【セントライト記念】皐月賞馬ミュージアムマイルが中心 上がり馬ならサクラファレルに注目

勝木淳

過去10年のデータから見るセントライト記念,ⒸSPAIA

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層が厚い菊花賞トライアル

セントライトが日本競馬史上初の三冠馬に輝いたのは1941年。84年前のことだ。当時を知る人々の証言をひも解くと、セントライトは500kgを超える大型馬であり、漆黒の巨体を揺らしながら歩いていたという。賢く、病気やケガとは無縁であり、疲労回復が早いという特徴の持ち主だった。

そのセントライトの名を冠したセントライト記念は、過去25年で500kgを超える大型馬が9勝。昨年のアーバンシック、そして2015年キタサンブラックはキタサンブラックになった。

菊花賞を勝った500kg以上の大型馬は、同集計期間に限ると上記2頭のほかに04年デルタブルース、12年ゴールドシップの4頭。反対に460kg未満の菊花賞馬となると、05年ディープインパクト、10年ビッグウィーク、20年コントレイルの3頭。三冠馬が2頭も入る。

大型馬の4頭は、すべて菊花賞以前に中山で勝利をあげた。ダービーで496kgだったミュージアムマイルは、夏に逞しくなってさえいれば、菊花賞を勝てる大型馬の仲間入りができる。ただ、「菊花賞に出走すれば」という条件がつく。最近は三冠完走に価値を見出さない風潮がみえるだけに、秋の展望は難しくなった。データは過去10年分を使用する。

人気別成績,ⒸSPAIA


1番人気【2-6-0-2】勝率20.0%、複勝率80.0%や2番人気【3-2-2-3】勝率30.0%、複勝率70.0%に3番人気【1-0-5-4】勝率10.0%、複勝率60.0%も続き、上位人気はそう崩れない。人気順に好走確率は推移していき、基本は人気順の評価でいい。

10番人気以下は【0-0-1-52】複勝率もわずか1.9%だ。15年10番人気3着ジュンツバサを最後に好走馬は出ていない。菊花賞トライアルとあって、上位と下位の力差を感じる。

所属別成績,ⒸSPAIA


関東圏の菊花賞トライアルだが、関西馬が【4-2-4-38】勝率8.3%、複勝率20.8%で、関東馬【6-8-6-73】勝率6.5%、複勝率21.5%と互角に渡り合う。とはいえ、分母が関東馬93頭に対し、関西馬は48頭と少なく、確率だけで評価はできない。

3着占有数は関東20、関西10とダブルスコア。関西優勢のデータを強調しすぎてしまうと、狙いどきの関東馬を買い目から外しかねない。出走数が少ない関西馬が目立つだけに、ここは注意したい。

条件戦は前走距離に注意

皐月賞馬ミュージアムマイルはここが始動戦。このあとは天皇賞(秋)に向かうプランもあるようだが、ダービーで6着と揮わなかったことを踏まえると、ここであっさり負けられない。ほかにはダービー9着ファイアンクランツなどが構え、条件戦を勝った上がり馬と対戦する。

所属別成績,ⒸSPAIA
所属別成績,ⒸSPAIA


前走GⅠは【5-7-6-24】勝率11.9%、複勝率42.9%と春の実績馬が強い。ダービーに限ると、【5-7-5-19】勝率13.9%、複勝率47.2%。その着順内訳はダービー掲示板以内【1-3-0-3】と好走馬優勢ながら、6~9着【0-1-3-6】複勝率40.0%、10着以下【4-3-2-10】勝率21.1%、複勝率47.4%と凡走組までチャンスがある。ただ今年は6~9着に集中しており、ここの数字がそこまでよくないのは気になるところ。

とはいえ、皐月賞馬のミュージアムマイルはこの舞台で浮上する可能性は高いだろう。過去10年、皐月賞馬はセントライト記念で【1-2-0-0】。出走数が3頭にとどまっているのは意外だが、連対圏は外していない。

ほかではラジオNIKKEI賞が【3-1-1-11】勝率18.8%、複勝率31.3%で、3着以内【2-1-0-6】、5着以下【1-0-1-5】と買うなら好走馬になる。

前走条件戦・距離別成績,ⒸSPAIA


条件戦組は前走距離できれいに整理できる。前走同距離【0-0-0-9】、2200m超の短縮【0-0-0-17】とさっぱり走らない。その分、2200m未満の延長が【2-2-2-39】勝率4.4%、複勝率13.3%。条件戦経由の上がり馬が全体的に苦戦傾向にある点には注意だが、それでも条件戦組から狙うなら、距離延長が目安だ。

東京芝2400m経由が多いが、狙うなら藻岩山特別を勝ったサクラファレルだろう。延長がいいのは、中距離とはいえ、重賞のタイトなスタートダッシュと前半に同距離、短縮組が対応できない可能性が考えられる。

その点、スローに落としたとはいえサクラファレルは藻岩山特別を逃げ切っており、先行できる力はある。あえて条件戦組からピックアップするならサクラファレルだ。

過去10年のデータから見るセントライト記念,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 純白の奇跡』(ガイドワークス)に寄稿。

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