【ファンタジーS】フェスティバルヒル中心も波乱含み データで浮上するのはベレーバスク

勝木淳

過去10年のデータから見るファンタジーS,ⒸSPAIA

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例年、大混戦!2歳牝馬による激戦

秋の前哨戦は細かく日程調整が施され、本番との出走間隔に配慮された。ファンタジーSも昨年まで行われていたスワンSが繰り上げられ、そこに入る形で1週間日程が繰り上がった。阪神JFまでは中5週になり、こちらも本番とのつながりが濃くなるのか注目だ。

というのも前走ファンタジーS組は阪神JFで必ずしも相性がいいわけではなく、2018年ダノンファンタジー、19年レシステンシアが勝ったものの、2020年以降は【0-0-1-17】。ここ5年は冴えない成績が続く。GⅠにつながる前哨戦に生まれ変わるのか。テーマは多い。

ここからは2020~22年の阪神開催を含む過去10年分のデータを使用して今年のファンタジーSを展望する。

人気別成績,ⒸSPAIA


1番人気【3-2-2-3】勝率30.0%、複勝率70.0%はそれなりの数字だが、2番人気【1-1-1-7】勝率10.0%、複勝率30.0%以下は6番人気【1-1-1-7】勝率10.0%、複勝率30.0%までほぼ横一線。ようは混戦模様の年がかなり多い。

10番人気以下も【2-2-2-32】勝率5.3%、複勝率15.8%と馬券圏内に来る可能性を残しており、馬券的難易度は高い。これも出走馬に抜けた実績馬がいないため、買う側にとって力関係が読みにくいからだろう。

頼れる核がいない上にまだまだ適性が定まっていない2歳牝馬の重賞という設定は妙味しかない。

キャリア別成績,ⒸSPAIA


キャリアでみると、1戦【4-2-1-22】勝率13.8%、複勝率24.1%、2戦【6-2-4-40】勝率11.5%、複勝率23.1%が抜けており、キャリアが少ない馬が中心。ここはほかの2歳重賞と同じスタンスでいい。

ただ、3戦【0-4-5-22】複勝率29.0%には注意が必要。2、3着に突っ込んできた9頭のうち、3頭は12、12、15番人気。昨年15番人気3着のベルビースタローンもキャリア3戦。新馬大敗、未勝利1着、重賞大敗からの激走だった。

一方、2年前12番人気3着シカゴスティングは新馬3着、未勝利、フェニックス賞連勝という経歴にもかかわらず、人気薄だった。混戦ゆえに盲点も存在するので、気を抜けない。

フェスティバルヒルに迫るベレーバスク

今年のメンバーは函館2歳S2着ブラックチャリス、新潟2歳S3着フェスティバルヒルが実績上位。新馬勝ちたての1戦1勝馬はシラヌイ、マーブルパレス。ほかにはサフラン賞2着ベレーバスク、りんどう賞2、3着メイショウハッケイ、フルールジェンヌも賞金を上積みしたい。

前走新馬1着・距離別成績,ⒸSPAIA


まずは新馬勝ちたての1戦1勝馬について。距離の傾向をみると、同距離組も【1-1-0-9】勝率9.1%、複勝率18.2%と結果は出ているが、1400m未満【2-0-0-8】勝率、複勝率20.0%、1400m超【1-1-1-6】勝率11.1%、複勝率33.3%の距離変化組に注目だ。

シラヌイ、マーブルパレスは前走1200mからの延長馬。とかくマイル路線を目指す1400m重賞となると、前走スプリント組は評価を下げがちだが、結果は反対だったりする。ようは短距離戦で養ったスピードが1400m重賞で成果となってあらわれるケースがある。

キャリア2戦以上・前走クラス別成績,ⒸSPAIA


キャリア2戦以上となる新馬勝ち組以外の前走クラス別成績は、未勝利【3-0-2-20】勝率12.0%、複勝率20.0%、1勝クラス【2-2-0-14】勝率11.1%、複勝率22.2%が目立ち、GⅢは【1-3-3-19】勝率3.8%、複勝率26.9%、オープン・Lは【0-3-4-21】複勝率25.0%。同クラス横滑りはちょっと勝ちきれないが、複勝圏ならアテにできる。

前走新潟2歳Sは【0-1-1-2】複勝率50.0%。函館2歳Sは【0-1-1-3】複勝率40.0%。新潟2歳Sは好走馬ならOKで、函館2歳Sは勝ち馬だけが好走している。データを素直に読めば、フェスティバルヒルは有力候補といえる。ただ、頭数が少ないデータであり、これだけで判断するのは早計だろう。

前走1勝クラスは1着馬【1-0-0-4】、2、3着【1-2-0-6】、4着以下【0-0-0-4】。なんなら惜敗組がおもしろい。ベレーバスク、メイショウハッケイ、フルールジェンヌは候補に残る。

特にサフラン賞組は【1-1-0-2】勝率25.0%、複勝率50.0%なので、ベレーバスクには注目だ。父ベンバトルはこの世代の新種牡馬。現役時代はダートも芝も走ったオールラウンダーであり、日本の中距離トップクラスを負かしたドバイターフが印象に残る。

その父はドバウィで、日本だと短距離中心のパワー型のイメージが強い。少し速く流れる1400mなら楽しみはある。ベンバトル産駒のJRA・4勝のうち、1400mは【2-1-1-10】勝率14.3%、複勝率28.6%(2025年10月19日終了時点)。悪くない。

過去10年のデータから見るファンタジーS,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『もう一つの引退馬伝説2 関係者が語るあの馬たちのその後』(マイクロマガジン社)に寄稿。

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