【ステイヤーズS】リピーター大活躍でシルブロンの一変に警戒 新星候補は牝馬のホーエリート

勝木淳

過去10年のデータから見るステイヤーズS,ⒸSPAIA

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経験が勝負を分けるマラソンレース

国内平地最長距離で争われるステイヤーズステークスは“リピーターレース”として知られる。アルバートの3連覇やデスペラードの連覇、隔年で勝利したホットシークレット、古くはピュアーシンボリ、アイルトンシンボリなどが連覇を決めた。

勝ち馬以外もディバインフォース(1着、3着)やシルヴァーソニック(3着、1着)など、複数年にわたって馬券圏内に入ってくる馬も多く、リピーターの活躍はこのレースの風物詩になっている。

今年の出走予定馬では、シルブロンが昨年12番人気2着と気を吐いた。それ以降の5戦は12着、4着、5着、8着、15着。馬券に絡んでいない分、逆に不気味だ。ステイヤーズSのリピーターはこのレースだけ走るという特徴もある。今回もデータは過去10年分を使用する。

人気別成績,ⒸSPAIA


1番人気は【4-1-1-4】勝率40.0%、複勝率60.0%とまずまず。2番人気も【1-3-1-5】半数は馬券に入っており、そう大きく荒れない。

だが、6番人気【2-0-1-7】勝率20.0%、複勝率30.0%のほか7番人気や8番人気の勝利もある。ここに狙いを定めた実績あるステイヤーは崩れないものの、一方で隠れた長距離巧者が一変する場面もある。

なかなか得意条件がなく、中距離で大きな着順を踏んでいた馬が水を得た魚のごとく激走する。それを捕まえられれば、大きな配当にありつける。長距離への可能性を探ることも忘れずに。

年齢別成績,ⒸSPAIA


古い話だが、皐月賞馬で菊花賞も2着だったテイエムオペラオーが1999年にこのレースに出走。単勝1.1倍で2着に敗れた。次走の有馬記念が3着、翌年無敗の覇王も落としたのがステイヤーズSの歴史だ。

敗因は実力ではなく、経験。長距離とダートは経験が結果につながるカテゴリーだ。4歳【2-3-2-12】や5歳【3-2-3-41】、6歳【4-2-3-19】とベテランも互角。7歳以上も【1-3-2-32】で勝率は2.6%だが、複勝率15.8%と馬券圏内なら十分やれる。中距離との傾向の違いは頭に入れておきたい。

牝馬ホーエリートに期待

登録メンバーを見渡すと、前走重賞実績が乏しい馬たちが大半を占める。京都大賞典7着ヴェルテンベルク目立つぐらいで、今年もテーマは長距離での変わり目。一変する馬をなんとかして探そう。

前走クラス別成績,ⒸSPAIA


前走で注目はGⅡ【5-5-6-44】勝率8.3%、複勝率26.7%だ。なかでも前走・京都大賞典は【2-3-2-9】勝率12.5%、複勝率43.8%と際立つ。なかでも6着以下が【1-3-2-7】なので、ヴェルテンベルクやブレイヴロッカーなど大敗組に注目。3600mで着順を上昇させる馬を探そう。

前走アルゼンチン共和国杯・斤量増減別成績,ⒸSPAIA


前走・アルゼンチン共和国杯は【3-2-3-28】勝率8.3%、複勝率22.2%だが、分母が多く絞りにくい。そこでハンデ戦から別定戦に変わる点に着目し、斤量増減別をみる。

アルゼンチン共和国杯のハンデが別定のラインより低かった馬、今回増は【1-1-1-20】勝率4.3%、複勝率13.0%と凡走率がグンとあがる。反対に前走のハンデが別定と同じだと【1-0-1-5】勝率14.3%、複勝率28.6%であり、前走でハンデを背負わされていた斤量減が【1-1-1-3】勝率16.7%、複勝率50.0%と高い。

好走候補は今回斤量が増えるマイネルカンパーナより、0.5kg減のホーエリートではないか。牝馬であり、3000m超の経験はないが、前走0.2差6着、春は目黒記念タイム差なし2着。スタミナを問う東京芝2500mでの実績は無視できない。父ルーラーシップ、母の父ステイゴールドで非根幹距離巧者の可能性が高く、根幹距離出走に強気になれない面は残るものの、この血統なら長距離でこそ。魅力はある。

ちなみに、牝馬の優勝は1986年シーナンレディー以来なし。勝てば39年ぶりの快挙だ。

過去10年のデータから見るステイヤーズS,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 伝説のグランプリホース』(ガイドワークス)に寄稿。

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