【有馬記念】ライバルは一頭のみ!グラスワンダーvsスペシャルウィークが見せた名勝負 1999年“4cm差の決着”をプレイバック

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グラスワンダーvsスペシャルウィーク 同期ライバル2頭の共演
今週は有馬記念が開催される。過去にはオグリキャップやトウカイテイオー、ディープインパクトといった名立たる名馬が制したレース。今回はそんな中から1999年の一戦をピックアップ。当時のレースを振り返っていく(馬齢は現在の満年齢で表記)。
1999年の有馬記念は各世代の猛者が集結。5歳世代からは同年の天皇賞(秋)で2着のステイゴールドや、前年の有馬記念2着馬メジロブライトが参戦。3歳世代からは菊花賞馬ナリタトップロード、皐月賞馬テイエムオペラオー、NHKマイルカップ勝ち馬シンボリインディに加え、牝馬のフサイチエアデールも乗り込んできた。
しかし、この豪華メンバーの中でも主役は4歳世代の2頭だった。1番人気(単勝オッズ2.8倍)グラスワンダー、2番人気(単勝オッズ3.0倍)スペシャルウィークである。
グラスワンダーは前年の有馬記念勝ち馬。年明け初戦に1400m戦の京王杯SCを使い、春は安田記念に参戦。結果はハナ差の2着に敗れたが古馬マイルGⅠでも強さを示した。
続く春のグランプリ宝塚記念では同期のダービー馬スペシャルウィークと対決。同馬を寄せ付けず3馬身差で快勝。現役最強と呼ばれるに相応しい活躍をしていた。
一方のダービー馬スペシャルウィークは、春は天皇賞(春)を制したが、その後は宝塚記念、京都大賞典と連敗を喫していた。
秋に入り、同期のエルコンドルパサーが凱旋門賞で2着の活躍を見せるなか、内国産馬の意地を見せたのがスペシャルウィークだ。天皇賞(秋)、ジャパンCと連勝。特にジャパンCでは凱旋門賞馬モンジューら外国馬を撃破。グラスワンダーへのリベンジに燃えていた。
見るもの全てを魅了 ライバル2頭の大激戦
揃ったスタートからハナを主張したのはゴーイングスズカと芹沢騎手。確固たる逃げ馬が不在ということもあり、アッと驚く逃げの手に出た。さらに外からダイワオーシュウが続く。
ライバル2頭スペシャルウィークとグラスワンダーは無難なスタートから後方待機策を選択。グラスワンダーは後方4頭目、スペシャルウィークはそれを見る形で最後方に付ける。春のグランプリとは反対の位置取りとなった。
隊列はなかなか落ち着かず、菊花賞馬ナリタトップロードが大きなアクションで2番手に上がる。隊列が落ち着くと、スローな展開でレースが進む。その少し後ろではフサイチエアデール、テイエムオペラオーの3歳勢が5番手付近で睨み合う。
レースが動いたのは4コーナー付近。スペシャルウィークが外を回って前に進出を開始する。それに呼応するかのように、前を走るグラスワンダーも外を回りながらポジションを上げていく。直線に入った頃には、すでにグラスワンダーは前を射程圏内に捉えていた。
直線、スペシャルウィークは大外から伸びる。内では逃げたゴーイングスズカ、早めに仕掛けたツルマルツヨシ、さらには馬場の真ん中からテイエムオペラオーが伸びる。
グラスワンダーはゴーサインが出ると、一完歩ずつ前との差を詰めながら伸びる。このままグラスワンダーが差し切るのか。そう思った矢先、外からスペシャルウィークがもう一段ギアを上げて襲い掛かる。
グラスワンダーはこれに真っ向から応戦。2頭が馬体を並べながら火花を散らす。2頭は並んだままゴールを駆け抜けた。結果は写真判定に委ねられた。
やや脚色で勝っていたスペシャルウィークが優勢か。鞍上の武豊騎手は勝利を確信し、ウイニングランをしながら引き上げてきた。しかし、結果はグラスワンダーの勝利。その差は僅か4センチ差だった。まさに首の上げ下げで決着がついた有馬記念だった。グラスワンダーのグランプリ3連覇が確定した瞬間でもあった。
馬連配当は470円と当然のように堅実決着。3着には5番人気のテイエムオペラオーが入った。翌年に8戦全勝、GⅠ・5勝を達成する“世紀末覇王”でさえ、一つ上の先輩たちに割って入ることは出来なかった。
多くのファンが同世代のライバル、グラスワンダーとスペシャルウィークが見せた見事な一戦に大きな拍手を送った。
レガレイラが狙う牝馬初の“有馬記念連覇”
2頭は引退後に種牡馬としても活躍。グラスワンダーは、アーネストリーやスクリーンヒーローといった活躍馬を輩出。またスクリーンヒーローがその血を広げ、モーリスが誕生。この血はさらに広がっていくだろう。
スペシャルウィークもまた、ローマンレジェンドやトーホウジャッカルといった牡馬の活躍馬を輩出。しかし、特筆すべきはシーザリオ、ブエナビスタという2頭の歴史的名牝を送り出した点だろう。
とりわけシーザリオはエピファネイア、リオンディーズ、サートゥルナーリアとGⅠ馬を輩出。種牡馬の母としてもその名を轟かせている。
今年はレガレイラが史上初の牝馬による有馬記念連覇に挑む。しかしライバルたちも強敵揃い。春のグランプリホース・メイショウタバル、ダービー馬のダノンデサイルやタスティエーラ、3歳馬からは皐月賞馬ミュージアムマイルが参戦する。
レガレイラの連覇か、メイショウタバルの春秋グランプリ制覇か。それとも強豪古馬たちの逆襲か、はたまた3歳馬が世代交代の鐘を鳴らすのか。
今年は一体どんなドラマを見せてくれるのか。師走の中山から目が離せない、最高に楽しい一週間が始まる。
《ライタープロフィール》
緒方きしん
札幌生まれ、札幌育ちの競馬ライター。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はスペシャルウィーク、グラスワンダー、セイウンスカイ、エルコンドルパサー、キングヘイロー。
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