【JBC回顧】ウィルソンテソーロがJBCクラシックを制す 佐賀県出身の川田将雅騎手が地元の大声援に応える

三木俊幸

2024年JBCクラシック勝ち馬ウィルソンテソーロ,ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

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待望のビッグタイトル獲得

2024年のJBCは2歳戦が行われた門別競馬場のほか、24回目にして初めて佐賀競馬場が舞台となった。最寄りの新鳥栖駅からはバスによるピストン輸送が、そして2,500台収容可能な駐車場は昼過ぎには満車になるなど、1万2千人以上の人が来場。さらに内馬場も開放され、多くのキッチンカーやレースに関するイベントも行われて賑わっていた。

メインレースとなったダート2000mのJBCクラシックは、川田将雅騎手騎乗で1番人気のウィルソンテソーロが勝利。好スタートからウィリアムバローズが逃げる展開で、道中は好位集団のインを追走していたが、2周目向正面で進出を開始。3角で先頭に立つと最後の直線は後続を全く寄せ付けない走りで2着メイショウハリオに4馬身差をつけた。

昨年のチャンピオンズC、東京大賞典、今年の帝王賞とGⅠ級競走で2着が3回と悔しい思いをしてきたが、待望のビッグタイトル獲得となった。

川田騎手にとっても、生まれ育った地元佐賀でのJBC競走勝利であり、ゴール板を駆け抜けると普段のクールなイメージからは想像もできないほどの大きなガッツポーズ。そのまま馬場を一周してのウイニングランでは川田コールが湧き上がり、馬上からファンに向けて一礼と喜びを爆発させた。

声援に応える川田将雅騎手,ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

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「なによりも具合がとても良かったですし、必ず勝つ競馬をしようとウィルソンとともにこのレースに挑みましたし、個人的なことですけど、ここで生まれ育ちましたのでゲート裏を回っている時にあそこで僕はちびっこ相撲の練習とかしていましたから、そんなところでJBCを開催してくれることになり、これだけ素晴らしい馬と巡り会えて佐賀に来ることができてレディスクラシックで勝ち切ることはできなかったですけど、皆さんからの声援の温かさというのも非常に感じましたし、このクラシックでウィルソンとともに勝ち切るということで本当に皆さんからこれだけ温かい声援をいただけるのが騎手冥利に尽きるなと。この小さい佐賀競馬場で生まれ育ちましたけど、いろんなところを旅させていただいていますけど、地元でGⅠを勝つというのはこんなに感極まるんだなと、本当に嬉しく思っています」

そう語り何度も頭を下げた川田騎手にファンは温かい拍手で応えた。

横山武史騎手「今回は逃げることしか考えていませんでした」

ダート1860mで行われたJBCレディスクラシックは、4番人気の3歳牝馬アンモシエラが制した。スタートしてからすぐにハナを奪うとマイペースに持ち込み、2番手にアイコンテーラーという展開。残り1000mを切ったところで徐々にペースアップして後続との差を広げにかかった。

佐賀競馬場は最内の砂が深く数頭分あけて走るが、2周目4角から直線に向くところで鞍上の横山武史騎手は、最内を選択してロスなく立ち回った。これは作戦通りだったという。

「1周目では軽い外目を通して、2周目はギャンブルですけど3〜4角で内外の差を使って後続を離せればと思っていたので、理想的な競馬ができました」と振り返った。

今年1月のブルーバードCで接戦を制して重賞勝ちはあったが、春は羽田盃2着、東京ダービー3着と牡馬相手に3歳ダートクラシックで堅実な成績を残すも、勝ちきれないレースが続いた。横山武騎手は羽田盃以来の騎乗となったが「今回は逃げることしか考えていませんでした」とのこと。

4馬身差で2着に負かしたグランブリッジは安定した実績を誇る馬なだけに、腹を括った好騎乗がGⅠ級競走制覇に導いたと言えるだろう。

JBCレディスクラシックを勝利したアンモシエラ,ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

7歳でついに掴んだ悲願の重賞タイトル

ダート1400mで行われたJBCスプリントは、ゴール前大接戦となったが、石橋脩騎手騎乗の4番人気タガノビューティーが1番人気のチカッパをハナ差でねじ伏せた。

レースはシャマルが逃げ、ピッタリと2番手からヘリオスがマークする展開。7番手あたりから運んだタガノビューティーは残り600mのところから進出を開始して4角は大外を回す形。同じく中団から立ち回ったチカッパはインを突いてロスなく立ち回る競馬で対照的な進路取りとなったが「とにかく勝ちたかったです」という石橋騎手、そして陣営、応援する人たちの執念が最後の差に繋がったはずだ。

これまでダート重賞はかしわ記念の2年連続2着を含め、重賞であと一歩のところまで差を詰めるも、何度も重賞の壁に跳ね返されてきた。そして7歳秋にしてようやく、悲願の重賞タイトルを掴んだ。

管理する西園正都調教師も「ゴール板を過ぎたら涙が出てきました。7歳馬の頑張りに頭が下がる思いです」と嬉しさを口にした。

JBCスプリントを勝利したタガノビューティー,ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

地元のソルジャーフィルドが差し切る

北海道の門別競馬場ではJBC2歳優駿が行われた。昨年はフォーエバーヤングが制した注目の一戦。今年は地元ホッカイドウ競馬所属のルヴァンスレーヴ産駒ソルジャーフィルドが勝利した。

道中は後方3番手を追走。勝負所で前が一団となるところで集団に追い付き、外から進出すると直線は豪快に差し切りJRA勢を完封。2着グランジョルノに3馬身をつけた。

このレースを迎えるまでに6戦3勝、2着3回と安定した成績を残していた。今回地元勢の中で人気を集めていたリコースパローにはブリーダーズゴールドジュニアC、サンライズCでともに0.3秒差をつけられ2着だったが、大舞台で逆転を果たした。

今年のJBC4レースを振り返ると、惜敗続きでこれまで悔しい思いをしてきた馬が全て勝利するという印象的な一日だった。

ライタープロフィール
三木俊幸
編集者として競馬に携わった後、フリーランスとなる。現在はカメラマンとしてJRAや地方競馬など国内外の競馬場を飛び回りつつ、ライターとしても執筆している。

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