【紫苑S】Seattle Slew内包馬が回収率100%超え 伏兵候補テリオスララ、ロートホルンが適性バッチリ
坂上明大

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傾向解説
3着馬までに秋華賞への優先出走権が付与される紫苑ステークス。オープン競走時代は秋華賞で馬券圏内に入ることすら難しいステップレースでしたが、重賞昇格後は2016年ヴィブロス、2017年ディアドラ、2022年スタニングローズと3頭の秋華賞馬を輩出しています。
現在は西のローズSと並び、秋華賞に向けて非常に重要な重賞となっています。本記事では血統面を中心に、紫苑Sのレース傾向を整理していきます。
重賞昇格後に目立つのは前走GⅠ組の活躍。重賞に格上げされたことにより、賞金面や優先出走権の面で本レースの価値が大きくなり、春のクラシック戦線で有力視されていた馬の参戦も多くなりました。
その結果、レース全体のメンバーレベルが上がり、条件戦組の活躍が目立っていたオープン競走時代とは一変して、近年は前走GⅠ組の活躍が目立っています。
2020~23年は該当馬が4連勝。昨年はわずか2頭の該当馬からオークス組のミアネーロが接戦の2着と好走しています。

<前走GⅠ組(単勝オッズ19.9倍以下)>
該当馬【5-6-4-12/27】
勝率18.5%/連対率40.7%/複勝率55.6%/単回収率98%/複回収率118%
※過去9年
血統面では北米血統に注目。通常の中山芝2000m重賞はNureyev≒Sadler's Wellsのような欧州血統が活躍しやすい舞台ですが、秋の中山開催については野芝のみの高速馬場で行われるため、北米血統でスピードを強化した配合馬の活躍が目立ちます。
特にSeattle SlewやSecretariatのような芝向きの柔軟性も兼備した血統の活躍が目立ち、昨年も2着馬ミアネーロと3着馬ボンドガールは両血脈を併せ持つ配合馬でした。

<血統別成績(単勝オッズ19.9倍以下)>
・Seattle Slew【4-3-4-8/19】
勝率21.1%/連対率36.8%/複勝率57.9%/単回収率148%/複回収率136%
・Secretariat【4-2-4-13/23】
勝率17.4%/連対率26.1%/複勝率43.5%/単回収率102%/複回収率91%
※過去10年
注目血統馬2頭
前記の傾向に合う注目血統馬を2頭ピックアップしました。
☆テリオスララ
Ballade→Glorious Songから繋がる名牝系に属し、兄にはダート重賞3勝馬セラフィックコールや2025年阪神大賞典優勝馬サンライズアースがいる良血馬。父シスキンは2020年愛2000ギニーを制した欧州マイラーで、日欧米混血の本馬は1600~2000mなら幅広い競馬に対応できそうな優等生タイプです。
父が本レースと相性が良いSeattle SlewとSecretariatの血を併せ持っており、紫苑S適性も上々の評価。骨折明け2戦目の今回は改めて素質に期待したい良血馬です。
☆ロートホルン
母マイミスリリーはダート9Fの北米GⅡ・ガゼルS勝ち馬。サトノダイヤモンド×Tapitの本馬は胴長脚長の中長距離体型に出ており、1800m以上でストライドを伸ばして走る競馬がベストでしょう。
今年の登録場では数少ないA.P. Indy内包馬で、高速馬場の2000m戦はピッタリの舞台。単騎逃げが叶いそうなメンバー構成も追い風で、2018年に7番人気で3着に粘り込んだランドネ(母父A.P. Indy)のような競馬に期待したい伏兵です。

ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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