【サウジアラビアRC】“複勝率50%超”新馬組チュウワカーネギーが優勢 ゾロアストロ、アスクエジンバラらの素質にも注目
勝木淳

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素質馬揃いの東京芝1600m
11日に東京競馬場でサウジアラビアRCが開催される。東京芝1600mの2歳重賞という設定を目にするだけで、将来有望な精鋭が集う重賞だと確信できる。2歳秋にこの舞台のハイレベルな戦いを勝ち抜く意義は大きい。
当レースは、2020年ステラヴェローチェ、22年ドルチェモア、24年アルテヴェローチェと隔年で須貝尚介厩舎が勝利を重ねる。2歳戦に定評がある厩舎には仕上げのノウハウが蓄積しており、厩舎力という観点で予想するのもよさそうだ。
ちなみに今年の須貝厩舎の2歳馬も9月終了時点で、マルガが新馬を勝ち、グロリアスマーチが未勝利脱出、ショウナンガルフが新馬、重賞連勝と楽しみな若駒ばかり。ショウナンガルフは札幌2歳Sを勝ったため、当レースに出走馬を送っていないが、隔年の法則通りなら注目は来年だろう。マルガは今月のアルテミスSを予定しており、あっさり突破なら、姉ソダシに続く白毛伝説の続編がみられるかもしれない。
さて、ここからは重賞格時代を含めた過去10年分のデータを使用して、今年のサウジアラビアRCを展望していく。

人気別成績では1番人気【3-4-1-2】勝率30.0%、複勝率80.0%、2番人気【3-3-2-2】勝率30.0%、複勝率80.0%、3番人気【3-0-3-4】勝率30.0%、複勝率60.0%と上位3頭は互角。さすが素質馬ぞろいの出世レースだ。上位の層は分厚く、なかなか人気薄が入り込む余地はない。基本、下馬評通り、素質の高さを評価しないといけない。

キャリア別成績もレースコンセプトの通り、1戦組が【8-8-3-14】勝率24.2%、複勝率57.6%と圧倒的。各地で行われた夏の新馬戦を確かなレースぶりで突破してきた馬には逆らえないか。新馬敗退、未勝利勝ちの2戦組となると、【1-1-4-28】勝率2.9%、複勝率17.6%と一気にトーンダウン。キャリア3戦以上で勝利したのは同4戦で勝った15年ブレイブスマッシュのみ。
スケールならゾロアストロも
今年の前走新馬勝ち組は新潟芝1400mのエコロアルバ、阪神芝1600mチュウワカーネギー。コスモス賞を勝った福永祐一厩舎のアスクエジンバラとの力差比較が予想のカギを握りそうだ。

前走新馬勝ち組の距離別成績をみると、やはり同距離の1600mが【5-6-3-7】勝率23.8%、複勝率66.7%と目立つが、1600m未満からの延長も【2-1-0-4】勝率28.6%、複勝率42.9%と捨て置けない。前者はチュウワカーネギー、後者はエコロアルバが該当。少し短い距離で速めの流れを経験したことが重賞で生きるという見立てもできる。
ちなみに前走新潟芝1400m新馬は【0-1-0-1】、阪神芝1600m新馬が【1-1-0-2】で、勝った1頭は20年のステラヴェローチェ。新馬を稍重1:36.4、2着とはタイム差なしで勝ち上がり、不良馬場のサウジアラビアRCを3番人気で突破した。
チュウワカーネギーは良馬場で逃げて1:36.2。前後半800m51.0-45.2の超スローだったが、ラスト600mは10.9-10.9-11.4、33.2と速い。逃げて10秒台を続けて記録したのは評価できる。同馬はモーリス産駒らしい500キロを超える雄大な馬体の持ち主。将来を見据え、控える可能性があるものの、小細工せずに再度主導権を握るのもありか。

前走未勝利組は【2-0-5-19】勝率7.7%、複勝率26.9%。前走競馬場の内訳をみると、中山は【0-0-0-7】と厳しいが、札幌【1-0-1-2】勝率25.0%、複勝率50.0%、東京【1-0-0-0】、新潟【0-0-3-4】複勝率42.9%あたりは買える。やや凡走馬を出しているのは気になるが、新潟組のガリレア、ゾロアストロなどは候補に入る。
ゾロアストロの未勝利戦は最後600m11.0-10.5-11.5、33.0で2馬身半差をつけた。スローでも大きな着差をつけたのはスケールを感じる。母の母ナイトマジックはドイツオークス、バーデン大賞を勝ったドイツの名牝。近親グレートマジシャンはダービー3番人気4着であり、器の大きさを感じさせる馬だった。
最後に前走コスモス賞組は【0-1-0-1】。17年ステルヴィオはコスモス賞1着からここで2着に入った。その次走は朝日杯FS2着であり、アスクエジンバラも好走できれば、先へつながる。持続力勝負に持ち込みたい。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 純白の奇跡』(ガイドワークス)に寄稿。
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