【オールカマー回顧】“中山の女王”レガレイラが重賞3勝目 兄ドゥラドーレスときょうだいワンツーの快挙
勝木淳

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ハイレベルな持続力勝負
天皇賞(秋)へのステップレースでもあるオールカマーはレガレイラが勝ち、有馬記念以来となる復活勝利を飾った。2着はドゥラドーレス、3着はヨーホーレイクで決着した。
神戸新聞杯が菊花賞を見据えたスローの我慢比べだったのに対し、古馬のオールカマーは天皇賞(秋)、ジャパンCなど中距離の前哨戦だったこともあり、道中で活発なポジション争いがみられた。
序盤は飛ばす逃げ馬が不在の一戦らしく、リビアングラスが引っ張る緩やかな流れだった。外回り2コーナーにかけてペースを落とし、中盤の5、6ハロンは12.7-12.6で1000m通過は59.9。Cコース替わりの絶好馬場と古馬GⅡというクラスを考えれば、スローに近い。
この先行有利のペース配分を嫌ったのがドゥラドーレス。まくり気味に進出し、隊列に刺激を与える。フェアエールングが3コーナーで先頭に立ち、リビアングラスのマイペースを壊していく。後半1000mは11.5-11.7-11.6-11.4-11.5、57.7。瞬発力と持続力を問うハイレベルな展開へと変わっていった。
ドゥラドーレスについていく形になったレガレイラにとって、願ってもない流れ。なにせ中山はこの勝利で通算【3-0-0-1】。GⅠ・2勝、GⅡ・1勝と屈指の中山巧者だ。他のコースでの成績とは明らかに違う。同じくオールカマーと有馬記念を勝ったマツリダゴッホとイメージが重なる。
3勝したレースでの上がり600mは35.0、34.9、34.0で6着に終わった皐月賞は33.9。中団につけながら34秒台で上がってくれば、負けない。コーナーでギアを上げ、直線でトップスピードに上昇していく様はまさにマツリダゴッホ。中山で敗れるイメージがない。東京での最後のスプリント勝負への対応は課題になりそうだが、有馬記念連覇を目標に仕上げていってほしい。
偉大なる3代母ウインドインハーヘア
持続力勝負への強さは2着に粘った兄ドゥラドーレスも同じ。母ロカは現役時代にそのポテンシャルを発揮できなかったが、産駒がそれを証明した。これも競馬の魅力だ。筆者自身、何度も紹介したが、祖母ランズエッジの系統はロカのほかにもエッジースタイルからアーバンシック、ブルークランズからステレンボッシュを送っている。
同一系統から同じ時代にこれほど活躍馬が出るのは珍しい。改めてランズエッジの母ウインドインハーヘアの偉大さを思い知る。この夏、ノーザンホースパークでお礼を言ってきた。この馬が日本の競馬を数段上に進めてくれたのは間違いない。
グレード制導入以降、平地重賞できょうだいがワンツーを決めたのは初だという。この快挙は勝ったレガレイラ以上に2着ドゥラドーレスが果たした役割が大きい。中盤で緩む先行ペースを自ら動いて、フェアエールングを動かし、後半1000mの持続力勝負に持ち込んだからだ。血統の強みを発揮する展開に変えたことで、ワンツーを実現させた。ルメール騎手の挑戦者たる姿勢が清々しい。
なお、障害では2001年中山大障害で1着ユウフヨウホウ、2着ゴーカイがきょうだいワンツー。その母はオークス2着ユウミロク。その他の産駒には長距離重賞3勝ユウセンショウがいる。似た適性を持つというコンセプトで牝系を探り、馬券にいかしたい。
次走GⅠでも楽しめる3、4着馬
接戦の3着争いはヨーホーレイクが制した。7歳ながら掲示板を外したのは21年ダービー、昨年の毎日王冠と今年の宝塚記念の3回だけ。今年の大阪杯は1:56.5で走破し、オールカマーでは2:10.7と好時計を記録し続ける。東京との相性は決してよくないが、7歳にして進化中とあっては、天皇賞(秋)などに出てきても大きく崩れない可能性はある。
4着フェアエールングは次走も注目だ。1月の小倉牝馬Sを1着同着で制し、その後も重賞2、3着と好調をキープしている。さらに、今回は自ら先に動く厳しい競馬を課しながらハナ差4着は大健闘だろう。なにより厳しい競馬で2200mをこなす手応えを得たことが大きい。平坦京都のエリザベス女王杯で下りを利用して先に動けば見せ場はある。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 純白の奇跡』(ガイドワークス)に寄稿。
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