【天皇賞(秋)】東京芝2000mはベスト条件 京大競馬研の本命はマスカレードボール

京都大学競馬研究会

天皇賞(秋)の上がり順位別成績,ⒸSPAIA,インフォグラフィック

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好位、中団追走から速い上がりを使える馬が中心

11月2日(日)に天皇賞(秋)(GⅠ)が行われる。近年の日本競馬で圧倒的な力を示し続けたイクイノックス、ドウデュースがいない天皇賞(秋)が4年ぶりにやってきた。

今年は3歳世代からダービー2着馬マスカレードボール、皐月賞馬ミュージアムマイルが参戦。その他にもタスティエーラ、メイショウタバルをはじめ日本中距離路線を代表する実力馬が揃い、どの馬が勝ってもおかしくない大混戦模様の一戦となった。

以下では、本レースが行われる東京芝2000mのコース形態とそれに起因するレースの質、そして想定される展開を踏まえ予想する。

まずは東京芝2000mのコース形態をみる。1コーナー奥のポケットからスタートし、初角までの距離は約120m。直角に近い大きなカーブを回り、向正面に入ると、半ばに緩やかな上り坂がある。それを越えると3コーナーにかけては下る。最後の直線は高低差2.1mのなだらかな上り坂を持ち、新潟外回りに次いで2番目に長い525.9m。これが今回のコースレイアウトだ。

まず注目すべきは、初角までの距離が約120mとかなり短い点だ。これまで見てきた他コースと比べても突出した短さであり、先手争いは全くと言っていいほど長引かない。したがって、先行馬の割合に連動する序盤の先手争いの激しさはペースに大きく影響しない。ハナを切る馬の直近の追走ペースに依存する。

また、ここまで短いと序盤のポジション争いでは内枠が圧倒的に有利だ。明確な逃げ馬が位置を取りにくい外枠に入った場合、無理にハナまで取り切るとペースが近走以上に上がりやすい点も押さえておきたい。2023年にジャックドールが8枠からハナを取り切り、自身が逃げたレースとしてはキャリア最速の1000m通過57.7秒という超ハイペースになったことが記憶に新しい。この点は次の展開予想で考察していく。

この他にレースの質に大きく影響するコース形態上の特徴はない。ただ、やはり直線が長い東京芝コース。どんなペースになろうとも、道中でしっかりと脚を溜め、最後に速い上がりを繰り出せる差し脚確かな馬が有利となっている。天皇賞(秋)という中央競馬を代表する主要レースでもあり、各馬のポテンシャルが最大限発揮されやすい。

天皇賞(秋)の上がり順位別成績,ⒸSPAIA


<天皇賞(秋) 上がり3F順位別>
4位以内
【9-7-6-19】
勝率22.0%、連対率39.0%、複勝率53.7%、
単勝回収率58%、複勝回収率123%
※過去10年

これは数字にも表れている。天皇賞(秋)における上がり3F4位以内馬の成績は上記の通り優秀だ。勝ち馬10頭中9頭、連対馬20頭中16頭、馬券内30頭中22頭を該当馬が占めている。

ただ、最上位の上がりをマークすることが必須条件と言えるほどでもない。ペースによっては先行馬の好位抜け出しからの粘り込みもそれなりに見られる。今週からBコース替わりという点も含め、先行馬の前残りには注意して印を打っていきたい。

メイショウタバルが引っ張るハイペース

続いて今回想定される展開から恵まれる馬を考える。メンバー構成は前走通過順位に3番手以内のある先行馬が4頭と出走馬全14頭に対してそこまで多くない。

ただ、今回は明確な逃げ馬であるメイショウタバルが8枠13番に入った。前述の通り、序盤のポジション争いで不利な外枠から一気にハナを取り切ると、近走より速いペースになる可能性が高い。ホウオウビスケッツが先手を主張してきたところを外からかわして行く形であればなおさらだ。

メイショウタバルは稍重馬場の宝塚記念で1000m通過59.1秒、良馬場の日経新春杯では1000m通過57.7秒という超ハイペースで逃げているため、後続が付き合わず離し逃げになる可能性も考えておきたい。

恵まれるのはやはり、道中で脚を溜め、最後に速い上がりを繰り出せる差し脚確かな馬だ。展開面がこのレースの質を強める。追走力も必要だが、ハイペースにまともに付いていく好位追走よりも、内目の中団後方で脚を溜め、直線で外に持ち出して末脚を伸ばす競馬の方が理想的だ。コース替わりの恩恵があるとはいえ、この点で先行勢はやや割引評価したい。

とはいえ各馬のポテンシャルが最大限発揮されやすいコース。能力評価を大前提にして、以上の点を踏まえて印を打っていきたい。

2歳時から示し続けたGⅠ級のポテンシャル

◎マスカレードボール
皐月賞、日本ダービーに引き続いての本命。日本ダービーは好スタートからミドルペースを中団8番手で追走。4角4番手以内馬が1、3、4着という前残り展開の中、同7番手から上がり3F2位33.7秒の末脚で0.1秒差2着に入った。世代最高峰の舞台で能力の高さを示した。

2走前の皐月賞はスタートを決めるも序盤から馬群で揉まれ続ける競馬。1コーナーに入るまでに複数回他馬と接触し、後方11番手からの追走となった。道中で位置を下げながらも最後は馬群を割って上がり3F2位の脚を使い0.3秒差3着。着順、着差以上に評価できる内容だった。

3走前の共同通信杯は好スタートから2、3番手で先行しスムーズに抜け出して快勝。直線ではソラを使いながらラスト5F12.0-11.8-11.5-11.5-11.2の加速ラップかつレースレコードタイで勝利する衝撃の内容だった。

2歳時からその才能の片鱗は見せており、東京芝1800mの2歳戦において「勝ち時計1:46.2以内」かつ「上がり3F33.4秒以内」で勝利した馬は世界最強馬イクイノックス、無敗の三冠馬コントレイルと本馬のみ。

また、日本ダービーにおいて「走破時計2:23.8以内」「上がり3F33.7秒以内」「上がり3F2位以内」で連対した馬は本馬とドウデュース、イクイノックス、シャフリヤール、エフフォーリア、ディープインパクトの6頭のみ。GⅠで複数勝利している化け物級の馬ばかりだ。本馬も間違いなくGⅠ級のポテンシャルを秘めている。皐月賞、日本ダービーであと一歩勝利に届かない競馬が続いたものの能力は一級品だ。

中団から常に強烈な決め手を繰り出せる優等生タイプであり、陣営からのコメントの通り、東京芝2000mはベスト条件だ。古馬より2キロ軽い斤量で5枠7番と絶好枠に入り、鞍上も天才・C.ルメール騎手と全く隙がない。持っているポテンシャルを最大限に引き出せば初のGⅠ戴冠に届くと信じて本命を打つ。

◯シランケド
今回のメンバーでも随一のキレ味を持つ一頭。前走の新潟記念は外差し馬場の恩恵があったとはいえ、4角12番手から上がり3F最速32.4秒の末脚を使い快勝。2着馬エネルジコは次走菊花賞1着、3着馬ディープモンスターは次走京都大賞典1着という超ハイレベル戦だったことも含めて高く評価できる一戦だ。

2走前のヴィクトリアマイルも上がり最速の脚を使いタイム差なし3着。今回のメンバーでも上位の地力があると評価する。スムーズな追い出しで持ち前の末脚を発揮できれば十分に勝ち負け可能と見る。

▲ミュージアムマイル
ダービーでは展開が向かず敗れたものの、クロワデュノール、マスカレードボールと並び、世代最高峰の能力を持つ一頭。マスカレードボール同様、中団から常に堅実な末脚を使えるタイプだ。朝日杯FSで2着に好走した際のC.デムーロ騎手なら再度ポテンシャルを最大限に生かした騎乗をしてくれるはず。斤量のアドバンテージを生かし、スタートを決めて中団前目からスムーズに追い出せれば順当に好走可能。

△ブレイディヴェーグ
前走の新潟記念は外差し馬場で最内枠から馬場の悪い内を突く厳しい競馬。評価を下げる内容ではない。昨年の府中牝馬S以降、ベストとは言い難いマイル路線で国内最上位のマイラー相手に僅差の競馬ができているように、能力はここでも十分に通用する。東京芝2000mはずっと待ち望んでいたベスト条件で前走からの巻き返しに期待できる。高いオッズ妙味も見込まれる今回、相手に押さえておく。

×タスティエーラ
近3走の内容、相手関係を見れば、国内では間違いなく地力上位の一頭。枠も3枠5番と絶好で、内目の中団で脚を溜められる。ただ、状態面を若干割引評価して相手まで。

買い目は◎単勝1点、◎-◯▲△馬連3点、◎-◯▲-◯▲△×3連複5点で勝負する。

▽天皇賞(秋)予想▽
◎マスカレードボール
◯シランケド
▲ミュージアムマイル
△ブレイディヴェーグ
×タスティエーラ

◎2024年勝負買い目個人成績(東海S〜ホープフルS:25記事)
・単勝27点→4830円 回収率178.9% 的中率37.5%(的中9R/推奨24R)
・馬連105点→12480円 回収率118.9% 的中率42.9%(的中9R/推奨21R)
・3連複204点→22410円 回収率109.9% 的中率17.4%(的中4R/推奨23R)

ライタープロフィール
京都大学競馬研究会
今年で30周年を迎える、京都大学の競馬サークル。馬主や競馬評論家など多くの競馬関係者を輩出した実績を持つ。また書籍やGⅠ予想ブログ等も執筆。回収率100%超えの本格派が揃う。

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