【ファンタジーS回顧】道悪と騎手心理が呼んだ波乱 ダンツエランは短距離戦線で楽しみ
SPAIA編集部
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不良馬場で3連単は62万馬券の大波乱
2024年11月2日に京都競馬場でファンタジーステークス(GⅢ・芝1400m)が行われ、団野大成騎手騎乗、4番人気のダンツエランが勝利した。
この日の京都は荒天に見舞われた。金曜にも24.0ミリの雨量を観測したが、競馬開催中も雨はしたたかに降り続け、途中で「天候調査」が実施された。その結果、ダート1400mの第8レースは安全が確保できないとして中止。なんでも芝発走からダートに合流する地点に水たまりができてしまった、ということだそうだ。
第9レース以降は通常通り再開されたものの、ファンタジーSの時点で芝ダートともに不良馬場。水はけのよさに定評のある京都芝が不良になるのは本年1月21日以来、改修後では3回目のこと。今年は工事中の阪神に替わって開催を受け持ち、年末まで3ヶ月のロングラン開催が続く。果たして最後までもつのだろうか。
レースの話に戻る。この馬場は騎手心理にも影響を及ぼしたようで、戦前から待機策を示唆していたダンツエランが控えると、スタートから促したのはモズナナスターくらい。脚を使ってまでイン前のポジションを狙う騎手がほぼおらず、序盤の争いはなし。馬なりですんなり隊列が固まった。
レースラップは前後半3F36.0-34.7のスローペース。直線に向いても逃げたモズナナスター、2番手にいたベルビースタローンの追い比べが続き、伸びてくるのは3番手集団の外目にいたダンツエランくらいだった。
結局この3頭が接戦で入線し、首の上げ下げでダンツエランに軍配が上がった。2着が逃げた10番人気モズナナスター、3着はシンガリ15番人気のベルビースタローン。3連単は62万8,580円の大波乱となった。
阪神JFよりフィリーズレビューや葵Sで楽しみ
勝ったダンツエランはマイル戦でデビュー勝ち、前走のりんどう賞を逃げて3着だった。当時の勝ち馬と再戦になったが、展開と不良馬場への適性を味方にリベンジを果たした。
「前哨戦」のファンタジーSを勝った以上、まずは阪神JFが視野に入ることになるだろう。しかし過去10年でファンタジーS組の阪神JF成績は【2-0-2-34】と、近年は本番に直結していない。
また、ダンツエラン自身は父がロードカナロア。勝利騎手インタビューで団野騎手が「気が良すぎる分、今日も最初の2Fくらいは若干折り合いに苦労するところはあったので、次に向けてそこは課題になる」と話したように、マイルへの再延長が大歓迎というタイプではない。
メンバーレベルの部分も含め、暮れのGⅠに大きく展望が開けたかというと疑問が残る。どちらかといえば来年のフィリーズレビュー~葵S戦線の方が楽しみはある。
展開向かなかったカワキタマナレア
2着モズナナスター、3着ベルビースタローンは勝ち馬以上に展開と馬場の恩恵をフルに受けた。先行力と道悪の巧さは今後も武器になるが、レース単体の内容としてはそこまで強調点がない。
4着ヴーレヴーは勝ち馬の背後を追うように伸びて上がり2位の34.2秒で0.1秒差まで詰めてきた。父サトノクラウンの血統もあって道悪自体はこなしたが、今回はスローペースが痛かった。差す形が板についてきたので、相手関係はともかく距離自体はマイルにも対応しそうだ。
1番人気5着カワキタマナレアはさらに後ろから。大外から上がり最速34.0秒の脚を使って、これも勝ち馬から0.1秒差。これも展開に泣いた。もっと前が流れて差しが届く競馬になればすぐにでも反撃が期待できるだろう。次走は馬券的な意味で注目したい。
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