【セントライト記念】イスラボニータが皐月賞馬の貫禄示す完勝劇 単勝1.4倍の圧倒的支持に応えた2014年をプレイバック
緒方きしん

ⒸSPAIA
単勝1.4倍の確勝ムード
今週は菊花賞トライアル・セントライト記念が開催される。過去にはナカヤマフェスタやキタサンブラックらが勝利。昨年の勝ち馬アーバンシックはそのまま菊花賞を制した。今回は2014年のレースをピックアップし、当時のレースを振り返っていく。
春の牡馬クラシックでは、フジキセキ産駒イスラボニータが活躍。皐月賞を制して父に初のクラシックタイトルを贈ると、ダービーではワンアンドオンリーに敗れたものの2着に入る。ここまで7戦5勝、2着2回と抜群の安定感で、確かな実力を示した。
秋に向け、距離の壁があるのかが焦点となっていたが、陣営は早いうちから天皇賞(秋)への挑戦を発表。前哨戦にはセントライト記念を選択し、菊花賞を目指す同世代との対決に注目が集まった。セントライト記念当日、イスラボニータの単勝オッズは1.4倍と確勝ムードが漂っていた。
2番人気にはトゥザワールド。母はトゥザヴィクトリー、全兄はトゥザグローリーの良血馬である。4連勝中で臨んだ皐月賞では、1番人気2着に敗れたものの、続くダービーでも5着と、未だ掲示板を外したことはなく、イスラボニータのライバルにふさわしい実績を持つ。
3番人気は条件戦を2連勝して勢いに乗るサトノフェラーリ。4番人気はワールドインパクト、5番人気ステファノスと、クラシックでイスラボニータに先着を許した2頭が続いた。
ライバルを射程圏に入れた危なげない競馬
ゲートが開くと、イスラボニータは絶好のスタート。一方でライバルのトゥザワールドはややよろけるが、鞍上の川田将雅騎手がすぐに立て直す。序盤のポジション争いでは、2頭そろって引っかかる様子を見せていた。
サングラスがスムーズに先頭に立ち、2番手をオウケンブラックが確保。トゥザワールドが外から3番手にいき、その斜め後ろ、やや包まれる形でイスラボニータは4番手集団で続く。有力馬2頭が前に行ったことで、後方はパラパラとした展開。1~2コーナーでは、先頭のサングラスに2番手のオウケンブラックが競りかけ、ペースが緩むことなく進んだ。
レース中盤で、隊列がやや縦長になり始めると、鞍上の蛯名正義騎手はイスラボニータを包まれないポジションに持ち出した。その内からはラングレーが前を伺うなど、気の抜けない展開が続くなか、レースはいよいよ勝負所へ。直線入口で馬群が再び密集しはじめる。2番手に上がったトゥザワールドの鞍上・川田騎手が後ろを確認した。
各馬、鞍上のアクションが激しくなるなか、蛯名騎手は静かに進路を確保。直線に入ると、再び川田騎手が二度、三度振り返る。すぐ後ろにはイスラボニータ。すかさず川田騎手の手が動き、トゥザワールドに鞭が入る。
だが、先にスパートをかけたライバルを、外からイスラボニータがあっさり交わす。先頭に立ったイスラボニータに蛯名騎手が鞭を入れもうひと伸び。外からタガノグランパ、ステファノスが詰め寄るがそれも2番手争いまで。
イスラボニータは余力たっぷりにゴール。圧倒的人気だったとはいえ、危なげないパフォーマンスにスタンドからは感嘆のため息が聞こえるようだった。
2着はトゥザワールド。皐月賞の1、2着馬による決着であり、馬連は2.5倍の超堅実配当に。3着には、ダービーで16番人気4着と激走していたタガノグランパが10番人気で食い込み、トゥザワールドとのワイドは17.7倍の好配当となった。
条件戦からの参戦だった3番人気サトノフェラーリは13着に大敗。最終的にはダービー掲示板組の3頭で決着し、春クラシック組が力を示す形で幕を閉じた。
皐月賞馬ミュージアムマイルが始動
あまりの勝ちっぷりに、レース後は菊花賞挑戦とも言われたイスラボニータだったが、結局、当初の予定通り天皇賞(秋)に出走する。1番人気に推されるも、スピルバーグの鋭い末脚に屈し、3着に敗れた。
翌年は同レースで再び3着に好走すると、続くマイルCSでも3着。その後、現役最終年の6歳シーズンも重賞で2勝を挙げるなど、長きにわたり競馬界を盛り上げた。
トゥザワールドは次走の菊花賞こそ2番人気16着と大敗したが、同年の有馬記念ではジェンティルドンナに迫る2着に激走。ゴールドシップやエピファネイア、ジャスタウェイといった強豪古馬たちに加え、同期のダービー馬ワンアンドオンリーにも先着している。翌年にはオーストラリアGⅠのザBMWでも2着と好走し、国内外で勝負強さを見せつけた。
今年のセントライト記念には、皐月賞馬ミュージアムマイルが登場。イスラボニータ同様、その後は菊花賞ではなく、天皇賞(秋)への参戦を表明している。ダービーでは6着に敗れたものの、皐月賞ではダービー馬クロワデュノールに0秒3差で完勝し、土をつけた。秘めたるスピードは世代屈指であることは間違いない。
初となる2200m戦で、ミュージアムマイルはどのような輝きを見せるだろうか。ライバルのダービー馬は海を渡り、今週末、フランスでの出走を予定している。3歳世代の主力たちが本格始動を始め、秋競馬が一層熱を帯びてきた。
《ライタープロフィール》
緒方きしん
札幌生まれ、札幌育ちの競馬ライター。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、ダイワスカーレット、ナカヤマフェスタ。
《関連記事》
・【セントライト記念】過去10年のレースデータ
・【セントライト記念】皐月賞馬ミュージアムマイルが中心 上がり馬ならサクラファレルに注目
・トライアルに強い騎手を特集 頭で狙いたい岩田望来騎手、「中山マイスター」津村明秀騎手に注目
