【毎日王冠】3歳オグリキャップが重賞6連勝の快進撃 古馬撃破の1988年をプレイバック

緒方きしん

プレイバック1988年 毎日王冠,ⒸSPAIA

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“中央重賞・5連勝中”3歳オグリが参戦

今週は毎日王冠が開催される。過去にはサイレンススズカやグラスワンダーが制した、豪華メンバーの集まる“スーパーGⅡ”。今回はそんな中から1988年の一戦をピックアップして当時のレースを振り返っていく。

1988年の競馬界は、アイドルホース誕生に沸き上がっていた。笠松から移籍したオグリキャップである。

地元で圧倒的な戦績を残し中央移籍を果たすと、初戦で重賞ペガサスSを制覇。その後も毎日杯、京都4歳特別、NZT、高松宮杯と芝マイル〜2000mの重賞を連勝した。

夏を越して、天皇賞(秋)への前哨戦に選ばれた毎日王冠では、実力派古馬との対決を迎える。ここを勝てば重賞6連勝と、当時のJRA重賞連勝記録に並ぶ。直近3走は単勝オッズ1.3倍以下だったオグリキャップだが、この日は単勝1.7倍。それだけのメンバーが揃っていた。

2番人気に推されたのは、牝馬のダイナアクトレス。前年の毎日王冠勝ち馬であり、その後のジャパンCでも3着と日本馬最先着を果たした強豪である。そのジャパンCでは 1着〜9着のうち、同馬以外はすべて外国馬という孤軍奮闘ぶりが印象的であり、年が明けてからも3戦2勝、2着1回と抜群の安定感を誇っていた。

3番人気のボールドノースマンはデビューから4連勝でオープンクラスの仲間入りを果たした素質馬。好位から鋭い末脚を繰り出す競馬を武器に、前走の青函トンネル開通記念ではシリウスシンボリ、ウインドストースらを相手に2馬身差で快勝していた。

4番人気は1985年のダービー馬シリウスシンボリ。欧州への長期遠征後は戦績を落としたが、直近2走は2着、4着と復調気配を見せ、鞍上の加藤和宏騎手とともにここでも上位進出を目指す。

その他、レジェンドテイオー、ランニングフリー、フレッシュボイスなど、多彩な面々が顔をそろえた。

スロー展開を後方大外から差し切る

レース前に事件が起きる。暴れたシリウスシンボリがレジェンドテイオーを蹴りつけたことで、レジェンドテイオーは発走除外に。逃げ馬である同馬が不在となったことで、展開への影響は大きく、波乱含みのゲートインとなった。

スタート後、内のマイネルダビテ、外のトウショウサミットの鞍上が促して前にポジションを取る。先行勢は縦長の隊列となったが、中団以降は団子状態に。

ダイナアクトレスは中団から内に2頭を置いて外目を追走。オグリキャップはさらに後方の大外につける。中団の馬群は横に広がり、向正面でも駆け引きは続いた。

残り800m付近で仕掛けたのは、前年覇者のダイナアクトレス。鞍上・岡部幸雄騎手のアクションに応えて外からスルスルとポジションをあげると、先頭集団が早くも横に広がる。大外を回るダイナアクトレスの後ろに、オグリキャップの姿があった。

直線では馬群が横一列に広がり、オグリキャップは1番外へと持ち出される。内ではランニングフリーが粘り、後方からはシリウスシンボリが脚を伸ばすが、それを問題ともせず、軽々と先頭に立つと、そのまま押し切り勝ち。2着にはシリウスシンボリが入った。

前半1000m通過61.5秒というスロー展開を後方大外から差し切る堂々たる競馬。「これは強い」「オグリの強さは本物だ」。ファンは高揚感とともに、輝かしいヒーローの登場に拍手を送った。

終わってみれば単勝170円、枠連930円の平穏決着。 2番人気のダイナアクトレスは5着に敗れたとはいえ、期待の超新星とダービー馬によるワンツーであり、実力馬がしっかりと強さを見せた一戦であった。

その後もオグリキャップは天皇賞(秋)2着、ジャパンC3着を経て、暮れの有馬記念でGⅠ初制覇。翌年以降も第一線で走り続け、ラストランの有馬記念制覇までファンを熱狂させた。

一方、ダイナアクトレスは引退後に繁殖牝馬として活躍。産駒ランニングヒロインからはスクリーンヒーローが誕生し、そこからモーリスやゴールドアクター、先日のスプリンターズSを制したウインカーネリアンが現れ、今なおその血を広げている。

オグリキャップ自身も父系として血を伝え、今春にはひ孫であるフォルキャップが種牡馬入りを果たした。オグリキャップからノーザンキャップ、クレイドルサイアーと繋がる血にも注目が集まる。

今年は3歳馬サトノシャイニングが参戦

オグリキャップの毎日王冠制覇は、現条件では初めて3歳馬が勝利した例となった。今でこそ、直近6年で5勝を挙げるなど3歳馬の活躍が目立つが、その始まりは1988年のオグリキャップだった。

今年は3歳世代からサトノシャイニングが参戦する。3年連続の3歳馬による勝利となるのか、そしてそこからのアイドルホースへの道が開けるのか。楽しみにその走りを見守りたい。

《ライタープロフィール》
緒方きしん
札幌生まれ、札幌育ちの競馬ライター。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、カンパニー、ドウデュース。

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