【宝塚記念】イクイノックス春秋GP連覇へ 2012年オルフェーヴルなど”メイ”勝負を振り返る

高橋楓

有馬記念勝ち馬の翌年宝塚記念成績,ⒸSPAIA

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GⅠ馬8頭の競演 近年稀にみる豪華メンバー

ファンの夢をのせて走るドリームレース、それが春のグランプリ・宝塚記念だ。そんな一戦に今年は豪華メンバーが集結した。

昨年の有馬記念を制し、前走ドバイーマクラシックでは海外の強豪馬相手に圧倒的なレースを見せたイクイノックス、2連勝で天皇賞(春)を勝ち、勢いに乗るジャスティンパレス。他にも菊花賞馬アスクビクターモア、昨年ジャパンCを勝ったヴェラアズールやエリザベス女王杯勝ち馬ジェラルディーナなど、GⅠ馬8頭が出走予定だ。

今回は、記憶に残る宝塚記念勝ち馬3頭にスポットをあて、当時を振り返っていく。

今でも忘れられぬ2012年オルフェーヴル

今年は前述したように、昨年の有馬記念勝ち馬イクイノックスが春秋グランプリ連覇を目指し参戦する。グレード制導入以降、前年の有馬記念勝ち馬の成績は【5-1-1-9】勝率31.3%で、16頭がグランプリ連覇に挑み、達成したのは5頭のみだ。

有馬記念→宝塚記念 連勝馬一覧,ⒸSPAIA


マヤノトップガン(95年有馬記念→96年宝塚記念)
グラスワンダー(98年有馬記念→99年宝塚記念)
オルフェーヴル(2011年有馬記念→12年宝塚記念)
ゴールドシップ(12年有馬記念→13年宝塚記念)
クロノジェネシス(20年有馬記念→21年宝塚記念)

上記の5頭には共通点がある。それは有馬記念から宝塚記念までに1回は敗れていることだ。グレード制導入以降、前年の有馬記念を勝ち、負けなしで翌年の宝塚記念を制した馬はいない。

マヤノトップガンは阪神大賞典でナリタブライアンとの世紀のデッドヒートの末2着に敗れ、天皇賞(春)ではサクラローレルの5着。グラスワンダーは京王杯スプリングCを勝って安田記念で単勝1.3倍に支持されたが、エアジハードに敗れ2着だった。

ゴールドシップは単勝1.1倍に支持された阪神大賞典で快勝するも、天皇賞(春)で伸びを欠き5着。クロノジェネシスはドバイシーマクラシックで2着だった。

上記5頭の中で、忘れられないのが2012年のオルフェーヴル。前年にクラシック三冠を制し、有馬記念も優勝。2012年初戦の阪神大賞典は「どんな勝ち方をするか」に注目が集まっていた。

同レースは全馬がオルフェーヴルをマークしているかのような超スローペース。ホームストレッチ前で闘争心に火が付いた同馬は、一気に2番手を奪いにいった。池添騎手が必死になだめるが、3コーナーで制御不能になり、失速しながら外ラチへ向かい真っすぐに逸走。しかし、4コーナーで一気に盛り返し始め、最後は半馬身差の2着。まさに規格外の走りだった。

同馬には調教再審査が課された。天皇賞(春)では再審査時の馬装を義務付けられ、メンコを付けての出走となった。レース当日は陣営の努力も実ったのか、パドックや返し馬では落ち着き、今までの荒々しさは影を潜めた。

レースは終始後方から進め、まるで別馬かのように折り合っていた。しかし、今思えばこのときのオルフェーヴルは全く走る気がなかったのかもしれない。直線に入り、ゴーサインが出されても全く反応せず。レースは見せ場なく11着に敗れた。

そんな中で迎えた宝塚記念。前2走で負けてはいたが、オルフェーヴルはファン投票1位に選ばれた。レースは前走と同じく後方から進めていたが、前走とは違い走る気満々。闘争心みなぎるオルフェーヴルの姿がそこにはあった。直線は内から豪快に突き抜け、復活勝利を飾った。オルフェーヴルの2012年春3戦は、同馬の破天荒さを象徴し、なおかつ今もなお愛される由縁ではないだろうか。

今年は6頭目の偉業にイクイノックスが挑む。史上初の有馬記念勝ちから負けなしでの宝塚記念制覇なるか。注目したい。

競馬に絶対はないことを思い出した 2015年ゴールドシップ

ゴールドシップ 春のローテーション,ⒸSPAIA


ファンにとっては2015年のゴールドシップのスタートも忘れられないだろう。2013~2015年の阪神大賞典3連覇、宝塚記念も2013、2014年に連覇。JRAの同一平地GⅠ競走3連覇という大記録を目指して挑んだ2015年。

もともとゴールドシップはスタートが上手いタイプではなかった。2014年の天皇賞(春)ではスタート直前にゲートでバタンバタンと、C.ウィリアムズ騎手が落ちてしまうのではないかと思うくらい立ち上がり出遅れ。前走の2015年天皇賞(春)も目隠しされてのゲート入りだった。ファンはそんなことは分かっている。スタートで出遅れても、いつものように最後方付近から徐々に先団を射程圏に置き、大外を一気に捲って全馬を捻じ伏せる力があることも承知している。

特に2015年は3度目の挑戦で天皇賞(春)を制した年。スタートで後手を踏みながら、2周目の向こう正面で徐々に進出を開始し、これぞゴールドシップという捲りを決めて悲願を達成した。いよいよ鬼門となっていた天皇賞(春)を制し、GⅠ・6勝目。スタートで多少遅れてもゴールドシップらしいレースをすれば勝てる。そう思えるほど強い勝ち方だった。

その状態で臨んだ宝塚記念。まさか10馬身遅れのスタートをするとは誰も予想をしていなかった。2本脚で大きく立ち上がり、1度は着地したが、まさかゲートが開く瞬間にまた立ち上がるとは。スタートの瞬間に単勝1.9倍、ゴールドシップ絡みの約117億円分の馬券が紙になった。何度も何度も「競馬に絶対はない」と自分自身に言い聞かせてきたはずだ。それでも忘れた頃に悲劇はやってくる。そう改めて実感したレースだった。


前日単勝オッズ1.7倍 2003年ヒシミラクル

2003年は宝塚記念が近づくにつれ、ワクワク感が高まっていった。年度代表馬シンボリクリスエス、その年の春のクラシック二冠を達成した3歳馬ネオユニヴァース。国内外の芝ダート問わずGⅠ・6勝のアグネスデジタルなど、他にも強豪揃い、改めて振り返っても超豪華メンバーだ。当日の阪神競馬場に約7万7000人が詰めかけたのも頷ける。

そんな中、土曜日の前売りが始まると事件が起こった。ヒシミラクルに大口投票が入り、単勝オッズが30倍程度から1.7倍まで急降下したのだ。それまでにGⅠを2勝していたが、前述の豪華メンバーをおさえての1番人気。重賞の常連になってからは不安定な成績だったこともあり、にわかには信じられなかった。


ヒシミラクル 菊花賞~宝塚記念,ⒸSPAIA


神戸新聞杯 6着(7番人気・単勝16.1倍)
菊花賞 1着(10番人気・単勝36.6倍)
有馬記念 11着(5番人気・単勝18.5倍)
阪神大賞典 12着(5番人気・単勝16.1倍)
産経大阪杯 7着(8人気・単勝28.8倍)
天皇賞(春) 1着(7番人気・単勝16.1倍)

ヒシミラクルの単勝1.7倍。あちこちざわついたことを今でも覚えている。レース当日は徐々に人気が下がっていき、最終的には16.3倍の6番人気。しかし、レースが始まるとこれぞヒシミラクルの勝ちパターン、というレースを披露した。3コーナー辺りから得意のロングスパートを仕掛け大外をぶん回す。その脚色は衰えることを知らず、タップダンスシチーとシンボリクリスエスの競り合いを外から交わすと、ツルマルボーイ、ネオユニヴァースらの追い込みをしのぎ切りGⅠ・3勝目を飾ったのである。

ちなみにこのとき話題になった馬券購入者が手にした払戻金は2億円を超えたとか。当時の宝塚記念の1着賞金を大きく超える配当を手にしたことは、連日ワイドショーで報じられ話題にもなった。

今年の宝塚記念はどのようなドラマが待っているのか。現役最強馬イクイノックスのグランプリ連覇か、ジャスティンパレスやジェラルディーナなどGⅠ馬の逆襲か。はたまた人気薄の激走による大波乱か。今から胸が高鳴る。

《ライタープロフィール》
高橋楓
秋田県出身。競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にてライターデビュー。競馬、ボートレースの記事を中心に執筆している。

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