【札幌2歳S回顧】ショウナンガルフが消耗戦を制してGⅠへ名乗り もったいなかった4着アーレムアレス

SPAIA編集部

2025年札幌2歳Sレース回顧,ⒸSPAIA

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一見スローペースだが…

9月6日(土)に札幌2歳Sが行われ、単勝1番人気に支持されたショウナンガルフが優勝した。騎乗した池添謙一騎手はこれがJRA重賞100勝目のメモリアルVとなった。

レースは最内枠からスタートを決めたジーネキングが先手。最初のコーナーでは好位内めの一角にいたジャスティンシカゴが曲がれず他馬と接触する事象があった。

序盤は淡々と流れ、最初の3Fは12.8-12.4-13.0で38.2秒。1000m通過も62.6秒で、確かに数字上はスローペースだった。ただ、4F目以降のラップを見ると12.3-12.1-11.9-11.6-12.0-12.5。ペースアップのタイミングが早く、残り800~400m区間で全速力を開放し、最後は減速しながらの我慢比べとなっていた。

いわば「スローだが消耗戦」という特殊な展開で、単なる前有利だった感じはない。ポジショニングよりも馬自身の消耗戦への適性、そして道中の早い仕掛けに付き合わず、脚を温存できたかどうかがポイントとなった。

勝ったショウナンガルフは後方で追走。先んじて外からアーレムアレスが仕掛けてきたが、抵抗せず、行かせてから背後につくように進出を開始した。このあたりはさすが経験豊富、大舞台で勝ち慣れたジョッキーと言うべきだろう。結果的にこのワンテンポの「待ち」が明暗を分けた。

直線は他馬の脚が鈍るなか、1頭だけ目立つ脚でジーネキングを差し切った。上がり3F35.0秒はメンバー中最速で、同2位の馬より0.5秒速いもの。例年通り好メンバーがそろった一戦を制し、秋以降のGⅠに向けて視界の広がる勝利だった。

あえて課題を挙げるのであれば、まだ瞬発力が問われる競馬をやっていないこと。新馬戦は少頭数の道悪、今回は洋芝の早仕掛け戦と、どちらもスピードを要求されない質のレースであった。たとえば東京の直線で33秒台の上がりを使えるかは未知なままだ。

時期尚早だが、ダービーというよりは皐月賞向き、そして皐月賞よりはホープフルSが合うタイプだと思われる。

次走注目の4着アーレムアレス

2着ジーネキングは逃げてレースを大枠では掌握した。結果論では仕掛けが若干早かった気もするが、3着以下は完全に振り切っているわけで、作戦として間違いではなかっただろう。勝ち馬を褒めるしかない。

2歳戦の開幕から3か月が経ち、ジーネキングを送り出したコントレイル産駒のJRA成績(9月6日終了時)は【6-10-4-13】複勝率60.6%。全体でも素晴らしいハイアベレージだが、特に「レース上がり35.0秒以上」を要した際は【2-5-2-3】複勝率75.0%、複回収率152%とめっぽう強い。

父の現役時は「良馬場の軽い競馬でこそ」というイメージだったが、産駒は意外とジリっぽく、持続力を問われる競馬でよさが出る。ジーネキングの今回の激走も、その象徴的な事例のひとつと解釈できる。

3着スマートプリエールは中団外目からの競馬。初角ではジャスティンシカゴに起因する接触事象の影響も多少あった。3~4コーナーの手応えはそこまでよく見えなかったが、バテそうでバテず、最後までしぶとく脚を使った。牡馬相手の重賞でこれだけ走れれば希望を持てる。

過去10年の札幌2歳Sで馬券に絡んだ牝馬は8頭いるが、昨年のアルマヴェローチェ、20年ソダシ&ユーバーレーベンの3頭が後にGⅠ制覇、6頭がGⅠで3着以内に入った。こちらもその条件をクリアした。牝馬クラシックの有力候補と言っていい。

もったいなかったのは4着アーレムアレス。ゲート内で踏ん張るような形になり、2馬身ほど出遅れてしまった。映像を見ると800m通過あたりから菱田騎手が手を動かしているのが分かるが、前述の通りその区間はすでにペースが締まり始めているところ。前が速いところに、さらに速い脚を使って押し上げる負荷の大きいスパートとなってしまった。それでも4着なら悪くはない。次走注目馬として名前を挙げておきたい。

5着ロスパレドネスはスタート直後に挟まれる不利あり。その後はソツなく運んだが、勝負どころでの反応がもうひとつだった。それでも最後まで大バテせずじわじわと伸びてはいた。全兄ジオグリフは1800~2000mがベストの馬だったが、こちらはもう少し距離があってもいいかもしれない。

5番人気9着のポペットは距離延長もあって序盤からかなり折り合いを欠いた。33秒台の上がりで勝った新馬戦とは打って変わってロングスパートの粘り合いとなり、体力がもたなかった。良馬場のワンターン、1400mかマイルくらいの自己条件に出てくればきっちり巻き返すだろう。

2025年札幌2歳Sレース回顧,ⒸSPAIA


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