【マイラーズC回顧】アドマイヤズームが再浮上のきっかけを掴む復活V 非の打ち所ないレース巧者ぶりは健在

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理想的な高速京都マイル攻略法
安田記念の前哨戦マイラーズCはGⅠ馬アドマイヤズームが勝利し、復権へのきっかけをつかんだ。2着ドラゴンブースト、3着はべラジオボンドだった。
京都開幕週は超がつく高速馬場。10RのセンテニアルパークSではイガッチが1:43.7のコースレコードを記録した。その前の記録はグランデッツァが2014年に叩き出したもので、12年ぶりに更新された。とにかく速い時計が出た。
そうなると、アドマイヤズームが記録した1:31.7は12秒引いたもので、それなりに価値を見出す記録だが、10Rに比べると、インパクトには若干かける。というのもマイラーズCは毎年、好時計が記録されており、1:31.7は昨年のロングランと同じ。
シュネルマイスター1:31.5、サングレーザー1:31.3と高速決着が目立ち、ちょっと埋もれてしまう向きもある。しかし、これは道中のペースによるところが大きい。
逃げたショウナンアデイブに対し、番手につけたアドマイヤマーズは出方を伺うように見え、明らかに前半は速くない。12.1-10.7-11.5、34.3は遅くも速くもないが、その後、坂の上りで12.3としっかり脚を溜める区間があった。
京都の3コーナーは基本、ゆっくり上って、余裕をもって下る。定石通りのレース運びとなれば、好位勢は脚を溜めて勝負所を迎えることができる。下りに転じる残り800mは11.7-11.1-10.8-11.5、45.1。一気に速くならず、息を整えながらスパートの構えをつくった。
こうなれば、アドマイヤズームは止まらない。直線入り口で10.8を記録した時点で、後ろから外を回った馬はノーチャンスだったといっていい。
アドマイヤズームの成長力
アドマイヤズームの強みはこのような定石通りの賢いレース運びを可能にするところにある。まるで馬自身がレースを知っているかのようで、そこに武豊騎手が配されれば、鬼に金棒。2番手抜け出しは納得のレース運びだった。モーリス産駒特有の持続力にレース巧者となれば、簡単には崩れない。
課題はGⅠ特有の締まった流れになった際の立ち回りだろう。14着に大敗したNHKマイルCは落鉄の影響もあったが、序盤600m33.4、800m通過44.6の速すぎる流れに泡を食ってしまった可能性は高い。
中盤にアップダウンがあり、速くなりにくい構造をしている京都のマイル戦から東京のGⅠに替わって、流れの違いに対応できるか。その一点に尽きる。若い頃と違い、古馬になってどっしり構えられれば、対応できて不思議はない。モーリスの成長力を考えると、その可能性は高い。
母ダイワズームの産駒はヴィアメントが5歳でオープン入り、ダノンブレットが6歳でオープン入りと年を重ねてパフォーマンスを上昇させる。まだまだ成長できる余地は十分ある。
最高の形をつくったドラゴンブースト
2着は9番人気のドラゴンブースト。道中は枠なりに中団インで流れに乗れた。1800m巧者であり、マイルへの対応に不安視する声もあったが、前半が速くなりにくい京都マイルなら話は別。案の定、スローペースになり、中団前にとりつけた。さらに徹底してインを攻めてきたのも好走に結びついた。
上記の通り外を回ればアウトの展開。それもドラゴンブーストがとった8番手インが最上だった。その後ろから狙ったオフトレイルは前にドラゴンブーストがいて、進路をつくれなかった。ただし、これほど恵まれた好走だったのは事実で、次走は同じ状況を再現できるかどうかわからない。本質はあくまで1800mだろう。
3着べラジオボンドはアドマイヤズームの背後からマークする形で進めるも、最後は離されてしまい、その分、苦しくなってドラゴンブーストにも差されてしまった。だが、アドマイヤズームに真っ向勝負を挑んでの結果であり、決して悲観することはない。
オープン昇級2戦目、リステッドを勝ったばかりの身。キャリアを考えれば、むしろ上々の結果。アドマイヤズームと同じく正攻法の競馬ができる強みはマイル戦における最大の武器だ。今回の経験でさらに強くなる可能性も考えられ、重賞通用のメドは十分立った。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『サラブレッド大辞典』(カンゼン)に寄稿。
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