【シリウスS】軌道に乗った大器テーオーパスワードに熱視線 ジンセイも好データ合致で4歳勢が主力
勝木淳

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データ上は5、6歳が優勢
2020年以降、9月に阪神開催があったのは2023年と今年の2度だけ。京都競馬場の改修工事と阪神のスタンド更新工事が行われた影響で、関西圏の競馬はスケジュールの変更が続いた。したがって、シリウスステークスも過去10年のうち阪神ダート2000m施行は6度しかない。
2015年以降の阪神ダート2000m全体のデータをみると、「前走中京ダート1900m」が【16-22-19-152】勝率7.7%、複勝率27.3%をマーク。シリウスSの記事とは一切関係ないが、京都ダート中距離や阪神ダート1800mと大きな差はない。前走距離では「1800m」より「1900m」の勝率が高く、スタミナ志向のコースでもある。ダートの猛者たちのなかでもスタミナに長けた馬たちに分があり、JRAのダート重賞でも貴重なひと鞍ともいえる。
一方で、ハンデ戦なので斤量が各馬の力差を埋めていく。阪神開催6回で1、2着がタイム差なしだったのは4回。手に汗握るゴール前の攻防が魅力だ。今回はは阪神6回分のデータを使用する。

1番人気【2-1-0-3】勝率33.3%、複勝率50.0%、2番人気【1-2-1-2】勝率16.7%、複勝率66.7%、3番人気【1-0-3-2】勝率16.7%、複勝率66.7%と上位3頭の成績がいい。4番人気が【0-0-1-5】複勝率16.7%なので、上位とは差がある印象だ。
上記の通りスタミナ優先というレースコンセプトが割とはっきりした重賞であり、買う側も人気を並べやすい。上位人気の顔ぶれがスタミナ型だった場合は、逆らわずに人気上位から入りたい。

年齢で目立つのは6歳【2-1-2-14】勝率10.5%、複勝率26.3%だが、出走頭数を踏まえれば5歳【2-3-1-21】勝率7.4%、複勝率22.2%と互角に近い。4歳は【1-0-3-10】勝率7.1%、複勝率28.6%と馬券圏内なら考えられる。
この3世代が強力な分、7歳以上は【0-1-0-16】複勝率5.9%と厳しい。5、6歳を中心に組み立てよう。
テーオーパスワードが暮れのGⅠへ
とはいえ、今年のメンバーでは平安ステークス(GⅢ)4着ジンセイ、直近2連勝中のテーオーパスワードなど4歳の勢いがいい。5、6歳ではブライアンセンス(5歳)、ホウオウルーレット(6歳)、メイプルリッジ(6歳)あたりが人気になりそうだ。

前走クラス別成績をみると、前走GⅢ組は【0-0-3-12】複勝率20.0%とやや苦戦傾向。ただし、前走平安Sは【0-0-2-3】複勝率40.0%で、4着以内なら【0-0-2-0】とオール馬券内。ジンセイは好走ゾーンに入るが、少し間隔があいた一戦でもあり、全開とはいかないようだ。
次に前走エルムステークスは【0-0-1-5】複勝率16.7%で、17年の3着ピオネロがエルムS7着から巻き返した。稍重のマーチステークスを勝ったブライアンセンスは適性がスピード寄りであり、距離延長がプラスにならない可能性はあるものの、雨が降れば狙う手もある。

前走オープン・リステッド【2-4-3-38】勝率4.3%、複勝率19.1%は馬券のカギを握りそうだ。
そこで距離別成績をみると、前走2000m未満の距離延長組が【2-3-2-37】勝率4.5%、複勝率15.9%で、そもそもコースの数が少ない2000m超の距離短縮組は【0-1-1-1】。メイプルリッジは短縮組に当てはまるが、約11カ月ぶりではさすがに推しにくい。

ということで延長組に注目してみる。1700m組は【0-0-1-7】複勝率12.5%で、それよりも1800m組【2-3-1-27】勝率6.1%、複勝率18.2%がよさそう。とはいえ、分母が大きいので絞らなければいけない。
そこで着順別の内訳を出すと、1着【1-3-0-4】勝率12.5%、複勝率50.0%と前走勝利が条件になる。夏の中京で名古屋城ステークスを勝ち、3勝クラスからの連勝を決めたテーオーパスワードが浮上する。
昨年はケンタッキーダービーに挑戦し5着に敗れたが、そこから立て直されて軌道に乗ってきた。2走前の中京ダート1900mの勝ち時計1:58.0は良馬場に限定すると、2020年シリウスSのカフェファラオ(1:57.8)や、22年シリウスSのジュンライトボルト(1:57.7)とそん色なし。どちらもGⅠ馬だ。
さらに「良馬場」の「条件戦」に限れば、20年白川郷ステークス(3勝クラス)のハギノアレグリアス(1:56.3)、18年インディアトロフィー(2勝クラス)のアイアンテーラー(1:57.7)に続く記録でもある。ここを突破し、得意の中京で行われるチャンピオンズカップ(GⅠ)に向かってほしい。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 純白の奇跡』(ガイドワークス)に寄稿。
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