【秋華賞】ハイペースに強い「Graustark=His Majesty」の血 傾向合致の注目2頭
坂上明大

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傾向解説
3歳牝馬三冠の最終戦・秋華賞は牝馬三冠で唯一の小回りコースでのGⅠレース。また、京都競馬場改修工事の影響で2021~2022年は阪神芝2000mを舞台に行われましたが、一昨年からは京都芝2000mに舞台を戻しての開催となっています。本記事では桜花賞やオークスとの違いを含めて、秋華賞のレース傾向を整理していきます。
秋華賞はハイペースの消耗戦が基本。過去10年のうち、京都開催の8年間で後傾ラップを刻んだのは3度のみで、昨年も大逃げになったとはいえ前後半1000m57.1-60.0の前傾2.9秒を計時しました。
京都開催時は前有利の意識が強過ぎるのか、先行争いが苛烈になりやすい傾向にあります。そのため、京都開催直近8回で、初角5番手以内から馬券圏内に粘り込んだのは2着1回、3着3回の4頭のみ。いかに前半で脚をタメられるかが勝敗を分けるポイントとなっています。

<初角番手別成績>
5番手以内【0-1-3-22/26】
勝率0.0%/連対率3.8%/複勝率15.4%/単回収率0%/複回収率49%
6番手以下【8-7-5-34/54】
勝率14.8%/連対率27.8%/複勝率37.0%/単回収率52%/複回収率101%
※10番人気以内、過去10年のうち京都開催だった8回
血統面ではブライアンズタイム、グラスワンダー、Kingmambo、デインヒルなどハイペース適性の高い種牡馬たちが共通して持つGraustark=His Majestyの血に注目。特に同血脈のクロスを持つ馬は京都開催の直近8年間で5頭しかおらず、10番人気以内だったモズカッチャンとチェルヴィニアはどちらも3着以内に入っています。
また、上記クロスを持つ2013年3着馬のリラコサージュは15番人気という超人気薄での好走。日本の主流父系であるサンデーサイレンス系の勝率が牝馬三冠の中で最も低いのが秋華賞でもあり、春の2レースとは少々異なる適性が求められるレースです。

<Graustark=His Majesty内包馬>
該当馬【5-2-6-19/32】
勝率15.6%/連対率21.9%/複勝率40.6%/単回収率38%/複回収率105%
※10番人気以内、過去10年のうち京都開催だった8回
注目血統馬
前記の傾向に合う注目血統馬を2頭ピックアップしました。
☆カムニャック
3代母ダンスパートナー(1995年オークス、1996年エリザベス女王杯)に遡る名牝系に属し、母母ダンスオールナイトは芝1600~2000mで5勝、母ダンスアミーガは芝1400~1600mで5勝。本馬の半兄にはキープカルム(2025年しらさぎ賞)などがおり、ブラックタイド産駒の本馬はキタサンブラックと同じブラックタイド×サクラバクシンオーの組み合わせです。
ダンシングキイ牝系からは2016年8番人気3着カイザーバルが出ており、本馬は母母がGraustarkの6×5を持つ配合形。成長力にも優れ、牝馬三冠の中では秋華賞が最も向く舞台ではないでしょうか。
☆ケリフレッドアスク
母ディープインアスクはディープインパクト産駒ながら唯一の好走実績が新潟芝1000mでのもので、母父デインヒル譲りのスピード能力が持ち味です。繁殖牝馬としても優秀なスピード能力を仔に伝えており、本馬の兄姉にはファンタジスト(2018年小倉2歳S、京王杯2歳S)、ボンボヤージ(2022年北九州記念)、アスクワンタイム(2023年小倉2歳S)と3頭の短距離重賞勝ち馬がいます。
ドゥラメンテ産駒の本馬はサンデーサイレンスの3×3が利いており、距離はマイルから中距離がベター。Graustark=His Majestyの7×5を併せ持つため、ハイペース戦への適性はメンバー中屈指の一頭です。ただ、前走のような積極策で臨むと激流に飲み込まれそうなだけに、今回は位置取りがポイントとなりそうです。

《ライタープロフィール》
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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