【宝塚記念】最大着差はクロノジェネシスの6馬身、最多勝は武豊騎手 「記録」を振り返る

緒方きしん

宝塚記念思い出の最高記録,ⒸSPAIA

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着差にまつわる記録 2008年エイシンデピュティと2020年クロノジェネシス

悲願のGⅠ制覇など、多くの感動シーンが見られる宝塚記念。そのドラマチックさがある一方で、実は大接戦はそこまで多くない。グレード制導入以降、ハナ差の決着は0回。それ以前の長い歴史の中でもハナ差の決着は1964年(1着ヒカルポーラ、2着パスポート)の1度だけである。同じグランプリの有馬記念はグレード制導入後だけでも、イナリワンやメジロパーマー、ヴィクトワールピサなど5度もハナ差決着があるだけに、大きな差を感じる。

一番の接戦はアタマ差での決着となった1985年と2008年。1985年はスズカコバンとサクラガイセン、2008年はエイシンデピュティとメイショウサムソンのアタマ差決着である。

エイシンデピュティは2002年生まれで、父はその名の通りフレンチデピュティ。デビューは3歳4月、2勝目をあげたのは4歳になってからという遅咲きの馬だ。しかもデビューはダート1200m戦、初勝利はダート1000m戦と、将来の姿からは想像がつかない条件だった。オープン入りしたのは5歳で、そこから心斎橋S・オーストラリアT・エプソムCと連勝し、一気に重賞馬へと上り詰めた。

同馬は2008年の年明けに京都金杯で重賞2勝目をあげると、続く東京新聞杯では名スプリンター・ローレルゲレイロらを前に7着と惨敗。しかし、距離延長で挑んだ大阪杯でダイワスカーレットの2着と好走。続く金鯱賞はアドマイヤオーラ、カワカミプリンセス、サクラメガワンダーらを相手に押し切って重賞3勝目をあげた。

そして迎えた宝塚記念。6歳のエイシンデピュティは単勝11.3倍の5番人気。雨が降る中、果敢に先頭を奪うと、2番手に2番人気ロックドゥカンブを引き連れながらの逃走劇を見せる。ロックドゥカンブが12着に沈み、上がり最速で1番人気メイショウサムソンが追い込んできたが、アタマ差粘り込み、逃げ切り勝ちをおさめた。

また、宝塚記念史上の最大着差は2020年クロノジェネシスがつけた6馬身。この時の2着馬がキセキで、同馬の全妹にあたるビッグリボンが先日のマーメイドSを制した。クロノジェネシスは冬にも有馬記念を制し、同年のJRA特別賞を受賞。また同馬は翌年の宝塚記念も勝ち、グランプリ3連覇を達成した。


最多勝・最多出走はレジェンド武豊騎手

エイシンデピュティが宝塚記念を勝った時の鞍上が内田博幸騎手。同騎手にとってこれがJRA移籍後の初GⅠ制覇でもあった。同馬とコンビを組んだ騎手には、安藤勝己騎手や小牧太騎手、柴山雄一騎手に戸崎圭太騎手と、地方競馬の関係者が多かったことでも印象深い。

前述のクロノジェネシスが連覇を達成した2021年に初コンビを組んだのがC.ルメール騎手。実は同騎手にとってはこれが最初の宝塚記念制覇だった。過去にはサトノダイヤモンド(1番人気6着)やレイデオロ(2番人気5着)、サートゥルナーリア(1番人気4着)など、なかなか人気よりも上位にくることが出来ていなかった名手にとって、待望の勝利でもあった。

では、宝塚記念最多勝利の騎手は──というと、現在4勝をあげている武豊騎手だ。イナリワン、メジロマックイーン、マーベラスサンデー、ディープインパクトで勝利をあげているほか、スペシャルウィークなどで2着に敗れている。上述した最小着差タイの2008年宝塚記念も、最大着差の2020年宝塚記念も、2着馬の騎手は武豊騎手だった。史上最多の宝塚記念29回出走もさることながら、数々のドラマに絡んできたそのスターぶりには脱帽するばかりである。競馬界きっての大スターは、今年は昨年エリザベス女王杯を制したジェラルディーナに騎乗予定。今回もドラマを見せてくれるだろうか。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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