【エリザベス女王杯】「アイルランドT先行馬」は複回収率226% データで導く穴馬候補3頭
鈴木ユウヤ

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データで見る「穴候補3頭」
中央競馬では今週から年末まで7週連続、8つの平地GⅠが施行される。気候の冷え込みとは裏腹に、競馬界は最もホットなシーズンに突入する。
日曜の京都メインは牝馬限定GⅠ・エリザベス女王杯。波乱が多いことでも知られ、2009年に11番人気クィーンスプマンテが逃げ切ったほか、阪神で代替された2021年には10番人気アカイイトが勝って3連単339万馬券が飛び出した。
今年はレガレイラがさすがに抜けていると見るが、2番手以下は大混戦ムード。様々な切り口のデータを駆使して3頭の穴候補を導き出した。
アイルランドTで先行した馬を狙え! セキトバイースト
まず1頭目はセキトバイースト。3歳時はGⅠで壁に当たったが、チューリップ賞2着、ローズステークス3着とGⅡでは好走。この春に府中牝馬ステークスで重賞制覇を果たした。今回はアイルランドトロフィー10着から反撃を期す。
エリザベス女王杯では「アイルランドTで先行していた馬が穴を開ける」というのがお決まりのパターンになっている(※便宜上、昨年までの「府中牝馬S」「アイルランドトロフィー府中牝馬S」も「アイルランドT」と表記する)。

過去10年の当レースにおいて「前走アイルランドTで4角4番手以内だった馬」は【2-5-1-8】複勝率50.0%、複回収率226%の好成績。東京が舞台のアイルランドTは差し決着になる年が多く、単純ながらそこで先行していた馬は見直し対象となる。
前記のうち「GⅠかGⅡで連対歴あり」の馬に限ると【2-5-1-3】同72.7%、複回330%と驚異的な好走確率だった。GⅡ以上で連対した実績を持ち、アイルランドTで先行してきた馬は、そこでの着順を問わずマークしたい。
今年はセキトバイーストが合致する。前走は休み明けで馬体重+20kg、自己最高馬体重を一気に18kgも更新していてさすがに重かった。と同時に、上がり3F33.8秒は自己ベスト。バテたというより、速すぎる馬場と遅すぎるペースでキレ負けという内容だった。
一度使った上積みは当然大きいだろうし、東京ほど瞬発力が問われないコースに替わるのも大歓迎。今回が絶好の狙い目だ。
脂の乗った4歳馬が高回収率 オーロラエックス
2頭目はオーロラエックス。杉山晴紀厩舎所属の4歳牝馬で、3勝クラスとカシオペアステークス(L)を連勝して駒を進めてきた。

エリザベス女王杯のデータでもうひとつ特徴的なのは「4歳馬」の強さ。過去10年で3歳【2-2-3-22】複勝率24.1%、4歳【6-5-5-48】同25.0%に対し、5歳以上【2-4-1-71】同9.0%だ。牝馬の5歳11月ともなると能力的に落ち始めていることが推察される。
3歳も数字上は互角に近いが、出走した馬の多くは秋華賞かそのステップレースで好走してきた世代上位層。その点を加味すると、やはり年齢的に有利なのは4歳という解釈になる。
その4歳馬のうち、前走がリステッドか重賞なら【6-5-5-30】複勝率34.8%、複回収率154%。そこで7着以内なら【6-5-5-20】同44.4%、複回196%。ダメ押しで関西馬に限ると【5-3-5-11】同54.2%、複回264%までアップする。
前走でリステッド以上を使われ、7着以内だった栗東所属の4歳馬となると、今年はオーロラエックスただ1頭だ。
この馬自身、京都ではこれまで【3-0-1-0】とコース相性はばっちり。デビューから11戦全て松山弘平騎手が騎乗しているあたりに期待の高さもうかがえる。良馬場でレースができれば侮れない。
ゴルシ牝馬は「広いコースの中長距離重賞」で買い フェアエールング
最後はフェアエールングを選ぶ。昨年の秋から本格化し、福島記念2着から重賞で4戦連続好走。牡馬相手のGⅡ・オールカマーでも0.5秒差4着と健闘した。
芝2200mのエリザベス女王杯は「牝馬限定重賞のなかでオークスに次ぐ長距離戦」という側面も持つ。そして、長めの距離の重賞に強い種牡馬といえばやはりゴールドシップだ。

ゴールドシップ産駒の牝馬は芝2200m以上のJRA重賞で【2-2-7-27】複勝率28.9%、複回収率158%と大幅黒字。菊花賞と天皇賞(春)を制し、阪神大賞典も3連覇した父の距離適性をしっかり受け継いでいる。
一方で父と違う部分もあって、産駒は中山や阪神内回りより、直線が長い舞台で活躍している。「最後の直線が390m以上のコース」に限定すると【2-0-5-10】同41.2%、複回269%まで上がる。京都外回り、芝2200mのエリザベス女王杯はうってつけの条件と言える。
フェアエールングとヴェルミセルの2頭どちらも注目だが、この記事ではフェアエールングを推す。オールカマーは1000m通過が59.9秒と決して遅くないところへマクリを敢行し、残り1000mから11.5秒を刻む早仕掛け。それでヨーホーレイクとハナ差なら立派な内容と言っていい。牝馬限定で相手が緩和され、レガレイラはともかく他のメンバーにはヒケをとらない。
《ライタープロフィール》
鈴木ユウヤ
東京大学卒業後、編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、Xやブログ『競馬ナイト』で発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。
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