【新潟大賞典回顧】良血グランディア、7歳にして本格化の予感 重賞初制覇に垣間見た母の面影

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早めにトップスピードに入る上がり勝負
春の新潟名物ハンデ重賞の新潟大賞典はグランディアが勝利し、重賞初制覇。2着バレエマスター、3着フクノブルーレイクで決着した。
開催がはじまった当初、SNS上で春の新潟芝の状態が悪いという投稿があり、物議を醸した。黒ずんで見えたという内容だったらしいが、新潟はJRA全10場所で唯一オーバーシードを行わず、1年を通じて野芝のみで行われる。根をしっかり張る野芝は、見た目の生育こそ遅れているものの、極めて順調。つまり、この春の新潟芝は例年とまったく同じだ。
これが夏になると魔法でもかけたかのように鮮やかになるが、春の芝が育ったもので、その間、張替などは行っていない。確かに夏と比べると若干だが時計がかかる春の芝も、今年は開催中に雨がなく、時計は速い。グランディアが記録した勝ちタイムは1:58.9で、上がり600m33.7は過去10回で3番目だった。
レースの展開を振り返ると、ダノンデサイルが勝ったダービー以来、約2年ぶりの出走が注目されたシュガークンが大外枠からハナをとりに行く勢いで出ていき、沸いた。結果的にハナは内からスタートを決めたラインベックがとり、横山典弘騎手のヤマニンブークリエも好位を狙っていく。
ベテラン騎手2人が好位を固めるとなると、ペースは速くならない。中盤でしっかりペースを落とす流れになり、1000m通過は1:00.4のスローペース。後半1000m58.5、ラスト600mは11.1-11.2-11.7の34.0と新潟外回り特有の上がり勝負に持ち込まれた。
新潟の特徴はラスト600mのラップ構成にある。直線が658.7mもあり、上がり勝負であっても早めに速いラップを刻みやすい。ここも先行集団がその手前12.2から一気に11.1までピッチをあげた。一旦先頭のヤマニンブークリエも次の11.2で苦しくなり、先行集団の背後にいたグランディアが末脚を伸ばした。上がり勝負とはいえ、2区間22.3は先行勢には厳しかった。
ラスト11.7はその厳しさを物語る。ここで一気に逆転が生じるのも新潟ならではの現象で、脚の使いどころが難しい競馬場だ。早めに仕掛けて押し切るのは難しく、残り600~400mで後続に急かされず、いかに我慢できる状況にあるかがカギを握る。重賞ではなかなかそういった形は作りにくい。
休養を挟んで一変したグランディア
勝ったグランディアは中団から直線で進路を探しながら、速いラップを待つ余裕があった。冷静に進路を見定め、抜けてきたのがシュガークンとヤマニンブークリエの間。その進路を閉ざされない一瞬のタイミングを見逃さなかった。
母ディアデラノビアは2005年のフローラSで後方一気を決めたキレもの。名牝の血を引き、注目されたグランディアだったが、父ハービンジャーの色が強く中山を得意とし、重賞連対も函館記念と速い上がりを求められない舞台での好走が多かった。
昨年の函館記念から約半年間の休養を挟むと、その後は2着、3着、3着、1着。長期休養をきっかけに成績が安定してきた。立て直し効果で馬が変わり、母ディアデラノビアの特徴が出てきた印象もある。広いコースでもGⅢレベルなら切れ負けしない。同じ新潟でも夏の芝で好走できるようなら、もうひとつ上もみえてくる。
イン待ちの菊沢一樹騎手
2着バレエマスターは12番人気での激走だった。人気薄に騎乗した際の菊沢一樹騎手は頼りになる。その必殺技はイン待ち。道中は内に潜り込んで脚を溜めるだけ溜め、直線にかける。
当然、前の馬群をさばかなければならず、スローだとなかなかスペースはない。だが、人気薄で一発にかけるなら、リスクを承知でインから攻めて進路を待つ。菊沢騎手はこれができる。小回りなら4コーナーで一気に外へ持ち出す作戦もあるが、新潟外回りなら、進路を探すしかない。まさに縫うように壁をひとつずつパスして、最後に上位争いに顔を出した。
バレエマスターも狭いところを抜けながら、最後まで集中して走れた。鞍上の意図をくみとり、勝負を捨てない闘志も激走には欠かせない。新潟は昨夏の関越S3着時が上がり600m32.4で、7着だった新潟記念も32.8と速い脚を繰り出せる。良馬場の新潟に好走ゾーンがあり、覚えておきたい。
3着フクノブルーレイクは格上挑戦のため、ハンデ53kgと斤量に恵まれた面はあったものの、好走できたのはそれだけではない。開幕週から新潟で騎乗を続けるF.ゴンサルベス騎手がコースを把握していたことと、フクノブルーレイクを巧みになだめ、脚を溜めさせたことも大きい。
同馬は前進気勢が強く、ムキになって走る面があり、今回も向正面でそんな素振りを見せていたが、ゴンサルベス騎手がそうさせなかった。抑え込むというより、抱え込むような騎乗が末脚につながった。折り合いながら位置をとれたことで、切れ味不足を補えた。
ただし、あくまでベストは中山のような小回りコース。今回の好走で再度広いコースに出走してきたときは、自己条件であっても相手関係を含め、よくよく検討したい。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 世界への挑戦』(ガイドワークス)に寄稿。
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