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【中日新聞杯回顧】シェイクユアハートが重賞初制覇 開花した「5歳ハーツクライ産駒」

2025/12/15 11:01
勝木 淳
2025年中日新聞杯、レース結果,ⒸSPAIA

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ハイレベルの持続力勝負

暮れの中京ハンデ重賞・中日新聞杯はシェイクユアハートが勝ち、重賞初制覇。2着レッドバリエンテ、3着ジューンテイクで決着した。

GⅠシーズン狭間にあるハンデ重賞とあって、メンバーランクは決してハイレベルとはいえない一戦だった。だが、レースの内容は非常に濃く、来年以降、中距離重賞戦線のポイントレースではないかと個人的には感じた。

最内枠のホウオウプロサンゲが注文をつけ、逃げ候補と目されたピースワンデュックが2番手に続いた隊列は、2コーナーを過ぎるころには早くもバラバラに。明らかに活気ある流れで進んだ。

前半1000m通過は1:00.3。中盤に12.6-12.6とペースダウンが入っており、先行勢は決して飛ばしたわけではない。だが、後半1000mの推移は12.0-11.2-11.3-11.3-11.5で57.3。逃げ脚質の2番手ピースワンデュックが早々に仕掛けて出ていったため、レースは早めに動いた。

好位勢も呼応し、3コーナーで先行集団が固まっていく。残り800mから我慢比べ、仕掛け合いが続いていき、最後の直線へ流れ込んだ。先頭に立ちかけても、伸びあぐねるといった形はサバイバル戦に近い。

これを差し切ったのがシェイクユアハート。中団馬群で折り合い、早めに外を意識した進路をとり、コーナーで強引に押し上げなかったのが勝因だろう。この手のサバイバル戦では仕掛けを待てる手応えが勝利を呼び込む。3着ジューンテイクに狙いを定め、きっちりとらえた。

3コーナーから続く持続力勝負を力強く抜け出す走りに対し、真っ先に浮かんだのが“5歳のハーツクライ産駒”というフレーズだった。有馬記念のリスグラシューが重なる。

リスグラシューは4歳秋にエリザベス女王杯を勝ち、惜敗に終止符を打ったものの、本当の完成は翌年の宝塚記念から。コックスプレート、有馬記念の3連勝はハーツクライの覚醒そのものだ。

一度目覚めたハーツクライの血は簡単には止まらない。シェイクユアハートも5歳ハーツクライ産駒。それも若い頃は条件戦でほぼ崩ることなく2、3着の山を築き、どうもあと一歩足りないというもどかしさを引きずっていた。

オープン入りを果たしたのは今年6月の阪神。リスグラシューとは比べられないが、間違いなくハーツクライ産駒の覚醒だ。その後、唯一崩れた新潟記念は小倉記念からの続戦で真夏の疲れもあったかもしれないが、レース上がり33.2の切れ味勝負になり、分が悪かったとみる。

一方で、今回の自身の上がり600mは33.2。徐々に末脚に磨きがかかってきた。1:00.3-57.3と落差3秒もあり、決着時計1:57.6を中団から差し切った脚力は来年の中距離戦線に割って入れるだけのものがある。持続力は相手のレベルが上がっても通用する武器だ。


早くもメドを立てたシンハナーダ

2着レッドバリエンテは中京芝2200mの重馬場や阪神芝2200、2600mで勝ち鞍をあげており、スタミナを要求される時計を要するコースで強い。昨年から今年にかけて約1年7カ月の長期休養を経て、前走アンドロメダステークスで戦列復帰。ひと叩きして一変した。

評価ポイントは1:57.8で2000mを走破し、2着に粘れたこと。速い上がりも高速決着も得意とはいえなかっただけに、この記録は大きい。早々にペースアップする展開で苦しかっただけに、この粘りは価値がある。屈腱炎での長期休養を経て、6歳で自身の記録を更新と精神的にタフで粘り強い。その良さがレースにも出ており、積極的なレース運びはスタイルとして合っているようだ。

3着はジューンテイク。トップハンデを背負いながらもしぶとく伸びた。結果的にはシェイクユアハートの目標になったが、内枠から早めに外に持ち出され、気分よく走ることに徹し、末脚を引き出した。

これで中京は【2-1-1-0】と崩れ知らず。好走ゾーンの幅は広くはないが、ツボにはまったら走ってくれる。適度に人気を落として、得意ゾーンで味方につけたい一頭だ。

2番人気シンハナーダは4着。ジューンテイクとはハナ差であり、ゴール前の伸び脚は際立った。

昇級初戦でいきなり厳しいラップを経験し、終い勝負に徹するしかなかった。がぜん不利な状況下だったことを踏まえると、この4着も来年につながる。シンハライトを出したシンハリーズの牝系特有の瞬発力を備えており、こちらはスローペースで見直したい。


2025年中日新聞杯、レース回顧,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 伝説のグランプリホース』(ガイドワークス)に寄稿。

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