【ジャパンC】白い稲妻タマモクロス、芦毛の怪物オグリキャップでも届かなかった世界の壁 1988年をプレイバック
緒方きしん

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芦毛2頭に凱旋門賞馬トニービンらが立ちはだかる
今週はジャパンカップが開催される。過去にはトウカイテイオーやエルコンドルパサー、ディープインパクトらが制したレース。今回はそんな中から1988年の一戦をピックアップ。当時のレースを振り返っていく。
1981年に創設されたジャパンC。その第1回は1~4着までを外国馬が独占した。その強さに衝撃を受けたが、1984年にカツラギエースが日本馬としてはじめて勝利。翌年もシンボリルドルフが勝利し「日本馬も強い」というところを見せた。
しかしその後は、1986年に外国馬がワンツー、1987年は上位9頭のうちダイナアクトレス(3着)を除く8頭が外国馬という圧倒的な力の差を見せつけられた。
その翌年の1988年は、日本馬が3年ぶりに勝利を手にするかに注目が集まっていた。1988年は10頭の外国馬が参戦。そのうち2頭は出走を取り消したが、8頭の外国馬が出走した。
迎え撃つ日本勢も強力なメンバーが揃う。日本総大将はタマモクロス。目下8連勝中で直近はGⅠ・3連勝。前走の天皇賞(秋)ではオグリキャップを撃破し、最高の状態で参戦してきた。
もう一頭の注目は何と言ってもオグリキャップ。前走の天皇賞(秋)でタマモクロスに敗れ連勝は止まったが、初GⅠで一線級相手に渡り合った力は本物だ。
人気はタマモクロスが1番人気。2番人気は凱旋門賞馬のトニービン、3番人気はオグリキャップ。さらにニュージーランドのボーンクラッシャー、アメリカのペイザバトラーなど、ヨーロッパ、アメリカ、オセアニアから強豪が揃った豪華な一戦となった。
大歓声を背に“白い稲妻”が世界に迫る
大歓声に包まれ、ゲートが開く。揃ったスタートから各馬が鞍上の指示に従いポジションを取りにいく。隊列がおおむね決まったとき、大観衆がザワめく。日本の有力馬タマモクロス、オグリキャップのポジションが前走と異なっていたからだ。
後方からの競馬をしてきたオグリキャップは、初の2400m戦ながら5番手を確保。タマモクロスは2番手から押し切った前走から一転して、後方3番手からレースを進めていた。
向正面でも隊列は縦長とならず一団となって進み、淀みない流れ。逃げるメジロデュレンをシェイディハイツがとらえ、ランニングフリーたちが前を追う。トニービンやペイザバトラーは中団やや後方につけ、その後ろにタマモクロスが構える。
第3コーナーでペイザバトラーが仕掛け、徐々に位置を押し上げる。そのすぐ後ろからタマモクロスも外を回りながら、一緒に上がっていく。トニービンは動かず、オグリキャップは後続のまくりでポジションを下げる形となった。
第4コーナーに入ると一気に馬群が凝縮。オグリキャップも外から進出を開始。横に広がりながら最後の直線に入った。
先に抜け出したのはタマモクロスとペイザバトラー。オグリキャップとトニービンも末脚を伸ばす。しかし、先に抜け出したタマモクロスとペイザバトラーが後続を引き離し、2頭の叩き合いとなる。
直線半ばでペイザバトラーが内ラチの方に寄る。タマモクロスは馬場の真ん中を突き進む。わずかに前に出たのはペイザバトラー。タマモクロスは必死に前を追い、オグリキャップとトニービンも懸命に追うが2頭は3番手争いまで。
タマモクロスは追い続け、少しずつ、少しずつ、ペイザバトラーとの差を詰める。しかし最後まで捉えきることは出来ず、ペイザバトラーが1着でゴールを駆け抜けた。
半馬身差で2着にタマモクロス、さらに0.2秒遅れてオグリキャップが3着でゴールした。ファンからは「またしても日本馬が敗れた」というため息が漏れた。
勝ったペイザバトラーは単勝9番人気、オッズは14.9倍で外国勢の中で伏兵評価だった。馬券は2番人気のトニービンが5着に敗れたことから、もし3連単が発売されていれば万馬券は間違いなかっただろう。
世界最強馬カランダガンを日本馬マスカレードボールらが迎え撃つ
ペイザバトラーは翌年のジャパンCにも参戦し、3着に好走した。引退後は種牡馬となり、産駒のパルブライトが新潟記念、函館記念を制している。
しかしペイザバトラー以上に日本競馬界に影響を与えたのがトニービンだ。引退後は種牡馬として日本で大活躍。ウイニングチケット、ベガ、ノースフライト、エアグルーヴと多くの名馬を送り出した。
また2001年には産駒のダービー馬・ジャングルポケットがジャパンCを制覇。父のリベンジを果たした。トニービンは東京競馬場で勝てなかったが、その血を持つ馬たちは東京競馬場を得意としている。
今年は天皇賞(秋)を制した3歳馬マスカレードボールが参戦。他にも今年のダービー馬で秋は凱旋門賞にも挑戦したクロワデュノール、昨年のダービー馬で今年のドバイSCを勝利したダノンデサイル、2年前のダービー馬で今年の春にQE2世Cを制したタスティエーラなどが参戦予定となっている。
しかし、今年最大の注目ポイントは“世界最強馬カランダガン”の参戦だろう。80、90年代のジャパンCとは異なり、近年は外国馬の参戦は少なくなり、また3着以内の好走は06年が最後と、外国馬にとっては苦しい戦いが続いている。
その中で今年は世界のトップホースが来日。胸を躍らせているファンも多いことだろう。果たして日本馬が強さを見せるのか。それともカランダガンが世界最強馬の力を見せるのか。ファンファーレが待ち遠しい一週間が始まった。
《ライタープロフィール》
緒方きしん
札幌生まれ、札幌育ちの競馬ライター。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、スクリーンヒーロー、ドウデュース。
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