【秋華賞】ショウナンパンドラとヌーヴォレコルトが内外分かれての激しい叩き合い 2014年をプレイバック
緒方きしん

ⒸSPAIA
春の実績馬vs新興勢力の戦い
今週は秋華賞が開催される。過去にはメジロドーベルやダイワスカーレット、ファインモーションらが制した牝馬三冠の最終戦。今回はそんな中から2014年の一戦をピックアップして当時のレースを振り返っていく。
2014年の3歳牝馬世代は、桜花賞、オークスで圧倒的な人気を集めたスターホースがいた。二冠牝馬ベガの孫、ハープスターである。
前年、新潟2歳Sで後の皐月賞馬イスラボニータらを置き去りにした末脚を武器に桜花賞は1.2倍で1着、オークスは1.3倍で2着と春クラシックを盛り上げた。
しかしハープスター陣営は凱旋門賞への挑戦を発表。札幌記念では当時GⅠ・5勝のゴールドシップとの熱いマッチレースを制し、凱旋門賞でも日本馬最先着の6着と好走した。
一方、秋華賞は「ハープスター不在」の一戦に。春のクラシック組が勝つのか、それとも新興勢力が一気のGⅠ獲りを見せるのか。注目が集まっていた。
ファンは1番人気、2番人気には春のクラシック組を支持した。1番人気ヌーヴォレコルトはオークス馬。チューリップ賞ではハープスターの2着、桜花賞でもハープスターの3着と悔しい思いをしてきたが、オークスで遂に逆転を見せた。さらに前哨戦ローズSでは完勝を見せ、単勝オッズ1.5倍と圧倒的な人気を集めた。
2番人気は2歳女王のレッドリヴェール。阪神JFではハープスターを撃破し、桜花賞でも2着と好走した。その後はオークスをパスしてダービーに出走して12着に敗れたが、それでも世代上位の素質は間違いなく、こちらは単勝7.2倍という評価だった。
3番人気のショウナンパンドラは、これがGⅠ初参戦。これまで8戦して全て掲示板内という安定感、ステイゴールドの近親という血統的な期待値も高い1頭だった。前走の紫苑Sはレーヴデトワールの末脚に屈したものの、ファンからの期待は大きかった。ただし単勝オッズは10.1倍と人気2頭からは離されていた。
ヌーヴォレコルト、レッドリヴェールの鞍上は岩田康誠騎手と福永祐一騎手。ショウナンパンドラは当時20代の若手・浜中俊騎手とのコンビだった。
ショウナンパンドラが内から鋭く伸び春の実績馬を撃破
レース直前にパシフィックギャルが除外となり17頭での出走となった秋華賞。ゲートが開くとすぐに各馬の激しいポジション争いが始まった。
好スタートを切ったヌーヴォレコルトだったが、鞍上の岩田康誠騎手が抑える仕草を見せ、他馬を行かせる。ショウナンパンドラもやや抑えて内に入り込もうという動きを見せた。
逆に外枠からペイシャフェリス、リラヴァティらが押して前に。8枠16番オメガハートロックは後方から内側に切り込んだ。人気の一角レッドリヴェールはスタートで後手を踏み、後方からの競馬となっていた。
隊列はすぐに縦長に。逃げるペイシャフェリスから少し離れたところに大きな2番手集団が出来上がる。そこから6馬身ほど離れた後方集団を引っ張るのがショウナンパンドラ、その後ろにヌーヴォレコルトが付けた。ペースは緩むことなく、力が試される展開となっていく。
完全に二分された先行集団と後方集団。いつ後方勢が仕掛けるのか。その後方集団を引っ張るショウナンパンドラの鞍上、浜中騎手の手は動かない。しびれを切らしたように最初に仕掛けたのは四位騎手とアドマイヤビジン。レッドリヴェールと福永騎手もまだ仕掛けない。
そして3、4コーナー中間、遂にショウナンパンドラ、ヌーヴォレコルトがじわりと先行集団を捉え始める。先頭はペイシャフェリスが逃げていたが、残り600mで一気に馬群がひとかたまりになっていく。
タガノエトワールが外からよく伸びる。それを追うのがヌーヴォレコルト。ヌーヴォレコルトはさらに外へ持ち出すと、手応え抜群で伸び始める。しかし内では、いつの間にかショウナンパンドラが3番手付近までするすると上がっていた。
そのままショウナンパンドラはリラヴァティを交わすと、ラチ沿いからグングンと伸びていく。外からはタガノエトワール、そしてヌーヴォレコルト。後方からはレッドリヴェールやサングレアルが伸びるも届きそうにない。
先頭を走る3頭のうち、一番先にタガノエトワールの脚がいっぱいに。ヌーヴォレコルトが最後まで脚を伸ばしたが、内ラチから鋭く伸びたショウナンパンドラとの差をクビ差詰めることはできなかった。最後までショウナンパンドラが粘り切り、見事にGⅠ初制覇を果たした。
勝ったショウナンパンドラは3番人気とはいえ、1番人気ヌーヴォレコルトが大きな支持を集めていたため、単勝は10.1倍と高配当。むしろ2着にヌーヴォレコルトが来た馬連配当は6.3倍と、単勝配当を下回った。
3着タガノエトワールとのワイドは3番人気、4番人気の組み合わせも13.7倍とオイシイ馬券となった。
母ヌーヴォレコルトのセナスタイルが岩田康誠騎手で出走予定
ショウナンパンドラは翌年、ジャパンカップでゴールドシップ、ラブリーデイら強豪古馬を撃破。最優秀4歳以上牝馬に選出され、牡牝混合戦、牝馬限定戦問わずの活躍を見せた。
ヌーヴォレコルトはエリザベス女王杯で2年連続2着など安定して活躍。さらに渡米すると、レッドカーペットハンデ(GⅢ)を制するなど、世界を相手に活躍した。引退後はFrankelやKingman、Sottsassといった世界レベルの名種牡馬と交配され、これからも牝系を広げていきそうだ。
そして今年の秋華賞には、そのSottsass×ヌーヴォレコルトの仔・セナスタイルが出走予定。その鞍上は、母ともコンビを組んでいた岩田康誠騎手である。
ローズSでは同世代のオークス馬カムニャックに遅れをとったものの、デビューして3戦2勝3着1回。将来が楽しみな一頭だ。母の勝てなかった秋華賞でその雪辱を果たすことができるか。注目したい。
《ライタープロフィール》
緒方きしん
札幌生まれ、札幌育ちの競馬ライター。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、ダイワスカーレット、ディアドラ、ドウデュース。
《関連記事》
・【秋華賞】過去10年のレースデータ
・【秋華賞】カムニャックは“勝利なし”データを打ち破れるか エンブロイダリーの前例なき挑戦も注目
・川田将雅が中距離で無双状態、武豊騎手は重賞で複回128% 現役最高の京都巧者を種牡馬、騎手ごとに徹底検証
