【血統で見抜く新馬の力】祖母は名牝ブルーメンブラット 初戦から期待の良血馬がデビュー
山内崇敬

今週デビュー予定の注目新馬
出走する全馬が初出走となる「新馬戦」は、他のレースと予想のアプローチが全く異なる。調教で能力を見定める方法もあるが、実戦で同様の走りができるかは未知数だ。
従って、血統面からのアプローチが他のレースに比べて格段に有効となる。そこで当コラムでは血統のなかでも“牝系”にフォーカスして、今週デビュー予定の2歳新馬のなかからピックアップした2頭を解説。デビュー戦の展望はもちろんのこと、血統から想定できる潜在能力や将来性についても深掘りしてみたい。
9/20(土)中山5R・芝1600m スイープセレニティ

日本での牝祖は10代母セヴアイン。日本で長く繋がれてきたファミリーだ。祖母スイープトウショウは現役時に芝の中距離でGⅠを3勝した名牝として知られている。
ファミリーからはスイープトウショウ以外にも活躍馬が出ていて、近いところでは従姉妹のスウィープフィートが2024年のチューリップ賞を制覇。ほかにもスイープトウショウの半弟トウショウフリークがダート重賞で活躍を見せた。
5代母マーブルトウショウからトウショウボーイ、ダンシングブレーヴ、エンドスウィープ、ハーツクライと配合され、スピード性能の高さとパワーを受け継いでいる。トウショウフリークのようなダートでの活躍馬も出ているが、スイープトウショウの分岐は芝のパフォーマンスが高い傾向にある。また、成長力があるのも特徴の一つだ。
母スイープセレリタスはJRAの芝1400~1600mで4勝した実績馬。スピード性能の高さはファミリーの中でも上位で、先行して粘り切る競馬が得意だった。ハーツクライ産駒の出世するタイプである。
本馬はそのスイープセレリタスの初仔で、父にロードカナロアを迎えた。ロードカナロア×ハーツクライは牡馬であれば中距離以上に適性を持つ馬も多いが、牝馬であればロードカナロアの柔らかさを活かしてトロワゼトワルのように短距離で活躍する馬が多い。
本馬もどちらかと言えば短距離向きで、スピード感溢れる身体つきをしている。1600mがベストで、母同様に先行して粘り強さを見せるタイプだろう。16頭立てといきなり頭数は揃ったが、初戦から勝ち負けできるだけの素質の高さを持っている。
<血統から想定できる潜在能力>
・馬場適性:芝
・距離適性:1200~1600m/ベスト1600m
・能力:スピードS/瞬発力A/パワーS/持久力S
・同タイプ:スウィープフィート
・特徴:高いスピード性能/成長力○
※持久力=スピードの持続力
9/21(日)中山4R・ダート1800m サンラザール

日本での牝祖は3代母マイワイルドフラワー。同馬は繁殖として優秀で、2008年マイルチャンピオンシップ勝ち馬ブルーメンブラットを筆頭に、同じく2008年に北海道スプリントカップを勝利したジョイフルハートを輩出。孫にも小倉サマージャンプで2着と3着の好走経験があるアグリッパーバイオがいる。
牝系としては4代母Wildwookを中心に広がっていて、エクリプスステークス(GⅠ・芝10F7y)やドバイシーマクラシック(GⅠ・芝約12F)を勝利したホークビル、ブリーダーズカップマイル(GⅠ・芝8F)を制したCozzeneなどが出ている。
芝での活躍馬が多いが、ダートや障害での活躍も見られるように万能型のファミリーと言える。共通する特徴としては圧倒的なスピードと瞬発力が挙がり、操縦性の高いタイプが多いのも特徴の一つだ。
サンラザールの母パールデューはキングカメハメハ産駒だが、JRAのダート中距離と適性はダートに出た。瞬発力を活かすタイプではなかったがスピード性能は抜群で、先行して一気に押し切る競馬を得意としていた。
本馬は父にクリソベリルを迎えた。母の良さを活かす配合で、高いスピード性能に期待できる。ややきついインブリードの配合となっているので、初めてのレースで気性面がどうかというところがカギになる。父はクリソベリルだが、タイプ的にはルヴァンスレーヴの方がイメージに近いだろう。
こちらもいきなり16頭立てのデビュー戦となるが、牝系の活力はメンバーの中でも間違いなく上位。調教も先着こそしていないが動き自体は目立っており、実戦向きなタイプで初戦から勝ち負けに期待したい。
<血統から想定できる潜在能力>
・馬場適性:ダート
・距離適性:1800~2200m/ベスト2000m
・能力:スピードS/瞬発力B/パワーS/持久力S
・同タイプ:ルヴァンスレーヴ
・特徴:高いスピード性能/母譲りの持続力
※持久力=スピードの持続力
《ライタープロフィール》
貴シンジ
競馬ライター。サラブレッドの血統をファミリー中心に分析する牝系研究家。3つのファクターから構築する「コンプレックスアナライズ」を駆使して競馬予想を行う。WEBサイト『ウマフリ』で「牝系図鑑」も連載中。競馬予想のほか「競馬王」など商業誌での執筆、一口馬主クラブ募集馬やセリ馬の血統分析、血統の魅力の伝承、繁殖牝馬の配合提案などを独自の切り口から行う。
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