【毎日王冠回顧】レーベンスティールが重賞4勝目 父が届かなかった秋の盾獲りに高まる期待

勝木淳

2025年毎日王冠レース結果,ⒸSPAIA

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得意舞台でポジション競馬を制す

本番まで中3週になった毎日王冠はレーベンスティールが制し、重賞4勝目。2着ホウオウビスケッツ、3着サトノシャイニングで決着した。

秋の東京開幕週は心配された雨の影響をほぼ受けずに進み、芝は速い時計が出る内先行優位の状態だった。昨年の天皇賞(秋)で先手を奪い3着だったホウオウビスケッツは、その前走毎日王冠も2着。単騎でいければしぶとい。

ほかに目立った先行型もいない11頭立てとなれば、外枠でも先手をとるのも苦にならない。序盤600m34.8は若干突っ込んで入ったものの、マイペース。中盤で11.9-11.9とラップを落としつつ、ラスト600mは11.2-11.1-11.4、33.7の上がり勝負に持ち込めた。

一方、ライバルたちもホウオウビスケッツの粘り強さは織り込み済みで、サトノシャイニングやレーベンスティールが前半から追走姿勢を崩さない。結果は4コーナー3番手以内が馬券圏内を独占しており、典型的なポジション競馬になった。

実績馬たちに好ポジションを独占されては、後ろはなすすべなし。直線でポジションと脚力を逆転するのは難しい。なかでも勝ったレーベンスティールは残り400mまで手応えよく追走しており、余力十分。上がり600m33.3で抜け出した。これで重賞は4勝目。その距離は1800m2勝、2200m2勝とすべて非根幹距離という戦歴は興味深い。


血統を巡る縁

父リアルスティールは全4勝を1800mであげており、毎日王冠も2017年に制した。当時は約7カ月半の休養明け。4勝のうちもっとも間隔が短かったのは中3週だったドバイターフで休み明けに強かった。1800mを得意とし、休み明けで走る傾向は父によく似ている。

残るは2000mの克服。父は天皇賞(秋)と皐月賞の2着が最高であり、国内GⅠに手をかけたものの、タイトル奪取とはならなかった。レーベンスティールには父の忘れ物をつかんでほしい。

また、母の父トウカイテイオーはいつ目にしても熱い。トウカイテイオーも天皇賞(秋)は7着止まり。休み明けで折り合いを欠き、メジロパーマーやダイタクヘリオスが演出する激流に飲み込まれてしまった。

1993年の暮れに1年ぶりの長期休養明けで有馬記念を勝って感動を呼んだように、テイオーもまた休み明けに縁がありレーベンスティールに通ずるものを感じる。

血統は巡る。ぜひともレーベンスティールには天皇賞(秋)に挑戦してほしい。中3週のレース間隔をクリアできるか。実力は証明済みだけに、残るは自身の状態の問題だろう。


見直したい4着ディマイザキッド

2着ホウオウビスケッツはマイペースでの強さはみせた。序盤でサトノシャイニングが突っかかる形になり、少し速いペースを刻んだ分、中盤で息を整えざるを得ず、結果的に上がりの速い瞬発力勝負になった。本来は持続力勝負に強く、一定のラップをゴールまで続ける戦法がベストであり、今回は若干ペースを落としすぎた感もある。

ただ、昨年の天皇賞(秋)以降は番手もしくは好位で抑える競馬を試し、抑制の効いた逃げはその成果ともいえる。春の成績を踏まえれば、マイペースの逃げでもっとも力を発揮できる。今後も迷いなく逃げてほしい。以前ほどの前進気勢がなくなり、荒々しさが薄まったことがどう出るか。

3着サトノシャイニングはホウオウビスケッツとは対照的に前半から折り合いに苦労し、難しい面をみせた。以前から前進気勢の強さは目立っており、落鉄した東京スポーツ杯2歳ステークスで逃げ、次走きさらぎ賞で差すなどレーススタイルの定まらなさは根源に気性がある。とはいえ、キャリア5戦の3歳馬であり、若さの証拠でもある。課題があるからこそ、強くなれると前向きに受けとろう。

だが、課題が存在することは事実であり、これをどう乗り越えていくのか。距離を短くするのか、馬の後ろで我慢を覚えさせるのか。いずれにしても今後の出走は課題克服に向けた模索のなかであり、馬券を買う側としてはそれを踏まえて判断したい。

4着ディマイザキッドは上がり最速33.2を記録。見どころはあった。スタートで遅れをとり、後方から進めたため馬券圏内には入れなかったが、脚力はこのレベルでも通用するだろう。見直したい一頭だ。


2025年毎日王冠レース回顧,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 純白の奇跡』(ガイドワークス)に寄稿。

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