【秋華賞】「前哨戦で負けたオークス5着以内馬」は複勝回収率134% データで導く穴馬候補3頭
鈴木ユウヤ

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データで見る「穴候補3頭」
今週日曜の京都メインは秋華賞。牝馬三冠の最終戦だ。今年はオークス馬カムニャックが1頭抜けた人気になりそうで、桜花賞馬エンブロイダリーがこれに続き、想定3番人気以下は大混戦という情勢だ。
その混戦を抜け出し、馬券圏内に入ってくるのはどの馬か。様々な切り口のデータを駆使して3頭の穴候補を導き出した。
本題に入る前に軽くデータ上の前提を。秋華賞といえばブラックエンブレムが勝った2008年に3連単1098万馬券が飛び出すなど、かつて大波乱もあったレース。ただ、ここ10年では11番人気以下が【0-0-0-71】、連対馬20頭のうち19頭が5番人気以内と、すっかり平穏な決着が続いている。
穴を狙うにせよ振り回しすぎは得策と言えない。「中穴」くらいの馬を的確に拾うイメージで臨むのがよさそうだ。
「オークス5着以内馬」は前哨戦で負けても見限るな パラディレーヌ
まず1頭目はパラディレーヌ。春はフラワーC2着からオークスでも4着と善戦したが、秋始動戦のローズSで8着に敗れて人気をやや後退させる見込みだ。

「ひと夏越しても結局オークス時の力関係がおおむね維持される」というのが秋華賞の基本傾向。過去10年で「同年オークスの5着以内馬」は【9-4-4-15】複勝率53.1%であり、同6着以下【0-2-3-56】同8.2%や、オークス不出走馬【1-4-3-70】同10.3%を圧倒している。なお、2016年にオークス不出走馬ワンツースリーもあるが、この年はオークス馬シンハライト、2着馬チェッキーノがどちらも故障で不在だった。
その「オークス5着以内馬」のうち、パラディレーヌのように前哨戦(※紫苑S、ローズSとする)で負けた馬に限っても【1-3-1-5】で複勝率50.0%、複回収率134%の好成績。オークスの上位馬はステップレースの負けで見限らない方がいい。
パラディレーヌのローズSを振り返ると、まずスタートの出遅れが痛かった。すぐさま追って中団まで挽回したが、1000m通過56秒台のハイペースで序盤に他馬より余計に脚を使ったわけで、最後に苦しくなるのは当然の帰結。それに直線では詰まるシーンもあった。悲観は一切不要だ。
京都は外回りとはいえ3戦して【2-0-1-0】の好成績。能力はオークスで証明した通り。ゲートさえ決まれば巻き返せる。
ローズS組は「少キャリアでの好走馬」が穴候補 セナスタイル
2頭目はセナスタイル。母ヌーヴォレコルトは14年のオークス馬という良血だ。ローズSで上がり最速の3着に入り、優先出走権を獲得して参戦する。

秋華賞における前走ローズS組の成績は【1-3-5-47】複勝率16.1%、複回収率48%(※過去10年)で、一見してよくはない。しかし数字を下げているのは中京代替だった4年間の【0-0-1-18】と、ローズS6着以下の【0-0-1-20】。「阪神開催のローズS5着以内馬」は【1-3-3-15】複勝率31.8%、複回収率100%と及第点だ。
中でも「キャリア6戦以下」とあまり使いこまれていない馬なら【1-2-2-4】複勝率55.6%、複回収率172%までアップする。少ないキャリアでローズSを好走してきた馬は要警戒だ。
今年はテレサ(キャリア6戦)とセナスタイル(3戦)の2頭が該当するが、よりフレッシュなセナスタイルに注目。前走はハイペースを後方に構えて展開が向いたとも言えるが、同時に直線はスムーズさを欠き、二度三度と進路を切り替える場面もあった。
2着テレサとの比較で言えば、1ハロンの距離延長に不安がないのはコチラ。春の既成勢力を脅かすとしたらこの馬だ。
京都芝2000mで複勝率6割の鞍上が心強い エリカエクスプレス
最後はフェアリーSの勝ち馬エリカエクスプレス。桜花賞1番人気馬だが、直近の2戦連続2桁着順もあって今回は評価をガクっと落とすことになりそうだ。鞍上に武豊騎手が想定されている。

この武豊騎手が京都芝2000mにめっぽう強い。過去3年(=リニューアルオープン以降)の騎乗成績は【9-4-2-10】複勝率60.0%、複回収率160%。今回のように他騎手から乗り替わるケースでも【7-2-1-6】同62.5%、複回196%と圧倒的な成績を残している。自他ともに「庭」と認める京都で、手綱捌きが冴えわたっている。
あとは馬自身の問題だが、桜花賞は雨の影響で外伸びになった馬場が災いしたものだし、オークスは距離が長すぎた。
京成杯AHの大敗も、休み明け、古馬牡馬58キロ相当の重いハンデ、2桁馬番が揃って9着以下に沈んだ内枠有利のレースで11番枠など敗因は色々ある。そもそもエピファネイア×母父ガリレオで、どちらかといえば消耗戦に強いタイプ。開幕週の高速馬場で1分31秒台前半の決着になると適性外だったように思う。
フェアリーSを勝った時のように35秒台の上がりで粘るようなペース配分に持ち込めれば一発あっていい。その点で、京都内回りという舞台設定は悪くない。
《ライタープロフィール》
鈴木ユウヤ
東京大学卒業後、編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、Xやブログ『競馬ナイト』で発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。
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