【小倉大賞典回顧】タガノデュードが重賞初制覇 藤岡佑介騎手とケイアイセナの“必勝パターン”を捉える

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勝ちパターンに持ち込めたケイアイセナ
冬の小倉後半のメインレース小倉大賞典はタガノデュードが差し切り、重賞初制覇。2着ケイアイセナ、3着ショウナンアデイブで決着した。
勝ち時計1.45.2は小倉大賞典史上第3位の記録だった。上位は2009年サンライズマックス1:44.9(1000m通過58.4)、24年エピファニー1.45.1(1000m通過57.2)と前半が速いレースが目立つ。今年はケイアイセナがペースを握り、1000m通過58.6だった。
サンライズマックスのタイムには及ばないが、エピファニーの記録と比べると、今年は後半でかなり頑張った競馬だったといえる。それだけ今の小倉の馬場はいい。
冬の北九州は予想外に雨に見舞われる日が多く、雪の脅威もある。小倉も開催後半になれば、馬場が悪化する年もあるが、今年は天候の影響もさほど受けず、開催が進み、後半特有の外差しにならず、時計が速い。同日最終の1勝クラス芝1200mも勝ち時計1:07.8であり、小倉巧者であっても、時計がかかる馬場を得意とする馬にとってはしんどい。
後半の時計が落ち込まなかったのは、馬場のほかにレースを引っ張ったケイアイセナの功績も大きい。前半1000mのラップ推移は12.2-11.4-11.8-11.3-11.9。スタート直後にハミをしっかりかけ、逃げる意思を鮮明にしつつ、コーナーでペースを落とし、2番手ナムラエイハブら好位勢が追いかける気配を察すると、ペースを上げて、単騎マイペースに落とし込む。
引退を間近に控えた藤岡佑介騎手の手綱が冴えた。後続を罠にはめるようなペース配分は味わい深く、こういったラップを刻める騎手が減っていくことは寂しくもある。
後半800mは11.5-11.4-11.7-12.0。先に仕掛けてリードをさらに広げて、ゴール板に飛び込む。小回りの中距離での必勝パターンだった。これを察したマテンロウオリオンが追いかけるも、競りかけるほどの力は残っておらず、ナムラエイハブも決して後半伸びるタイプでもない。どう考えてもケイアイセナの完全なる勝ちパターンだった。
ヤマカツエースの産駒傾向
だが、ケイアイセナの勝ちパターンをゴール寸前でタガノデュードが差し切った。今年最初の開催でオープン入りを決めたばかりの昇級馬だが、2歳時は未勝利勝ち直後に朝日杯FSに挑戦し、5着と掲示板に載った好素材。京都新聞杯に挑戦するなど陣営の評価は高かった。
古川吉洋騎手が4走前から続けて手綱をとり、少し構えて後半まで脚を溜める競馬を覚えさせていった。とりわけ、直近2走は早めにポジションを押し上げる競馬を試みており、それが今回の重賞勝利につながった。
前半は後方馬群の一角に位置していたが、古川吉騎手は早めに動くことも視野に馬群の外を意識していた。ケイアイセナのマイペースを感じ、3コーナー手前からスパートし、4コーナーも外を回りながらも押し上げた。
早めにエンジンをかけることで、トップスピードでゴールまで走りきれた。勝ち味の遅さを克服させていった古川吉騎手の騎乗馬の長所を引き出す丁寧な騎乗が藤岡佑介騎手の幻惑戦法を打ち破った。
タガノデュードの父はヤマカツエース。芝2000mの重賞を4勝し、大阪杯3・4着、有馬記念4着と善戦した小回りの鬼。産駒も中山に強く、京都内回りなど小回りに実績がある。
タガノデュードの母父ハーツクライのほか、ブライアンズタイム、ダンスインザダーク、ダイワメジャー、キンシャサノキセキと相性がいい。どちらかというとサンデー系でもパワー型とマッチする。産駒数は決して多くないが、父と適性が似ているので、イメージしやすい。
ちなみに小倉芝1800mの産駒成績は【0-0-0-9】だが、この勝利であっさり破られた。やはりデータは見つけた時に逆が出る。血統データ派は悶絶ものだった。とはいえ、2000mは得意距離なので、参戦するようであれば大阪杯も楽しめるのではないか。
ハンデキャッパーの評価
2着ケイアイセナは上記の通りレース運びはほぼ完璧。最後に12.0と少し時計を要したことで捕まってしまったが、現状、これが精一杯だろう。逆をいえば、これほどハマった競馬はそうは再現できない。次からはマークされる公算も高く、付き合いにくい。次走以降は思い切って嫌うのも手か。
3着ショウナンアデイブは混戦の3着争いに最後に顔を出し、ナムラエイハブを差して馬券圏内に浮上した。ハンデ戦からハンデ戦は斤量増を狙え、という馬券作戦通り。実は出走馬のなかで該当するのはショウナンアデイブだけだった。
前走京都金杯3着馬であり、ハンデキャッパーは見逃さなかったが、馬券を買う側には見落とした人も多かった様子。前走重賞3着で10番人気は甘く見過ぎた。反省したい。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『サラブレッド大辞典』(カンゼン)に寄稿。
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