【みやこS】強豪2頭の間を割ったローマンレジェンド GⅠ級の活躍馬を多数輩出したダート重賞を「記録」で振り返る

緒方きしん

みやこステークスに関する「記録」,ⒸSPAIA

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スペシャルウィーク産駒の牡馬稼ぎ頭、ローマンレジェンド

今週はみやこSが開催される。 2010年に創設された重賞で、トランセンドやエスポワールシチー、メイショウハリオなどGⅠ級レースを複数勝するダート馬を多く輩出してきた一戦である。2、3着馬にもニホンピロアワーズやオメガパフューム、ホッコータルマエなどがいるように、例年メンバーの層は厚い。今回はそんなみやこSの記録を振り返る。

昨年はセラフィックコールが1番人気で勝利を収めた。単勝オッズは2.6倍で、これは当レースで歴代3番目に低い単勝オッズでの勝利である。

2位は2011年勝ち馬エスポワールシチーで1.6倍、1位は12年勝ち馬ローマンレジェンドで1.4倍。一方、単勝の高配当ランキングでは、3位が19年勝ち馬ヴェンジェンスの18.7倍、2位が15年勝ち馬ロワジャルダンの23.4倍、1位が22年勝ち馬サンライズホープの90.7倍となっている。

ローマンレジェンドは、母が北米の芝ダート両方の重賞で活躍したパーソナルレジェンド。半姉のミラクルレジェンドはダート牝馬戦線をけん引した名馬であり、その子には18年JDDで3着のグレートタイムなどがいる。

ローマンレジェンドはデビューから2戦連続で芝レースを走ったが、3戦目でダート路線に転向。そこから8戦7勝で重賞エルムSを制し、みやこSに乗り込んだ。相手にはホッコータルマエやグレープブランデー、ニホンピロアワーズら素質馬、実力馬がいるなか、連勝中だったローマンレジェンドは単勝1倍台の支持を受けた。ちなみに2番人気はハタノヴァンクールで5.6倍。3番人気のニホンピロアワーズ以下は10倍以上の単勝オッズがついていた。

レースではサンライズモールが逃げて、ニホンピロアワーズ、ホッコータルマエらが先団を形成する形に。本馬はその後ろにつけ、道中5、6番手のインを進んだ。4角で外からグレープブランデーが上がってくるのと同時にレースが動き、直線ではニホンピロアワーズ、ホッコータルマエが先頭を奪い合う。ローマンレジェンドは前が壁になって進路を確保できず、先行集団の後ろで脚をためていたが、鞍上の岩田康誠騎手が鞭を振るい先頭2頭の間を割ると、トップでゴールを駆け抜けた。

続くジャパンCダート(現チャンピオンズC)でも1番人気に支持されるも、ニホンピロアワーズから1秒離されて4着。しかし、暮れの東京大賞典では勝利をあげ、JpnⅠ勝ち馬の仲間入りを果たした。その後も息の長い活躍を見せたローマンレジェンドは、みやこSにおいても13、15年に3着に食い込んでいる。

また、ローマンレジェンドは名馬・スペシャルウィーク産駒の獲得賞金ランキング2位でもある。1位は牝馬のブエナビスタなので、牡馬ではトップとなるが、引退後は種牡馬とはならずに誘導馬となった。

スペシャルウィークはブエナビスタ、シーザリオとレジェンド級を複数輩出しながらも、牡馬のGⅠ勝ちは菊花賞馬トーホウジャッカルのみ。JpnⅠ勝ち馬としては帝王賞勝ち馬のゴルトブリッツも出したが、こちらは腸捻転により現役中にこの世を去ってしまった。同ランキングで3位のインティライミ、4位のナリタクリスタルも種牡馬とはならず、父系としては断絶かと思われた。

しかし5位のリーチザクラウンが種牡馬となり、初年度産駒からシンザン記念勝ち馬キョウヘイを輩出。そして19年うまれのクラウンプライドが現在ダート路線で活躍。ローマンレジェンドやゴルトブリッツと重ねたファンもいるのではないだろうか。ここから血を残すような活躍に期待したい。

見る者を魅了した衝撃の末脚の持ち主、カゼノコ

先日の天皇賞(秋)ではドウデュースが上がり3Fを32.5で駆け抜けた。これは歴代GⅠにおける、勝ち馬で最速の大記録である。

みやこSで馬券圏内に食い込んだ馬たちのなかで歴代最速3Fのランキングでは、3位が2021年2着馬ロードブレスの35.8(阪神開催)、2位が15年勝ち馬ロワジャルダンの35.7、そして1位が同年2着馬カゼノコの35.5となっている。上がり3Fはレースの展開や馬場状態によるところも大きいが、それでも鋭い末脚は印象に残る。

カゼノコもローマンレジェンドと同様にデビュー当初は芝レースに出走。アグネスデジタル産駒らしく、芝レースでも上がり最速を記録している。ダート転向後は2戦連続で上がり最速を出すなど、その末脚を遺憾なく発揮。JDDでは圧倒的な人気を集めたハッピースプリントらを上がり最速の末脚で差し切って栄冠を手にした。

その後は、15年みやこS2着だけでなく同年の川崎記念2着や同年の名古屋グランプリ3着など好走はあるものの勝利を挙げられないまま引退となった。しかし引退間際のラスト5戦のうち4回で上がり最速を記録しており、最後まで持ち味の末脚は健在だった。

現役時代に走った40戦のうち実に半数の20戦で上がり最速をマークするなど、記憶に残る馬だった。

また、カゼノコはみやこSの2着時に462kgと、馬券圏内に食い込んだ馬のなかで歴代最軽量タイの馬体重(同体重は22年3着オメガパフューム)である。一方、最重量ランキングでは、3位が12年2着ニホンピロアワーズ、昨年の勝ち馬セラフィックコールの536kg、2位が22年勝ち馬サンライズホープの538kg、1位が16年勝ち馬アポロケンタッキーの562kgとなっている。カゼノコはアポロケンタッキーと比べて100kgも軽かった。

今年はどのような血統や武器、馬体を持つ馬が勝利するのだろうか。これからのダート路線を占う意味でも注目したい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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