【函館2歳S】Cアナライズからは条件付きで3頭を推奨 穴で楽しみなのはルージュレベッカ

貴シンジ

2023年函館2歳ステークス、レース結果,ⒸSPAIA

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3つのファクターから推奨馬を見つけ出す

先週の七夕賞ではサンレイポケットを推奨し11番人気15着。2000m、コーナー4つという条件は合っていたが、コーナーで加速していくのが難しかったか。直線の長い東京や阪神の中距離での巻き返しに期待したい。さて、今回は7月15日(土)に函館競馬場で行われる函館2歳Sについて、下記3つのファクターを組み合わせる、コンプレックスアナライズで分析を行っていく。

・レースの好走馬及び凡走馬の共通項を探る「重要データ」
・目には見えない上積みを探る「前走不利データ」
・適性と素質を知るための「血統評価」

特別登録のあった16頭を検討対象とし、過去10年のデータを使用する。


重要データ:前走の人気は当日の人気より重要!?

函館2歳S、前走着順別成績(過去10年),ⒸSPAIA


函館2歳Sでは前走1番人気というデータが非常に有力だ。そもそも函館2歳Sは荒れにくいレースで、過去10年で全体の単勝回収率は65%。一方、前走1番人気の馬の成績は【5-5-4-36】で単勝回収率143%、複勝回収率105%と妙味がある。

前走が人気なら今回も人気になる可能性が高く、回収率も低くなりそうなものだが、前走の勝ち方が思っていたほどではなかった場合に、妙味のあるオッズになっているようだ。加えて、1走ないし2走しか走ったことがないメンバーがほとんどで、その数少ないレースの内容に人気が左右されやすい。デビュー以前の評価が無視されがちなのも、妙味が生まれる要因の一つだろう。

今回上位人気に推されそうなロータスワンドはこの好走データに該当しない。

【前走1番人気の出走予定馬】
・カレンナオトメ
・スカイキャンバス
・ゼルトザーム
・タヤスロンドン
・ナナオ
・バスターコール
・ベルパッション
・ルージュレベッカ


前走不利データ:新馬戦のバスターコール

バスターコールの前走は新馬戦1着。ルーラーシップ産駒の全期間におけるデビュー戦の成績は【52-63-79-680】で単勝回収率は58%しかない。「デビュー戦には向かない種牡馬」に分類できるだろう。加えて、デビュー戦を1番人気で勝利した馬の2走目の成績は【3-1-2-3】で単勝回収率は197%と高い。

そもそもルーラーシップ産駒自体、遅咲きの傾向がある種牡馬だ。それでもデビュー戦から1番人気に支持され、勝ち切ることのできる馬は能力が高いと言っても過言ではない。昨年の朝日杯FSを勝利したドルチェモアなどがこの例にあたる。


血統解説:スカイキャンバス、バスターコール、ルージュレベッカ

・スカイキャンバス
日本での牝祖は12代母フロリースカツプ。小岩井牧場の基礎輸入繁殖の一頭で、スペシャルウィークを筆頭に数多くの名馬たちを送り出してきたファミリーだ。母アポロフィオリーナこそJRA芝スプリントで3勝を挙げたが、本馬の近親と呼べる部分で重賞級の活躍馬は出ておらず、4代母のアサクサスケールがクイーンS勝ちとエリザベス女王杯2着の実績がある程度。母から勢いが出るかとも思われたが、兄弟の成績も半姉アポロヴィクトリアがJRAで1勝挙げたにとどまる。牝系の活力では他のメンバーに見劣ってしまうのは事実だろう。

父ファインニードルからスピードを継承し、母父スニッツェルと母母父ウォーニングはパワーが勝ったタイプ。繋ぎも立ち気味で、稍重馬場が味方した感もある前走の鮮やかな逃げ切りで人気するようならば、あえて嫌ってみてもいいかもしれない。今回も雨が降るようであれば期待、そんな一頭だ。

スカイキャンバスの血統表,ⒸSPAIA


・バスターコール
日本での牝祖は祖母デフィニット。祖母はJRAで1勝を挙げただけだが、繁殖としては非常に優秀で、本馬の母デグラーティアは小倉2歳S勝ち、叔父ボールライトニングは京王杯2歳S勝ち。総じて仕上がりが早く、1つ上の半兄シャンディエンも勝ち上がりこそできていない現状だが、新馬戦開幕週に登場するほど仕上がりは早かった。また、全兄にはJRAで4勝しOPクラスだったドミナートゥスがいて、父との相性も既に証明済み。ドミナートゥスはルーラーシップの影響が強く芝中距離を主戦場としたが、本馬はスピードのある母の影響が強いのか1400mの新馬戦を快勝した。

母父フジキセキ×母父父Deputy Ministerというダートの黄金配合を持っているので、パワーがあって洋芝向き。とはいえ完全なスプリンター体型ではないので、距離短縮に不安が残る。雨が降っても降らなくても堅実に走ってきそうだ。

バスターコールの血統表,ⒸSPAIA


・ルージュレベッカ
母シックスイスがアルゼンチン産馬なので、日本での牝祖は母。シックスイスは現役時アルトゥーロ・A・ブルリッチ賞(GⅢ・ダート6F)を勝利している実績馬だ。母はダートの短距離で活躍したが、本馬の牝系はスタミナ豊富なのが特徴のひとつ。また持続的な脚を使える馬が多い点も挙げられるだろう。3代母Numerariaが優秀で、競走馬としてはアルゼンチン1000ギニー(GⅠ・芝8F)を勝っていて、産駒にリアルナンバーがいる。このリアルナンバーは競走馬としてヒルベルト・レレナ賞(GⅠ・芝11F)を勝ち、繁殖としては日本ダービー馬マカヒキやCBC賞など重賞2勝のウリウリを輩出した。牝系の活力は上位人気馬と比較しても遜色ないレベルといえるだろう。

新馬戦の勝ち時計は遅く、あまり評価はされていないようだが、新馬戦前から「勝って函館2歳Sへ」というコメントがあったほどの素質馬。2走目の上積みにも期待できる。

ルージュレベッカの血統表,ⒸSPAIA


Cアナライズでは馬場状態を条件に3頭推奨

今回のCアナライズでは、血統解説で書いた3頭を推奨する。まず馬場が渋ったときは、スカイキャンバス。同馬は持ち前のパワーとスピードを活かして押し切る競馬を再現する可能性が高い。

良馬場と重馬場で軸にしやすいのがバスターコール。ただ、こちらは距離短縮に対応できない可能性があるという点から、頭固定というよりは馬連、3連複に最適な一頭として挙げておきたい。

穴で注目はルージュレベッカ。新馬戦の勝ち時計は平凡も、デビュー前の動きは人気馬にも決して引けを取らない。前走1番人気の回収率が良い要因を、思ったほどのパフォーマンスではなかったことだと仮定するなら、まさにぴったりの一頭だ。

<ライタープロフィール>
貴シンジ
競馬ライター。サラブレッドの血統をファミリー中心に分析する牝系研究家。3つのファクターから構築する「コンプレックスアナライズ」を駆使して競馬予想を行う。WEBサイト『ウマフリ』で「牝系図鑑」も連載中。競馬予想のほか「競馬王」など商業誌での執筆、一口馬主クラブ募集馬やセリ馬の血統分析、血統の魅力の伝承、繁殖牝馬の配合提案などを独自の切り口から行う。

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