続く老舗の復活は馬産地にとって明るい話題でもある。

2着には逃げたウインカーネリアン。こちらも1枠1番を引き、腹をくくって先手を主張した戦略が展開を呼び込んだ。高松宮記念、スワンSと善戦し、距離適性が短くなりつつある。7歳にしてこのスピードは頭が下がるばかり。非常に真面目な性格のようで、見習いたい。

後方待機組は3着争いが精一杯。とはいえ、3着ヴェントヴォーチェは枠なりに中団インで脚を溜め、直線は外へ持ち出し、差してきた。元値は重賞2勝の実績があり、長期休養明け2戦目で実戦勘を取り戻しつつある。1年半の休養は裏を返せば、消耗も少ない。キャリアはまだ17戦。脚元に問題さえなければ、まだまだやれる。

4着プルパレイはヴェントヴォーチェの前で流れに乗り、そのままラチ沿いからインを攻めていった。いくらか馬場が悪い内側を通ったことも影響したが、人気薄で一発を狙うなら、リスクをとってでも攻めるのが上策。まさにそんな競馬だった。

京都は春の鞍馬Sで2着。1:07.0で走破していた。11番人気は穴党にとって絶好の狙いどきだった。“それ4”で日曜日が終わってしまった方は多かっただろう。札幌での好走など、現状は前半が速くなりにくいスプリント戦でしつこく狙っていきたい。あきらめると穴をとり逃しそうな予感がある。

2番人気エイシンスポッターは14着。京都は得意だが、追い込みが効く馬場でないと厳しい。典型的な展開に泣いたクチだ。追い込み一手で不発はつきもの。こちらも大敗で人気がガタ落ちなら、狙いも立つ。買いどきを逃したくない。

2024年京阪杯、レース回顧,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。

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