【注目2歳馬】“ラスト10.8-10.9”の非凡な瞬発力 シスキン産駒ライヒスアドラーが2番手追走から完勝

三木俊幸

9月13、14、15日の注目2歳馬,ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

シスキン産駒は高い勝ち上がり率

週末に撮影したレースから印象に残った馬を紹介する「注目2歳馬」。3日間開催となった9月2週目は14日、中山5R・芝1800mの新馬戦を制したライヒスアドラーをピックアップ。前週に取り上げたフォルテアンジェロに続き、またしても美浦・上原佑紀厩舎から素質馬が現れた。

父シスキン、母クライリングという血統で馬主はG1レーシング、募集総額は3000万円(一口75万円)。シスキン産駒の初年度となった現3歳世代は登録7頭ながら、テリオスララがリステッドの萩Sを勝利するなどJRAで4頭が勝ち上がった。2世代目となる2歳世代も登録46頭のうち、JRAではここまで12頭がデビューし、ライヒスアドラーが4頭目の勝ち上がりと高い勝ち上がり率を記録している。

上がり33.1は中山開催の2歳戦で最速

当日の馬体重は510kg、単勝2.3倍の1番人気に支持されての出走となったレースは、好スタートを決めて先行争いに加わると、1角で内からアクアマーズを行かせて2番手を追走。序盤は13.5-13.2-13.3-13.1と13秒台のラップが続き、800mを過ぎてからようやく12秒台が記録される超スローペースで、1000mを1:05.9で通過した。

レース後半では、3番手にいたメイショウユウブが徐々にポジションを押し上げたのに合わせ残り600mでアクアマーズの外へと並びかけていく。直線に向いて追い出されると、瞬く間にライバルたちを置き去りにする瞬発力を披露。残り100mを切ってからは流しながらの走りで、鞍上の佐々木大輔騎手は振り返って後続の手応えを確認する余裕もあった。

勝ちタイムは1:51.5での決着と速いものではないが、2着に粘ったアクアマーズには3馬身半差をつけており、完勝と言っていい内容。レース上がり33.2に対し、ライヒスアドラー自身は33.1と、中山開催の2歳戦全体で最速の上がりを記録した。1着馬のなかでこれまで最も速かった2024年ファンダムの33.4を0.3秒更新している。

さらに強調したいのは、ラスト400mを10.8-10.9と連続で10秒台のラップを記録した瞬発力。前半のペースが遅かったことや、ゴール前は速いラップが計測されやすい開催であるという複合的な要素はあるにせよ、こちらも中山開催の2歳戦では初めての記録だ。3歳以上でもほとんど見ることができない数字を余裕十分でマークした点は素晴らしい。

一方、残り200mで右ムチを入れられてから佐々木騎手が左に重心を傾けて内にモタれないように矯正する場面もあるなど若さも覗かせたが、経験を積んで改善されていくだろう。今後はさらに強い相手との戦いが待ち受けるが、瞬発力を武器に重賞戦線でも活躍できる馬へと成長していってほしい。

9月13、14、15日の注目2歳馬,ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

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《ライタープロフィール》
三木俊幸
編集者を経てフリーランスとなる。現在はカメラマンとしてJRAや地方競馬など国内外の競馬場でレースシーンを撮影しながら、執筆活動も行っている。

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