【エリザベス女王杯】5頭が火花を散らす大激戦 トゥザヴィクトリーが悲願のGⅠ制覇を決めた2001年をプレイバック
緒方きしん

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3歳3強が上位人気独占
今週はエリザベス女王杯が開催される。過去にはメジロドーベルやファインモーション、アドマイヤグルーヴが制したレース。今回はそんな中から2001年の一戦をピックアップして当時のレースを振り返っていく。
2001年のエリザベス女王杯は、強力なメンバーが集まる混戦模様。単勝オッズ10倍を切る馬が5頭おり、どの馬が勝ってもおかしくない状況だった。
その中で1番人気は3歳馬テイエムオーシャン。ここまで8戦6勝3着2回という抜群の安定感を誇り、阪神3歳牝馬S、桜花賞、秋華賞とすでにGⅠを3勝していた。前走の秋華賞を快勝しての参戦も単勝オッズが3.0倍とついたのは、他のメンバーがいかに強力だったかを物語る。
2番人気のローズバドはオークス、秋華賞の2着馬で、3番人気のレディパステルはオークス馬で秋華賞も3着と好走。この3歳同期3頭を追いかけるのが、5歳馬トゥザヴィクトリーと4歳馬ティコティコタックだった。
トゥザヴィクトリーはこれが約11ヶ月ぶりの芝レース。芝重賞で3勝を挙げているものの、GⅠは桜花賞3着、オークス2着など未勝利。2001年にはダートへ挑戦を決め、初ダートのフェブラリーSで3着に好走した。
さらに春はドバイワールドカップへ挑戦。世界の強豪ダート馬を相手に2着と激走。そこから約8ヶ月ぶりの実戦がこのエリザベス女王杯だった。
5頭が並ぶ大激戦のゴール前 制したのは…
ゲートが開くと揃ったスタートからヤマカツスズランがハナを主張。1番人気テイエムオーシャンも内からスッと好位につけ、末脚が武器のローズバドは最後方を追走する。
おおよそ隊列が決まったとき、スタンドからざわめきが上がる。これまで逃げや好位からの競馬で好走していたトゥザヴィクトリーがまさかの中団後方にいたのだ。
ハナを奪ったヤマカツスズランとタイキポーラが競り合いながらレースを引っ張ったことで、隊列は縦長となり、2頭が後続を引き離して逃げる展開となった。
離れた3番手に単独でテイエムオーシャンがつけ、ティコティコタック、レディパステルは8番手付近を追走。トゥザヴィクトリーはその後ろ、ローズバドは後方内で脚を溜める。
気がつけばヤマカツスズラン、タイキポーラと3番手集団は10馬身以上の差がついていた。3番手のテイエムオーシャン、ポイントフラッグが前を追いかけ始めたため、後続がさらに5馬身ほど離れる。トゥザヴィクトリーと武豊騎手、ローズバドと横山典弘騎手は焦らずそのまま脚を溜めていた。
4コーナーに差し掛かると各馬がいよいよ追い始める。粘るヤマカツスズランとタイキポーラを捕まえられるか。ラチ沿いにコーナーを回る2頭。後ろが大きく横に広がって一気に襲いかかる。
直線に入りテイエムオーシャンが馬場の真ん中から伸び、先頭を奪う。気がつけばトゥザヴィクトリーも好位まで押し上げ、手応え十分で追い込んでくる。内から伸びるティコティコタック、レディパステルも脚色は十分だ。
テイエムオーシャン、ティコティコタック、トゥザヴィクトリーの追い比べ。レディパステルも内からもう一度伸びる。そして大外から一頭、猛然とローズバドが追い込んできた。
激しい追い比べ、有力馬5頭が並んだところがゴールだった。まさに牝馬トップを争う大激戦、観衆はその様に大歓声を上げた。
判定の結果、勝利を手にしたのはハナ差でトゥザヴィクトリー。3歳の春からGⅠ戦線で活躍していたが、これが悲願の初GⅠ制覇となった。
2着はローズバド、3着にティコティコタック。上位3頭より少し早く仕掛けたレディパステルとテイエムオーシャンがそれぞれ4、5着となった。
結果を見れば単勝オッズ10倍を切った5頭がハナ、ハナ、クビ、クビの大激戦を演じた。近年稀にみるハイレベルな一戦だったと言えるだろう。
ボンドガールやココナッツブラウンが初GⅠ制覇を狙う
その後のトゥザヴィクトリーは有馬記念3着やフェブラリーS4着、そして最後にドバイワールドカップに挑戦し引退。引退後は繁殖牝馬として活躍した。産駒のトゥザグローリー、トゥザワールド、トーセンビクトリーが重賞勝ちの活躍を見せた。
2着のローズバドも繁殖として大活躍。産駒のローズキングダムがGⅠ制覇を達成。孫のスタニングローズが秋華賞、エリザベス女王杯を制し、自身が手の届かなかった牝馬のビッグタイトルを一族にもたらした。
今年も悲願の初GⅠ制覇を狙う牝馬が多く集まった。ボンドガールやココナッツブラウン、3歳からもエリカエクスプレス、パラディレーヌ、リンクスティップなどが参戦する。
今年も好メンバーが揃い激戦が予想される。2001年のトゥザヴィクトリーたちが見せた熱いゴール前のような攻防を期待せずにはいられない。
《ライタープロフィール》
緒方きしん
札幌生まれ、札幌育ちの競馬ライター。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、メジロドーベル、スペシャルウィーク、ドウデュース。
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