【プロキオンS】人気を集めて逃げ切ったドンフランキー そのスケールから目が離せない
勝木淳
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ハイペースのサバイバル戦
夏の重賞はメンバーの力差が少ないレースが多く、その分、展開がレースの結果に大きく影響を与えるケースが目立つ。同日の七夕賞や前週にあったCBC賞などは特に展開が勝因に占める割合は大きかった。競馬は単純な能力比べではなく、馬が出せる能力は一定ではないという大前提がある。この前提がギャンブルとして人を夢中にさせる一因であったりもする。
たとえばCBC賞はジャスパークローネがマイペースを決め、前後半600m33.7-33.5と加速のいらない流れに持ち込み、逃げ切ったが、これは7番人気という伏兵だったことも大きい。ライバルたちのマークが別の馬に行っている間に、伏兵が逃げ切るという場面が競馬ではそこかしこで起こる。そういった意味でプロキオンSのドンフランキーは立派としか言いようがない。
出走馬のなかで前走オープン勝ちはドンフランキーとメイショウダジン、オメガレインボーの3頭。当然、先行有利なダート戦では前へ行けるアドバンテージは大きく、ドンフランキーは前走内容から2番人気に支持された。人気を集める逃げ馬はそうそう恵まれることはない。マークが別の馬に行けば、逃げ馬に利はあるが、マークされた逃げ馬ほど力を試されるものはない。ドンフランキーはメイショウテンスイ、アティードら伏兵のプレッシャーを受け、その後ろの馬もドンフランキーに離されまいとする意識から、一団で進んだ競馬は前半600m33.9のハイペースになった。
前半から息が入らず、後半600mは12.2-12.5-12.8と見事な失速ラップ。バテ比べのサバイバル戦を先頭のまま押し切ったのは、展開利でもなんでもなく、ドンフランキーの実力そのものであり、4歳でこれだけの競馬を作れるのは素晴らしいとしか言いようがない。3着オメガレインボーとは1.1秒差、2着と3着の差は6馬身もあった。厳しい展開でこそ力を発揮するドンフランキーの今後は非常に楽しみだ。
ダイワメジャー産駒はJRAダート重賞初制覇
意外なことにこれがダイワメジャー産駒のJRAダート重賞初制覇。現役時代、サンデー系のなかでもスピードの持続力を武器に、先行押し切りが得意だったダイワメジャーの産駒は父の遺伝力が強いのか、競馬を使われながら強くなるタフな先行型ばかり。7/2終了時点でJRA・1264勝をあげ、芝809勝、ダート423勝、勝率はそれぞれ8.9%、7.8%と互角。ダートでは短距離から1800mまで守備範囲が広い。
脚質別勝率は逃げ20.3%、先行13.8%に対し、差し3.5%と末脚を武器にするタイプは少ない。その分、馬場や展開を味方につけやすい逃げ、先行で強いことが、ダートでの強さも含め、ダイワメジャー産駒の人気の高さでもある。安定して力を出せることは馬主さんにとってかなり大きい。その分、ダートで突き抜けた馬が出ないため、ここまでJRAダート重賞未勝利だったのか。
だが、ドンフランキーはその雄大な馬体とともにダイワメジャー産駒の評価をさらに高めてくれるだろう。さすがに高齢になり、今年の2歳世代から種付数は抑えられているが、今日からはじまるセレクトセールでは2頭が上場される。このうち1頭はミスヨコハマの半妹。ミスヨコハマの父カレンブラックヒルはダイワメジャー産駒なので、血統的には非常に近く、早くから活躍できそうだ。
ハイペースをついていった2着リメイク
2着リメイクは帰国初戦でハイペースを好位から粘って上がり最速37.0を記録し、2着と上々の発進だった。こちらもまだ4歳と若く、得意舞台がどこなのか分からない部分もあるが、1400mは重賞勝ちがある1200mより安定した競馬ができる印象がある。父ラニは米国クラシック三冠を完走し、最後のベルモントSは3着だったタフな馬。タピットから受け継ぐ気難しい面もあるが、リメイクにはそういった面がなさそうで、秋は1200mの東京盃、JBCスプリントが目標とのこと。ちょっと距離が短い印象もあるものの、楽しみだ。
3着オメガレインボーは2着とは6馬身と離されてしまったが、ドンフランキーと同じ前走オープン勝ちの1頭であり、7歳にしてまだまだ充実している。中京ダート1400mはたとえハイペースになっても、差しにくいコースでもあり、サバイバル戦をよく最後まで伸びてきた。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『ゴールドシップ伝説 愛さずにいられない反逆児』(星海社新書)に寄稿。
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