【アイルランドT】「前走関屋記念」は複勝率55.6% カナテープ、ボンドガールの再ワンツーも視野
勝木淳

ⒸSPAIA
人気順とは限らず、混戦
今年から府中牝馬Sが6月に移り、マーメイドSを受け継ぐ形になった。府中牝馬Sに別れを告げたアイルランドトロフィーはエリザベス女王杯のステップレースという地位を引き継いでいく。
独立は言い過ぎだが、かつてアイルランドトロフィーは2016年まで秋の東京芝2000mのオープン特別、2007年まで3勝クラス芝1600mだったことを思い起こせば、単独のレース名としては9年ぶりのレース名復活でもある。
ここからは同条件の2015~16年府中牝馬S、2017~2024年アイルランドT府中牝馬S、計10回分のデータを使用して、今年のアイルランドトロフィーを展望する。

人気別では、エリザベス女王杯を目指す古馬A級牝馬が出走するわりに1番人気【2-3-2-3】勝率20.0%、複勝率70.0%、2番人気【1-2-2-5】勝率10.0%、複勝率50.0%、3番人気【1-0-1-8】勝率10.0%、複勝率20.0%と決してガチガチでもない。
10番人気以下【2-1-1-46】勝率4.0%、複勝率8.0%など伏兵が割って入ることもある。牝馬の休み明けは状態把握が難しく、いざやってみたら案外走らなかったという場面も想定できる。

一方、年齢は4歳【5-5-7-41】勝率8.6%、複勝率29.3%、5歳【5-4-2-50】勝率8.2%、複勝率18.0%と主力2世代に集中している。ほかは6歳【0-1-1-14】複勝率12.5%ぐらいなので、人気とは違い、年齢でかなり絞れるレースだ。
東京得意の関屋記念1、2着馬が中心
今年のメンバーはヴィクトリアマイル7着アドマイヤマツリ、同13着サフィラのほか、夏の関屋記念を勝ったカナテープ、6月の府中牝馬S1着セキトバイースト、京成杯AHの勝ち馬ホウオウラスカーズ、関屋記念2着ボンドガールあたりが中心。勢いを感じる馬たちが多いものの、GⅡとしてはやや小粒な印象だ。

上位人気がイメージほど走らないというデータの通り、前走GⅠ組は【1-1-5-17】勝率4.2%、複勝率29.2%と複勝率はそこそこだが、連対以上となると、やや心もとない。前走ヴィクトリアマイルは【0-0-4-14】複勝率22.2%で、好走馬が出ているのは3、4着【0-0-3-0】、10着以下【0-0-1-6】複勝率14.3%から。
7着アドマイヤマツリはデータ上は推せない。東京コースは未勝利戦から3連勝があるので問題はないかもしれないが、上級条件で春の中山、福島を連勝している点は引っかかる。早めに抜け出し、目標にされる場面も考えておきたい。

前走GⅢは【4-5-5-58】勝率5.6%、複勝率19.4%で、夏場に稼働した馬たちが勢いよくGⅡで好走するイメージでいい。目立つのは同じ左回りの関屋記念【2-2-1-4】勝率22.2%、複勝率55.6%、同舞台のエプソムC【0-1-0-3】複勝率25.0%(ただし、今年から施行時期が5月に変更)。ほか、中山の京成杯AHは【0-0-1-7】複勝率12.5%と分が悪く、クイーンSは【2-2-3-21】勝率7.1%、複勝率25.0%と参戦数が多い。
前走関屋記念組は勝ち馬の参戦こそないが、2、3着【1-1-0-0】、6~9着【1-1-1-1】なので、ひと桁着順ならチャンスはある。カナテープは6月の府中牝馬S2着を筆頭に、東京芝1800m【4-2-1-1】と得意。このコースで出世してきたといっても過言ではない。目標はエリザベス女王杯ではなく、このレースだろう。落とせない一戦と踏んだときの堀宣行厩舎は味方につけないといけない。
データを素直に受け取れば、ボンドガールも勝負圏内。春のヴィクトリアマイルはスタートから流れに乗れず16着と大敗を喫したが、2着だった関屋記念では馬群に入って競馬ができており、以前の気難しさは解消されつつある。新馬を勝ってからは【0-6-1-3】と善戦ばかりだが、2勝目が近い予感はある。

最後に絞りにくい前走クイーンS組について。着順の内訳をみると、10着以下は【0-0-0-5】だが、1、2着【2-0-1-5】、3着【0-0-0-5】、4着【0-1-0-0】と一概に好走馬を買えともいえない。
また、6~9着【0-1-2-4】複勝率42.9%と敗退組も悪くない。おそらく、1コーナーまでの距離が短く、小回りの札幌芝1800mから東京に変わり、適性の違いが結果に出ているのではないか。
クイーンS4着ライラックは過去このレース3着→13着。時計がかかる馬場に強く、小回りの差し馬といったイメージ。東京替わりでの前進は微妙だろう。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 純白の奇跡』(ガイドワークス)に寄稿。
《関連記事》
・“イン突き”の岩田康誠騎手は内枠で単回収率900%超え GⅡで妙味のある騎手、厩舎を東大HCが調査
・芝1800mで“買える”種牡馬、騎手、調教師を調査 堀宣行調教師は「外国人騎手」起用がポイント
・月間15勝の戸崎圭太騎手が首位守る 川田将雅騎手は月間重賞3勝の大活躍【9月終了時の騎手リーディング】
