【根岸S】ブロードアピールの豪脚をしのいだノボトゥルー 強豪が集結した2001年をプレイバック

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歴代屈指の好メンバー
今週は根岸ステークスが開催される。過去にはブロードアピールやサウスヴィグラスといったダート短距離の名馬が制したレースだ。今回はその中から2001年の一戦をピックアップして、当時のレースを振り返っていく。
長い歴史と伝統を誇る根岸Sは創設当初、11月の東京ダート1400mで行われ、1990年から距離を1200mに変更。それが1400m戦に戻り、時期を2月に移したのが2001年のことだった。
中心は2カ月前に根岸Sを制したブロードアピール。4角14番手からメンバー中断トツの上がり3F34秒3をマークして直線一気を決めたレースは、25年以上が経過した今なお語り継がれている。
同馬は前年11月の根岸S制覇の後、年明け初戦はガーネットS(GⅢ/中山ダート1200m)に挑んで2着。敗れはしたものの、このレースでも次元の違う末脚を見せつけていた。
武幸四郎騎手の継続騎乗で1番人気に推されたブロードアピールに対し、2番人気は兄・武豊騎手が騎乗するゴールドティアラ。こちらも牝馬だが、レース前の時点で重賞5勝と現役トップクラスの実績を誇り、前年の南部杯では牡馬相手に4馬身差の完勝を収めている。
さらにこの他にも、前年のジャパンCダートで2着と好走したサンフォードシチーや、芝の重賞勝ち馬ながらダートの5戦も全て掲示板内と抜群の安定感を誇ったトキオパーフェクト上位人気を形成。
5番人気以下のメンバーを見ても、マイネルブライアンにイーグルカフェ、エイシンプレストンにワシントンカラーなど、まさに強豪揃いの一戦となった。
そんなレースで主役に躍り出たのが、8番人気だったノボトゥルーだ。
同馬は米国からの輸入馬で、デビュー当初は岡部幸雄騎手とコンビを組んで芝・ダートの超にらみで歩みを進める。3歳10月にはゴールドティアラとベラミロードのワンツー決着となったユニコーンSに出走したが、結果は10着大敗。以降は条件戦を地道に戦い続けた。
オープンまで上り詰めたのは5歳になったばかりの2001年1月。準オープン勝ちから中1週で挑んだのが、根岸Sだった。
価値ある重賞初制覇
キャリアの中で若かりし頃の福永祐一騎手や勝浦正樹騎手、柴田善臣騎手に後藤浩輝騎手、蛯名正義騎手といった様々なタイプとコンビを組んでいたノボトゥルーだが、根岸Sではフランスの名手O.ペリエ騎手との初コンビで挑むこととなった。
ゲートが開くと、イーグルカフェが大きく出遅れる。最内枠のゴールドティアラは好スタートを決めたが、外からトキオパーフェクト、間からコンバットハーバーが前にとりつき、同馬と江田照男騎手が主導権を握る展開となった。
前の激しい攻防を見るように、中団以降にノボトゥルー、サンフォードシチーらがつける。出遅れたイーグルカフェも蛯名正義騎手の号令で追い上げ、ちょうどノボトゥルーの1馬身ほど前へ。さらに後方ではエイシンプレストン、そしてこの日も最後方でブロードアピールが仕掛けるチャンスを窺っていた。
各馬にらみ合いながら、大きな隊列の入れ替わりもないまま最終コーナーへ。まずはいっぱいになったコンバットハーバーを交わし、トキオパーフェクトが先頭に躍り出る。
しかし、後続の脚色も良い。長い直線で各馬が横いっぱいに広がり、追い込みにかかる。次に先頭を奪ったのは、内から伸びたゴールドティアラ。さらに同じような位置で進めたワシントンカラーが伸びてきて先頭を奪うも束の間、次に飛び出してきたのはノボトゥルーだった。
メンバー中最軽量のノボトゥルーが激しく入れ替わる先頭に立ったあたりで、観衆は後方にも注意を向ける。後方で脚をためたブロードアピールがやってくる。
先頭のノボトゥルー目がけて外から迫ったなか、さらにもう1頭、内からサンフォードシチーも脚を伸ばしてきた。
外から追い込むブロードアピール、内で伸びるサンフォードシチー。ノボトゥルーが2頭の間でいっぱいになったかと思われたその瞬間、ペリエ騎手の鞭が再び唸る。
最後の最後で再点火したノボトゥルーは内外2頭の追い込みを封じ、見事に1着でゴールを果たした。
8番人気で単勝オッズは25.0倍という高配当。前述の通り好メンバーが揃っていたことからも、この時点で重賞実績がないノボトゥルーが伏兵扱いだったことは不思議ではない。しかしその一方で、世界的名手騎乗の期待馬と思うと、やはりかなりオイシイ馬券だったようにも感じられる。
なお、2着は3番人気サンフォードシチーで、馬連は48.5倍。こちらもなかなかの高配当になった。1番人気ブロードアピールが3着、2番人気ゴールドティアラも4着と人気馬がしっかり上位に来ていることも、ノボトゥルーの勝利の価値を高める要素となった。
届かなかった“根岸S2勝目”、今年は…
ノボトゥルーはその後、ペリエ騎手とコンビ継続でフェブラリーSに挑戦。ウイングアローやトゥザヴィクトリーといった強敵を下し、一気にダート界の頂点に立った。
その翌月はドバイに渡り、帰国後にはかしわ記念に出走するなど、立て続けにビッグレースに出走。下半期も日本テレビ盃を皮切りに南部杯、JBCクラシック、ジャパンCダート、東京大賞典と年間10戦を駆け抜けた。
最後の東京大賞典は9着と崩れたが、それ以外は9戦3勝2着1回、3着1回で馬券外もすべて掲示板内は確保と、抜群の安定感を誇った。
フェブラリーS勝ち以降は勝利から遠ざかるも、6歳シーズンで重賞2勝を挙げて復活を印象付けると、7歳でさきたま杯を制覇。さらに8歳シーズンは5歳時を超える年間11戦をこなし、1勝2着3回3着5回という変わらぬ安定感を発揮して見せる。
以降も9歳時に交流重賞で3度の2着、JBCスプリントでも3着に食い込むなど、最終的には12歳までダートの第一線として活躍を見せた。タフという言葉では片付けられない凄みを感じる。
根岸Sには通算4回出走して【1-1-1-1】複勝率75.0%という好成績。連覇に挑んだ2002年はサウスヴィグラスの2着、その翌年は3着と好走はしたものの、2つ目の勝ち星には手が届かなかった。
ノボトゥルーをはじめリピーターが多いことでも知られる根岸Sだが、実は東京ダート1400m開催に限れば、これまで複数回勝利を挙げた馬はいない。
最近では2017年にブロードアピールを彷彿とさせる直線一気で大きなインパクトを残したカフジテイクが連覇に挑むも、翌年は3着で一歩届かず。2018年から2019年にかけて破竹の4連勝で根岸Sを制したコパノキッキングも、翌年は次走でフェブラリーSを制するモズアスコットに阻まれた。
迎えた2026年。今回は2年前にこのレースを勝っているエンペラーワケアが登場する。果たして、過去の強豪たちが越えられなかった壁を越えることはできるだろうか。
《ライタープロフィール》
緒方きしん
札幌生まれ、札幌育ちの競馬ライター。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、シャケトラ、ドウデュース。
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