【アルゼンチン共和国杯】“名牝系の血”が大箱コースで輝く ローシャムパークの復活劇に期待
貴シンジ

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3つのファクターから推奨馬を見つけ出す
今回は11月9日(日)東京競馬場で行われるアルゼンチン共和国杯について下記3つのファクターを組み合わせる、コンプレックスアナライズで分析を行っていく。
・レースの好走馬及び凡走馬の共通項を探る「重要データ」
・目には見えない上積みを探る「前走内容」
・適性と素質を知るための「血統評価」
特別登録のあった19頭のうち、除外対象のハギノアルデバランを除いた18頭を対象とし、過去10年のデータを使用して分析する。
重要データ:前走クラス別成績

アルゼンチン共和国杯は東京芝2500mで行われるハンデ戦のGⅡ。ハンデ戦だけに荒れるイメージがあるかもしれないが、意外にそんなこともない。レース全体の回収率は単複ともに51%となっており、80%前後が一般的な水準であることを踏まえれば、比較的堅めの決着が多い。
今回注目したいデータは前走クラス別成績。なお、前走条件戦組は相性が良いものの、今年は唯一の該当馬ハギノアルデバランが執筆時点では除外対象のため割愛する。
まずはOP・L組。こちらは【1-3-0-42】で単勝回収率76%、複勝回収率37%。昨年ハヤヤッコが10番人気1着となったので単勝回収率は高く出ているが、複勝率は8.7%とかなり低調だ。上位人気が予想されるスティンガーグラスにとっては厳しいデータである。
GⅢ組は【0-0-2-16】で複勝回収率27%。該当馬はサスツルギのみだが、成績としては苦戦傾向にある。GⅡ組は【3-4-2-51】で単勝回収率20%、複勝回収率35%。好走馬の数こそ多いものの、回収率ベースで見ると低水準だ。
一方、GⅠ組は【4-1-1-9】で単勝回収率91%、複勝回収率70%。レース全体の回収率を上回っており、狙い目となる。期間内では前走で敗れた馬しか参戦しておらず、実力に対して過小評価されやすい傾向にある。
実際、16年のシュヴァルグランや18年のパフォーマプロミスは宝塚記念9着から、21年のオーソリティは天皇賞(春)10着から勝利。GⅠ大敗から巻き返すパターンが目立っている。
今年はローシャムパーク(前走宝塚記念15着)が唯一の該当馬となる。ハンデは重くなるが、昨年BCターフで2着に好走した実績は侮れない。
【前走GⅠの出走予定馬】
・ローシャムパーク
前走内容:ローシャムパークの宝塚記念
ローシャムパークの前走は宝塚記念15着。当時の阪神競馬場は時計の出方が標準的で、どのタイプの馬にも好走のチャンスがある馬場状態だった。ただし、ただ内側の芝が綺麗だったため、経済コースを通った馬がやや有利だったといえる。
レースは逃げたメイショウタバルが勝利したが、後方待機のジャスティンパレス、ショウナンラプンタ、チャックネイトも掲示板に載っており、前後のポジションによる有利不利は少ない展開だったといえる。
ローシャムパークはスタートを五分に決めて中団最内のポジションを確保したものの、レース前からテンションがやや高く、馬群に包まれて掛かってしまったことが敗因とみられる。休み明けは折り合いがつきやすいタイプであり、今回は巻き返しが期待できる。
血統解説:ローシャムパーク

・ローシャムパーク
日本での牝祖は6代母パロクサイド。ダイナカール、そして本馬の3代母エアグルーヴと続く名牝系の一族だ。牝系の特徴としてまず挙げられるのは、大箱コースへの適性の高さ。エアグルーヴの父トニービンの影響がとても強く出る一族であり、長く良い脚を使えることが大箱コースで結果を残す要因となっている。
本馬の祖母イントゥザグルーヴは、エリザベス女王杯連覇含むGⅠを3勝し、ドゥラメンテの母でも知られるアドマイヤグルーヴの全妹。自身も芝中距離で4勝を挙げ、牝系の活力はもちろん、競走馬としての実績も十分に残した。
本馬の母レネットグルーヴもサンデーTC所属で現役時は芝8~9Fで3勝を挙げた実績馬だ。この牝系としては機動力に優れたタイプであったことが、ローシャムパークの大阪杯2着好走にも繋がっているのだろう。
本馬は父にハービンジャーを迎えた。末脚の持続性能の高さが目立つ配合であり、好走したBCターフ、大阪杯ともに長く脚を使えていた。今回初騎乗となるプーシャン騎手は、どちらかといえば仕掛けが早いタイプであり、ローシャムパークとの相性は良さそうだ。極端な上がり勝負にならなければ勝ち負けとなる。
Cアナライズはローシャムパークを推奨
今回のCアナライズではローシャムパークを推奨する。実績上位馬のレーベンスティールについては斤量(ハンデ)確認のための登録である可能性が高く、その他メンバーの中では本馬が実績からも最上位の存在だ。
近走は凡走が目立つが敗因は明確。東京コースで自ら動き、持ち味である長くいい脚を使う競馬ができれば、今回のメンバーなら十分に勝機がある。斤量は重いが、それを踏まえても実力は一枚抜けている。
【ライタープロフィール】
貴シンジ
競馬ライター。サラブレッドの血統をファミリー中心に分析する牝系研究家。3つのファクターから構築する「コンプレックスアナライズ」を駆使して競馬予想を行う。WEBサイト『ウマフリ』で「牝系図鑑」も連載中。競馬予想のほか商業誌での執筆、一口馬主クラブ募集馬やセリ馬の血統分析、血統の魅力の伝承、繁殖牝馬の配合提案などを独自の切り口から行う。
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