【高松宮記念】能力値1位のルガルが新スプリント王候補 穴は全ての条件が好転するマッドクール

山崎エリカ

2024年高松宮記念のPP指数,ⒸSPAIA

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雨の影響を受けやすいGⅠ

高松宮記念は過去10年で不良2回、重3回、稍重2回と雨の影響を受けることが多い。不良まで悪化すると外が伸びるが、重くらいなら内からでも結果が出ており、重馬場で行われた一昨年の高松宮記念は2番枠から終始最内を通ったナランフレグが優勝した。土曜日の中京は中目が伸びていたが、馬場が回復すればまた内が伸びるだろう。逆に悪化した場合には外が伸びるので、それも踏まえて最終結論を下したい。


能力値1~5位の紹介

2024年高松宮記念のPP指数一覧,ⒸSPAIA


【能力値1位 ルガル】
デビュー当初はダートを使われていたが、芝路線に転向して本格化。芝2戦目、不良馬場で行われた昨年の橘Sを5馬身差で圧勝し、3歳春の時点で古馬OPでも十分に通用する指数を記録した。その後は出遅れやレース中の不利が続いて善戦止まりだったが、前走のシルクロードSで重賞を初制覇した。

前走は4番枠から好スタートを決めると前に行き、最終的には2番手。3~4角では持ったまま逃げるテイエムスパーダに並びかけ、直線序盤では馬場状態の良い中目から同馬をかわして先頭に立った。ラスト1F地点で2馬身差だったリードを3馬身差まで広げてゴールした。

ルガルがシルクロードSで記録した指数は今回の出走馬の近2走のなかではNo.1。例年のスプリントGⅠ通用レベルの指数だった。前走の疲れという不安はあるが、馬場不問タイプで自在性もある。ここは新王者誕生に期待し、本命候補としたい。

【能力値2位 トウシンマカオ】
休養を挟んで目下2連勝中。前々走の京阪杯は17番枠からまずまずのスタートを切って、じわっと好位馬群の直後まで上がった。4角で馬場状態の良い外に出して追い出されると、直線序盤で3列目まで上がり、ラスト1Fで突き抜けて2着ルガルに2馬身差をつけて完勝した。本馬はエンジンが掛かってから堅実に伸びてくるタイプ。前走のオーシャンSでも15番枠から好スタートを決めてじわっと先行し、好位の外からしぶとく粘って完勝している。

ひと叩きされての良化があればチャンス大だが、今週の追い切りで一瞬ソラを使っており、疲れが残っている印象がある。またトウシンマカオは一昨年の京阪杯を走破タイム1分7秒2で優勝した一方、昨年の高松宮記念は不良馬場で大敗と高速決着が得意なタイプ。馬場が悪化すると良くないが、堅実な末脚は侮れない。

【能力値3位 ビッグシーザー】
中京芝1200mの2歳未勝利戦を1分7秒9の2歳レコードタイムで逃げ切り、そこから4連勝でマーガレットSを完勝。重賞の葵Sでも3着に善戦した。昨秋のセントウルS、オパールSで2桁着順に敗退した。その次走の京阪杯では外のヴァトレニに絡まれながら、馬場が悪化した最内を逃げて5着と健闘、前々走の淀短距離Sで久々に勝利し、完全復活を果たした。

前々走は7番枠から五分のスタート。二の脚で楽に2番手まで挽回して追走した。道中で逃げるカルネアサーダとの差を徐々に詰めて3角では同馬と2馬身差。3~4角で前のスペースを維持して最短距離を通り、4角でじわっと差を詰めて4角出口で外に出された。直線序盤で1馬身あったカルネアサーダとの差をすっと詰めて並びかけ、ラスト1Fで抜け出した。外からメイショウソラフネが迫ってきたが、寄せつけず1馬身半差で完勝した。

前走のオーシャンSはやや出遅れ、押して挽回を試みたが好位までは上がれず、中団中目を追走した。3~4角でトウシンマカオの後ろを狙って4角出口で外に出されると、直線序盤で3列目からじわじわ伸びて2列目まで上がり、ラスト1Fでも伸び続けて大接戦の2着争いをハナ差で制した。

ビッグシーザーは初勝利が好タイムでの逃げ切りだったせいか、トップクラスが相手となるとスタートも二の脚もそこまで速くはないのに、無理目に前の位置を取って終いが甘くなるレースが続いていた。しかし、前走は差す競馬で善戦。また昨春のセントウルSやオパールSでは揉まれ弱さを見せて大敗したが、前走で揉まれる競馬にも対応できた。これにより、鞍上の意識は「前に行かなくても大丈夫」となるはず。無理に前の位置を取っていく競馬では危ういが、内々で脚をタメる競馬なら一発ありそう。

【能力値4位 ママコチャ】
4走前のリステッドの安土城SでスプリントGⅠ通用レベルの指数で勝利した馬。同レースでは12番枠からまずまずのスタートだったが、二の脚が速く楽に先行。内のプルパレイを行かせると、さらに内からコムストックロード、グルーヴィットが前を主張してきたので、控えて2列目の外を追走した。3~4角でもペースが上がらず、ブレーキ気味に外々を回り、4角でさらに外。直線序盤で先頭との差は1馬身あったが、グンと伸びて一気に先頭に立った。ラスト1Fでは楽々と後続を突き放して3馬身差で完勝した。

ママコチャは前で立ち回れて、直線でもうひと脚使えるのが魅力。昨秋のスプリンターズSでも6番枠からまずまずのスタートだったが、そこから押して好位の中目を追走した。3角手前で外に誘導し、4角で2頭分外から2番手のテイエムスパーダをかわして、先頭のジャスパークローネに半馬身差の2番手で直線へ。直線序盤でじわじわ伸びてラスト1Fでジャスパークローネを捉え、内から捌いて上がったマッドクールとの叩き合いをハナ差で制した。

スプリンターズSは内と前が有利な展開。これを3角手前で思い切って外に誘導し、ロスがありながら勝利した内容は良い。このスプリンターズSではママコチャを本命候補としたが、その理由は安土城SでGⅠ級の走りを見せたことと、休養明けの北九州記念を叩いてスプリンターズSを大目標にしていたことが理由。しかし、今回は体調を崩したようで前哨戦を使えなかったことが誤算。上位の能力があるのは確かだが、ぶっつけ本番となるぶん、割引だ。

【能力値5位 ウインマーベル】
昨年暮れの阪神C、今年2月の阪急杯と連勝した馬。前走は1番枠からまずまずのスタートだったが、そこから押して最内の好位まで挽回して我慢。道中は最内からじわっと上がって、3角では2列目の最内。3~4角で先頭のアサカラキングの後ろまで進出して、同馬から1馬身後ろの位置で直線へ。ラスト1Fでしぶとく伸びてアサカラキングを競り落とし、ハナ差で勝利した。

前走は緩みない流れ。それを前半で無理に位置を取りに行かず、最短距離からじわっと上がっていく、完璧な騎乗での勝利だった。本馬は前半が速かった前々走の阪神Cでも先行争いに絡んで行こうとしていたが、置かれて控える形になったように、芝1200mや1400mの前半が速い流れでは追走に苦労している。

芝1200mだと一昨年のスプリンターズS2着時のように、前崩れの展開にならないと厳しい。また今回は当時のスプリンターズSと比べると相手が手強い。ウインマーベルは一昨年のスプリンターズSで自己最高指数を記録した後のシルクロードSで7着に敗れたが、今回も当時と同じ自己最高指数を記録した後の一戦。当時よりも体がボリュームアップし、成長した形跡はあるが、良くない条件が重なったここは軽視したい。


穴はマッドクールとメイケイエール

【マッドクール】
芝のスプリント路線で軌道に乗り、4連勝でOP入りを決めた馬。重賞初挑戦となった昨年の中京開催のシルクロードSはアタマ+クビ差の3着に敗れたが、積極的にハナを主張して緩みないペースで逃げたものであり好内容だった。またこのレースで先着を許したナムラクレアとファストフォースの2頭が次走の高松宮記念で連対したように指数も高かった。

しかし、昨夏のCBC賞では1番人気を裏切り9着敗退。このレースではデビューから初めて馬券圏外に敗れる結果となったが、熱中症に近い症状で体を絞り切れなかったのが敗因と考えられる。そのうえトップハンデ58.5kgを背負っていたためダッシュが付かずに前の位置が取れなかった。3、4番手争いの外を追走し、3~4角で2頭分外を回って4角で置かれるロス。直線序盤で一気に仕掛け、内のスマートクラージュとの接触もあって失速した。この一戦は敗戦もやむなしの競馬だったので度外視できる。

そして前々走のスプリンターズSでは2着。このレースは内、前有利の展開だった。マッドクールは10番枠から五分のスタート。押して二の脚で挽回し、好位の内目に入れて2列目付近を追走した。3~4角の最内を通って先頭のジャスパークローネとの差を詰め、1馬身半差で直線へ。直線では内からしぶとく伸びて抜け出したママコチャに迫ったが、ハナ差の惜敗だった。

前走の香港スプリントは出遅れて後方から挽回して好位の外を追走したが、3~4角で置かれて直線でも伸びずに8着に敗退した。これは休養明けのスプリンターズSで目いっぱい走った反動だろう。今回はそこから立て直されての一戦。マッドクールは中京芝で3勝を挙げ、中京開催のシルクロードSでも3着の実績がある中京巧者。4走前の重馬場の春雷Sを勝利しているように、道悪でも対応できる。また馬場が悪化しても先週同様内有利が予想される中、2番枠もいい。今年の高松宮記念は昨年よりも層が厚いが、全ての条件が好転する今回は高評価したい。

【メイケイエール】
中京芝で行われた2022年秋のセントウルSで1分6秒2のレコードタイムで優勝した馬。同レースでは5番枠からやや出遅れたが、二の脚が速くすっと好位の中目まで挽回した。この日の中京は開幕週で超高速馬場。ペースも速く、速度が出ていたので折り合いに苦労しなかった。3~4角でもスムーズに好位の中目を追走し、4角出口で外に誘導。直線序盤で一気に先頭列に並びかけ、ラスト1Fでは抜け出して先頭に立った。そこからは後続を寄せ付けず、2馬身半差で完勝した。

メイケイエールはこの時のセントウルSでGⅠ通用レベルの指数を記録。折り合いさえつけばGⅠを勝つ能力を秘めている。ぶっつけ本番で挑んだ昨年の高松宮記念は不良馬場で行われた影響もあって12着大敗。そこからスランプだったが、昨秋のスプリンターズSでは出遅れや4角で大外を回るロスを作りながらも5着と善戦し、復活の気配を見せている。

近2走は、ダートを使ったり、大きく出遅れて折り合いを欠く競馬で崩れたりで、2戦とも度外視できる。昨年の高松宮記念はペースが上がらず好位馬群の中目でコントロールに苦労し、4角で進路を作れなかったのも敗因のひとつであるが、進路を作ってからも伸びあぐねたのは不良馬場の影響だろう。馬場悪化は好ましい条件ではないが、昨年よりも逃げ、先行馬多数でペースが上がりそうなだけに、折り合いがついての一発が見込める。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ルガルの前走の指数「-25」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.5秒速い
●指数欄の茶色線はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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