【天皇賞(秋)】東京2000mでこそ“真価発揮” 人気馬堅調の一戦で妙味生むミュージアムマイル
貴シンジ

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3つのファクターから推奨馬を見つけ出す
2日(日)に東京競馬場で行われる天皇賞(秋)について下記3つのファクターを組み合わせる、コンプレックスアナライズで分析を行っていく。
・レースの好走馬及び凡走馬の共通項を探る「重要データ」
・目には見えない上積みを探る「前走内容」
・適性と素質を知るための「血統評価」
特別登録のあった15頭を検討対象とし、過去10年のデータを使用する。
重要データ:順当に前走好走馬

天皇賞(秋)は秋の中距離王者決定戦。有馬記念が中山芝2500mという癖のあるコースで行われるのに対して、舞台となる東京芝2000mは実力が出やすいコースとなっている。従って、レース全体の回収率は単勝回収率が18%、複勝回収率が58%と非常に低く、穴狙いをするようなレースではない。
注目したいデータは前走着順別成績。前走が1~3着だった馬の成績は【8-6-7-49】で単勝回収率29%、複勝回収率71%。対して4着以下だった馬の成績は【2-4-3-68】で単勝回収率8%、複勝回収率47%となっており、好走馬の数だけでなく、前走1~3着馬の方が単複ともに回収率でも上回っている。
今回、上位人気が予想される馬のなかに前走4着以下はいないことから、人気決着が予想される。
【前走3着以内の出走予定馬】
・クイーンズウォーク(※新潟記念は除外。その前のヴィクトリアマイル2着)
・ジャスティンパレス(宝塚記念3着)
・シランケド(新潟記念1着)
・セイウンハーデス(エプソムC1着)
・タスティエーラ(QE2世C1着)
・ホウオウビスケッツ(毎日王冠2着)
・マスカレードボール(ダービー2着)
・ミュージアムマイル(セントライト記念1着)
・メイショウタバル(宝塚記念1着)
前走内容:ミュージアムマイルのセントライト記念
ミュージアムマイルの前走はセントライト記念1着。今年のセントライト記念はかなりのスローペースで、前半5Fが60.3秒、後半5Fが58.3秒の後傾2.0秒だった。
ミュージアムマイルは中団後方から馬群を見る形で進めてラスト800mくらいから徐々に進出を開始。4コーナーで一気に加速してそのまま前を行く馬たちをまとめて差し切った。着差は0.1秒だが追い方を見てもかなり余裕のある勝ち方で、同世代のメンバーでは格が違うといった印象だった。
セントライト記念当日の中山競馬場は内側の馬場も非常に綺麗で、インの経済コースを通った馬が有利な展開。そんななか、ミュージアムマイルは一番外を回す競馬を選択しており、見た目以上に強かったということも頭に入れておきたい。
また、時計も出やすい馬場状態であり、高速馬場に対応したのも収穫の一つだ。東京芝2000mでの高速決着にも対応可能だろう。
血統解説:ミュージアムマイル

・ミュージアムマイル
日本での牝祖は5代母ロイコン。ロイコンを根幹とする牝系は国内で大きく広がっており、本馬の近いところではマイルCS(1993年)を制したシンコウラブリイ、昨年の二冠牝馬チェルヴィニアなどGⅠ馬2頭を筆頭に、重賞勝ち馬がずらっと並んでいる。
特徴は仕上がりの早さで2歳、3歳の時期から完成度の高い競馬ができる点。ほか、瞬発力とスピード性能の高さ、豊富なスタミナも魅力的だ。
母ミュージアムヒルはJRAの芝マイルで3勝。本馬は父にリオンディーズを迎えた。ベストな距離は2000mであり、セントライト記念を勝ちながら菊花賞ではなく天皇賞(秋)を選んだのも適性の高さを見込んでのことだ。
リオンディーズ×ハーツクライという組み合わせは2023年ダービー卿CTを制したインダストリアと同じ。本馬の場合、牝系がスタミナ型だったことや、リオンディーズらしい胴伸びの良い身体つきだったことで中距離タイプに出た。
操縦性の高い馬だけに、中山で捲るイメージが強いかもしれないが、東京競馬場でスローペースになった場合が一番強さを発揮するだろう。今年のメンバーを考えれば、十分チャンスがある。
Cアナライズではミュージアムマイルを推奨
上記の内容を踏まえ、Cアナライズではミュージアムマイルを推奨する。今回、上位人気が予想される馬はいずれも実力十分で、よほどのことがなければ波乱は考えづらい。そんな中で妙味まで考慮するなら、ミュージアムマイルが狙い目と言える。
皐月賞、セントライト記念と中山での好走が目立つため、実力以上に人気を集めることはないだろう。ただし、本馬はスローペースの東京コースでこそ、本来の実力を発揮できるタイプ。ミュージアムマイルを軸にその他の上位人気馬へ絞った馬券選択が良さそうだ。
《ライタープロフィール》
貴シンジ
競馬ライター。サラブレッドの血統をファミリー中心に分析する牝系研究家。3つのファクターから構築する「コンプレックスアナライズ」を駆使して競馬予想を行う。WEBサイト『ウマフリ』で「牝系図鑑」も連載中。競馬予想のほか商業誌での執筆、一口馬主クラブ募集馬やセリ馬の血統分析、血統の魅力の伝承、繁殖牝馬の配合提案などを独自の切り口から行う。
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