【菊花賞】“ダービー着順で明暗”神戸新聞杯組ショウヘイに好機 条件戦組は「2200m」がカギ握る
勝木淳

ⒸSPAIA
1枠は好走なし
牡馬クラシックロード最終章には皐月賞、ダービーを制した馬たちの名がない。直近では2022年が該当。このときは皐月賞5着、ダービー3着のアスクビクターモアが優勝した。
その前年も同様で皐月賞2着、ダービー6着のタイトルホルダーがラスト一冠を奪取。なんやかんやと春のクラシックで善戦した実績馬の牙城は崩れない。
だが、今年は皐月賞、ダービーともに出走し、どちらかで3着に以内に入った馬はいない。ダービー3着ショウヘイは皐月賞不出走であり、神戸新聞杯を勝ったエリキングは二冠11着、5着と結果を残せなかった。これら事実が菊花賞の結果にどんな影響を与えるのか。考察のネタはこと欠かない。
ここからは阪神施行21、22年を含め、過去10年分のデータを使用して、今年の菊花賞を展望する。

1番人気は【3-0-3-4】勝率30.0%、複勝率60.0%であり、2番人気【2-3-0-5】勝率20.0%、複勝率50.0%と上位2頭は半々といった情勢。4番人気が【2-2-1-5】勝率20.0%、複勝率50.0%なので、おおむね上位4頭が中心を担う。
とはいえ、7番人気【1-1-1-7】勝率10.0%、複勝率30.0%など人気薄の激走もちらほら。ガチガチのGⅠとはいえず、候補選びは慎重に進めたいレースだ。

3000mも走るんだから、枠の影響はそうないだろうと思われがちだが、菊花賞の1枠は【0-0-0-20】と全敗。5番人気以内も5頭含まれており、気にすべきデータだろう。
長距離の最内枠はプレッシャーを長い時間かけ受けるため、3歳若駒にとって嫌気を差しやすいのではないか。また、包まれるのを嫌い、ポジションを狙うと、折り合いが難しくなる。3000m戦では欠かせない要素だ。
とはいえ、2枠が【4-2-0-14】勝率20.0%、複勝率30.0%と好成績をあげており、悩ましい。一概に内枠はダメとはいえない。距離ロスを抑えるイン追走は好走には必要だろう。一方で7枠が【3-1-4-21】勝率10.3%、複勝率27.6%と好成績をあげており、外からポジションを狙いやすいという側面もみえる。
問題は過去10年で2枠と7枠で7勝、3枠、6枠、8枠が各1勝、1枠、4枠、5枠が0勝という偏りにある。なぜこうなるかは説明しようがないが、3000m戦のイメージ以上に枠のバイアスがある点は最後の決断を前に振り返りたい部分だ。
ラスト一冠にもっとも近いのは
前哨戦の勝ち馬は神戸新聞杯のエリキングが登録してきた。その2着はショウヘイ、3着はジョバンニと春の既成勢力が上位を占めた。
セントライト記念は2着ヤマニンブークリエ、3着レッドバンデが登録。こちらは青葉賞で敗れ、ダービーに出走できなかった馬たち。その力差はどれほどあるのか。これも難しい設問のひとつだ。

クラス別成績では前走GⅡが【8-7-6-91】勝率7.1%、複勝率18.8%。やはり夏を経たラスト一冠は前哨戦の重要性が高い。まずはここから検討しよう。

前走神戸新聞杯は【4-3-4-52】勝率6.3%、複勝率17.5%。その着順内訳は1着【2-0-2-3】勝率28.6%、複勝率57.1%、2着【1-2-1-5】勝率11.1%、複勝率44.4%、3着【1-1-0-7】勝率11.1%、複勝率22.2%と着順なりの成績を示す。4着以下は【0-0-1-37】。権利を獲れないと厳しい。
神戸新聞杯勝ち馬のうち、ダービーからの臨戦だったのは【2-0-1-2】。そのうちダービー4着以下は【0-0-1-1】。ダービー5着エリキングはやはり微妙。神戸新聞杯勝ち馬といってもサトノダイヤモンドやコントレイルとは一緒にできない。
そうなると、やはりダービー3着、神戸新聞杯2着のショウヘイだろうか。母の父は三冠馬オルフェーヴル。2200m以上は1着→3着→2着であり、長距離をこなす可能性は高い。

前走セントライト記念は【4-3-2-35】勝率9.1%、複勝率20.5%。2着馬【1-1-2-3】勝率14.3%、複勝率57.1%、3着馬【0-1-0-7】複勝率12.5%なので、2着ヤマニンブークリエが優勢だ。
なお、2着馬7頭の2走前はすべてダービー。条件戦経由でセントライト記念2着は過去10年ではいない。いいかえれば、春の既成勢力相手に2着に入ったヤマニンブークリエの実力は評価すべきではないか。
母系はワンオブアクラインなので、ヤマニンサンパ、ヤマニンサルバム、ヤマニンウルス、ヤマニンアルリフラなどの近親であり、ヤマニンチェルキは先日、東京盃を制した。この勢いに乗り、大仕事を成し遂げたい。父キタサンブラックが菊花賞を勝ってちょうど10年が経つ。
前走条件戦は距離に注意。前走2000m未満【0-0-0-21】、2200m【1-2-4-7】勝率7.1%、複勝率50.0%、2200m超【0-0-0-18】で2200m経由だけが結果を残した。阿賀野川特別を勝ったアマキヒ、阪神1勝クラスを勝ったアロンディ(抽選対象)、みんな大好き日本海Sの勝ち馬ゲルチュタールが候補に残る。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『もう一つの引退馬伝説2 関係者が語るあの馬たちのその後』(マイクロマガジン社)に寄稿。
《関連記事》
・【菊花賞】過去10年のレースデータ
・川田将雅が中距離で無双状態、武豊騎手は重賞で複回128% 現役最高の京都巧者を種牡馬、騎手ごとに徹底検証
・芝長距離で複勝率70%超、京都芝重賞は単回収率145% C.ルメール騎手のプラス条件、マイナス条件
